153 1/3 sage New! 2008/11/13(木) 15:45:54 ID:gmVWVuo10
おいしい関係って漫画

可奈子の父は高級レストランオーナーで、裕福な暮らしをさせてもらえていたが、
父は家に滅多に帰らず愛人との関係を優先しており、家庭の実情は冷たいものだった。
愛人は可奈子から見ても魅力的な人で、平凡な母は明らかに見劣りした。
そのことは母が一番よくわかっており、母は夫恋しさに少しずつ壊れていった。

レストランに家族連れがやってきた。息子を置いて夫妻はレストランから出ていき、そのまま戻らなかった。
父たちが慌てている中で可奈子は、両親を待ちつづける、その同世代の男の子の傍にいた。
うつむき続ける彼のさみしそうな瞳がどこか自分に似ていると感じたのだった。
男の子の両親が見つかった。事業に失敗したという夫妻は、首を吊って死んでいたという。

数年後、可奈子の母は完全に正気を失い幼児化し、
まだそんな年ではないのに痴呆老人のようになってしまった。
父は母と離婚した。可奈子は美人のキャリアウーマンとして周囲から憧れの目で見られる存在になっていたが、
最早娘がどこの誰かすらもわからなくなっている母の介護で精神をすり減らしていた。
「レストランに捨てられた子供」も青年に育ち、紆余曲折を経て料理人になっていた。
可奈子と青年は恋仲になっていた。青年がいつか店を開いたら、その設計をしてあげたいと思っていた。

やがて青年は店を開いた。青年の料理の腕は以前から評価されている素晴らしいもので、素材調達にも手を尽くした。
可奈子は内装に凝り、効果的な宣伝も行い、店は世間から注目され、売行きは好調だった。
だが、青年は「料理人は店の一つ二つ潰してからが一人前」「一つの店にこだわるつもりはない」という考えで、
料理への情熱はあるものの、それ以外の事務などは全て可奈子任せで、
いつ店が潰れてもいいと、やる気がない。おまけに、短気で他の料理人にすぐ怒鳴り散らし、
時にはわざと油を顔にはねさせるといった嫌がらせも行うため、
料理人がすぐに店を出て行ってしまう。大規模な店ではないものの、
一人の料理人だけで成り立つほど小さくもなかった。仕方なく店は畳まれることになった。
可奈子が努力したので、なんとか大きな損害が出ることはなかったが、
二人で話し合ってやっと造り上げた店があっさり失われてしまったことを悲しく思った。

154 2/3 sage New! 2008/11/13(木) 15:47:46 ID:gmVWVuo10
店の手伝いをしていた間に溜まった仕事に追われる日々を送る可奈子。
その間に青年は、前に勤めていた店でアルバイトをしていた女の子といい感じになる。
美食家の父に愛されて育った女の子は非常に肥えた舌を持っており、
青年に薫陶を受け料理人を目指している。腕はまだ未熟だがその味覚センスは類稀なるもの。
可奈子と青年は同棲しているのだが、可奈子が仕事に行っている間に青年は女の子を家に上げたりする。
料理をつくっていただけだが、実際にその場にいたわけではない可奈子には信用できない。
疑っているようなことがなかったとしても、二人の家に無断で誰かを連れ込むというだけで不快だった。
だが青年はそんな可奈子の思いを解さず「なんで怒っているのか意味わからん」という感じで、
可奈子と青年の仲はしだいにギスギスしていき、青年と女の子はますますいい感じになる。
可奈子の母はボケが進行し、咀嚼したものを可奈子の顔に吐きつけたりする。

青年と可奈子は抱えている悲しみが似たものであるからと、傷をなめあうように傍にいたが、
青年は自分の傷を包み込んでくれるような優しい女の子の方にすっかりデレるようになってしまい、
母のことで荒んでいる可奈子を捨て家を出て行ってしまった。
父が自分と母を捨てていってしまったことを思い出し、可奈子の傷はますます深まる。

仕事はきっちりやっていたもののメンヘル気味な可奈子は、仕事で知り合ったイケメンとついヤってしまう。
あんな男とほいほいヤるなんて馬鹿なことをしたと自嘲するものの、
その後もイケメンは熱心に可奈子をデートに誘ってくれる。
一夜の関係には終わらず、新たな恋のはじまりかと、胸をはずませる。
が、イケメンはあくまでも体目当てで、可奈子側もその手のことを割りきっていると思っていたという。
可奈子は今まで青年以外とはその手の経験がなく、わりと初心で、割り切れるはずがなかった。
しかもイケメンの本命は女の子であった。その事を知った時、可奈子は自分が妊娠していることに気づいた。

好きな男を二度も奪われ、しかもその相手は幸せに育った女の子。
冷たい家庭で育った自分は幸せになれないし、宿している子供も不幸にしてしまうだろうと、
可奈子のメンヘラっぷりは頂点に達し、変な幻覚と戦っちゃったりする。

155 3/3 sage New! 2008/11/13(木) 15:49:53 ID:gmVWVuo10
青年は可奈子の異常に気づき、可奈子に献身的な態度をとるようになる。
可奈子は「よりを戻せるかも」と期待し、その思いはやがて妄想に変わっていった。
青年と自分の仲はうまくいっている。お腹の子供も青年の子。青年と自分はもうすぐ結婚する。
だが青年はそれをハッキリと否定し、女の子と付き合っていると宣言した。

すっかりしょぼくれて鬱モードになっている可奈子に、事情を知った同僚は言う。
「仕事はしばらく休みなさい 仕事を逃げ場にしてもいい働きはできない
 子供はおろしなさい 今産んでもあなたの精神状態だとまともに育てられない」
可奈子もその通りだとわかっていたが、子供をおろすという行為は、父母が自分にしたのと同じようなことに思えた。

母の介護をしていた可奈子は、ふと衝動がわきあがり母の首をしめた。
母は苦しむ様子も見せず、幼児のように笑いながら可奈子を見返した。
その顔に、母はまるきり子供になってしまっているのだと改めて可奈子は思った。
子供になっている母を庇護できるのは自分だけで、かつての自分は庇護してくれる存在を求めていた。
今の母はかつての自分だ、母を守らなければと可奈子は、今までのように義務感からではなく、心からそう思った。

母に対し可奈子は母性を感じるようになり、その穏やかな態度から、母はボケ状態は変わらぬものの、
以前のように暴れたりすることはなくなり、母子は和やかな日々を送るようになった。
海外から仕事の依頼が来た。可奈子はそれを受けた。
療養したほうがいいし子供の問題はどうなったと聞く同僚に「家族が増えるから仕事を休んではいられない」と答えた。
母を愛せるようになった可奈子は、子供に対しても「おろすのが可哀相」だからではなくごく素直に愛情を抱けるようになっていた。
可奈子の精神にもう陰りはないのだとわかり、同僚は心配しつつもそれを応援した。

空港に向かう可奈子をイケメンが追いかけてきた。彼は今更ながらに子供のことを知ったのだった。
父親がいない子供なんて不幸だ、引き取るというイケメンに、
「愛のない父親を持つ方が不幸よ」と可奈子は即答し去っていった。


可奈子は幸せになれたが、まともじゃない家庭で育った人は結局まともな家庭を築けないって感じなのがどうも・・・

引用元:オカルト板「後味の悪い話 その96」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1226279434/

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