(前回からの続き)
入院して1週間くらい経った頃だっただろうか、回診でドクターとともに背がスラっとしていてとってもキレイで場が和むような看護師さんがやって来た。
初めて見る看護師さんだった。
年は、27~28歳だったと記憶している。グラビア系、アイドル系という感じではなく、女優系の顔立ちでイチコロになってしまった(笑)。
そしてボクのベッドのところに来て、一言二言なんやかんやと喋っていたら、思わず顔が赤くなってしまい、大工のおじさんに
「おい〇〇(ボクの名前)、お前顔が赤くなってんぞ」
と笑われる有様だった(笑)。
やがて、回診が終わり、ドクターや看護師さんが立ち去ると、大工のおじさんや部屋長のような金持ちおじさん、元炭鉱堀りのおじさん達が、
「意外と早い復帰だったな?」
「確かに」
「もう少し休んでも良かんべーよ」
「本人の希望だべ?」
と、ひそひそ話をし出した。
何しろここは整形外科病棟なので、口だけは達者(^^ゞ
当時のボクには2歳上の彼女がいたが、大学生となった初の夏休みということもあり、エンジョイしていたようで見舞いにも来てくれなかった。なので、すぐにおじさんたちの会話の中に入って、デレデレした顔で
「なになに?どーしたの?あのキレイな看護師さん、誰よ、誰なの?教えてよー(笑)」
「あっ、そっかー。お前は知らないもんなー」
「そうだよなー、2~3週間くらい前になるのか?」
「旦那さんが病気で亡くなって休んでて、今日から復帰したようだ」
とのことだった。
ボクはびっくりして言葉を失った。
まだ若いのに旦那さんが亡くなられてからの初出勤日にもかかわらず笑顔で話しかけてくるとは・・・。
でも、そこは17歳の高校生だから、その看護師さんが気になって気になってしょうがなかった(^^ゞ
その数日後、確か手術の前日に、チームメイト数人が見舞いにやって来た。
同じ中学から高校に進んでチームメイトになったアマノ、同じ市内に住んでいて隣のクラスのリュウ、入院している病院の目の前に住んでいるサトウ、次期キャプテン候補のアイハラ、だった。
翌日はボクは手術、みんなは山中湖に行って合宿。
そんな話をしていたら、翌日からの合宿の話になった。
「△△先輩(OBの人の名前)は合宿に来るの?」
「来るんじゃないかな」
「マジで!?」
「勘弁してくれよ~!」
「あー、行きたくねーよ!」
と、みんな憂鬱な気分になっていた。そのとき、4人の誰かがボクに、
「お前はいいよなー、こんな涼しいところで過ごせてさー。しかも、キレイな看護師さん多いからサイコーじゃん!」
またもや、この一言で喧嘩になった(^^ゞ
「ちょっと待てよ!今のセリフなんだ!?こっちだって好きでこんなケガを負ったわけじゃねーのに!もういいよ、お前らとっとと帰れよ!?」
怒りに任せて殴り掛かりたいけど、怪我をしていてベッドの上。
泣きわめきながら突っかかるのが精いっぱいだった。
みんなが帰った後で、病室に居ずらくなったボクは、松葉づえで外来の待合室に行き、佇んでいた。
すると、ボクの名前を呼ぶ声がした。
声がした方を見ると、あのキレイな看護師さんがいた。
「どうしたの?」と言われたので、チームメイトとのやりとりを話した。
すると、彼女はクスっと笑みを浮かべながら、
「今日、みんな来てくれたときは嬉しかったでしょ?そんなのは売り言葉に買い言葉ってわかるでしょ?喧嘩になったこと、少し後悔しているよね?あと、〇〇クン(ボクの名前)、実は明日の手術ビビっているんじゃないの(笑)?」と、思いっきり図星だった(^^ゞ
さらに、見透かしたようにこうも言った。
「またラグビー出来るかどうか心配しているでしょ?でも、大丈夫だよ。またラグビー出来るって思わなきゃ治るものも治らないよ」
そう言われて、号泣した。
いくら仕事とは言え、旦那さんを亡くされたばかりなのに、こんな鼻垂れ脳みそ筋肉高校生に、こんな言葉をかけてくれるなんて・・・。
いや、そんな方に声をかけてもらうようじゃ、オレはダメなんだなーと思った。
続く