前回までのあらすじ
これまで「他犬が苦手、嫌い」で、「他犬を遠ざけるために吠えていた」と考えられていた、あるイヌの「吠え」行動。
しかし、まったく逆の可能性があった。
その逆の可能性とは、「他のイヌが好き」で、「他犬を呼び寄せるために吠えていた」というものだった。
この「イヌの気持ち」は、どうやって確認できたのか……!?
いわゆる「要求吠え」というものは、きっと多くの人がご存知だと思います。
「サークルやハウスの中に入れると吠える」
「駐車場などで停めている車の中で吠える」
「どこかに繋がれると、飼い主が戻ってくるまで吠える」
大体の場合において、これらは「吠えた後に、飼い主さんが何らかのリアクションを返しているため」に、その「吠え」が持続しているというケースが多いです。
注目無 … 吠える … 注目有
こういった「注目が無い→注目を得られる」という状況の変化が、イヌにとってのメリットになることは少なくありません。
個人的な経験での話にはなってしまいますが、以下のような行動も「飼い主からの注目を得るため」にやっていることもあります。
※あくまでも「そういう場合もある」という話であって、以下に挙げるすべての行動が「注目獲得のための行動だ」ということではありません。
当然のことながら、個体差や生活環境、状況、学習履歴などによって変わってきます。
・家具をかじる
・イタズラをする
・ハウスやサークルをがちゃがちゃと引っかいたりする
・ペットシーツ(トイレシーツ)を破く、噛む、ちぎる
・家の中を走り回る
・前足や後ろ足を盛んに舐める
「ストレスが原因」なんて言われたりすることが多い行動ですが、実際は「飼い主さんが構っているから」というものであることが結構あります。
あまり「ストレス」というものを、「行動の原因」として考えない方が無難です。
特に、「家具をかじる」「イタズラをする」というのは、「注目獲得」というケースは非常に多いです。
大体の飼い主さんは、「静かに寝ているイヌ」のことは放置しています。
「やっと静かになってくれたわ」って感じで。
そして、「家具をかじっているイヌ」のことは、ほぼ間違いなく放置しません。
すぐに止めに入ろうとします。
それが結果的に「家具をかじる」という行動を増加させることになるんですね。
ストレスとか関係なかったりすることが、かなり多いです。
閑話休題。
「他犬への吠え」のお話でした。
結論を先に言ってしまえば、このイヌの「他犬への吠え」は、「他犬への要求吠え」だったわけなんです。
なぜそれがわかるのか?
飼い主さんにお伝えしたアドバイスと、そのアドバイスを実践した結果が、その根拠になります。
お伝えしたアドバイス
「吠えたら近づけさせない」
「吠えなかったら近づけさせる」
このアドバイスに従った結果、どうなるのかというと、こうなります。
アドバイス前
他犬と出会う … 吠える … (時々)他犬と挨拶できる、遊べる
アドバイス後
他犬と出会う … 吠える … 他犬と挨拶できない、遊べない
この違い、お分かりいただけるかと思います。
アドバイス前までは、「吠える」という行動の後に、時々ではありますが「他犬と挨拶できる」「他犬と遊べる」という「結果」が生まれていました。
しかし、アドバイス後は、その結果がなくなっています。
仮に、「他犬との挨拶、遊び」のために吠えていたのだとしたら、こういう「吠えれば吠えるほど、挨拶できないし、遊べない」という状況になれば、当然「吠える」という行動は減少していくわけです。
ごくごく簡単に考えてください。
友達と出会う … 話しかける … 会話ができる
こういう状況だったものが、↓のようになったということです。
友達と出会う … 話しかける … 友達がいなくなる
話しかければかけるほど、誰もあなたの相手をしてくれなくなるんです。
むしろ、どんどん遠ざかっていってしまう。
もしも、「友達と一緒にいたい」と願うのなら、「話しかける」という行動はなくなっていくはずです。
そしてこれが、このイヌにも起こったということなんですね。
つまり、我々は、「他犬に激しく吠える」という見た目、様子から、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない……
この子は、「他のイヌが嫌い」で吠えていたんじゃない……
むしろ、「他のイヌが好き」で吠えていたんだよ!!!
ΩΩ Ω<ナンダッテー!!!
イヌの行動には、必ずなんらかの理由があります。
しかし、その理由は「見ただけ」ではわかりません。
丁寧に丁寧に、「どうなの?どうなの?」と確認していく必要があるわけなんですね。