トレーナー心得 その3「判断の根拠を明確にする」 | わんこも、そして飼い主さんも

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トレーナー心得 その3

「判断の根拠を明確にする」


「この行動に対しては、こういう方針で行きましょう」ということを、あらかじめ説明する場面があります。
その「こういう方針で行きましょう」という判断の根拠を、出来るだけきちんと飼い主さんに見せようと心掛けています。

何か質問を受けた時。
あるいは、アドバイスをする時。
または、レッスンの大まかな方針を決めた時。

ここには、トレーナーである僕の「こうすればうまくいくはずだ」という判断があります。
その判断の「根拠」を、きちんと見せようと。

トレーナーの仕事というのは、「職人芸」の側面を持っていると思います。
トレーナーが経験したこと、体験したことを、日々のレッスンに活かしていく。
これはこれで、間違いなくそういう部分はあります。
ただ、全てがそれだけではよろしくないだろうと。

たとえば、「こういう時は、無視をしてください」というアドバイスを、飼い主さんにしたとします。
その時に「なんで無視をするんですか?」という質問を受けた場合。

A「僕の経験上、その方がうまくいくから」
B「無視をしてもらうことで、こういう変化が生まれるはずです。
 その変化が生まれた場合は、無視をすることでしか前に進みません。
 何故なら、こういう行動の原理があって、それはこういうもので…」

どちらも「無視をしてください」というアドバイスをしているわけですが、「説得力」は断然Bの方が上だと思うんですね。

「インフォームドコンセント」という言葉があります。
これは、主に医療の世界で使われる言葉ですが、簡単にいえば「何故この治療方針で行くのか?を、患者にきちんと説明する」というものになるかと思います。

僕は個人的に、トレーナーの仕事もお医者さんと同じぐらい、明確な根拠が求められる仕事だと思っています。
でも、どちらかというと、まだまだそういう考えは十分には広がっていなくて、「経験こそが大事だ」という考えが多いなと感じています。
経験を軽んじているというわけではありません。
経験はとても大事です。
でも、それだけではダメだろうと。

経験や勘だけに頼るのではなくて、「こういう論文があって、そこにはこう書かれていて、それと同じケースだと考えられます。同じケースだと考えられる根拠はこういうもので…」と、飼い主さんが納得するまで説明しようと。

人によっては「回りくどい」と感じる方もいるかもしれませんが、僕は大事だと思うんです。