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「メロディアのフルトヴェングラー」を振り返り、フルトヴェングラーの数あるレコードの中でも「王者」の風格と実力を持った9アイテムを紹介したい。

まずは、Gost-56が製造された古い時期から何度もリリースされたフルトヴェングラーのLPは6 アイテムである。製造場所や違った時期によって貼られたレーベルが異なったと考えられ、音質も異なる。ここで、「音が良い」とは、まず第一に「音楽を伝える」質感のある音を再生すること、第二に楽器の音を邪魔する雑音が少ないことを意味する。

<Gost-56で初めて出たもの>
・D-05800/1 ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
・33D-09083/4 ベートーヴェン:交響曲第4番(全楽章放送録音と前半2つの楽章がライブの2種類)
・33D-09867/8 ブラームス:交響曲第4番、ベートーヴェン:『コリオラン』序曲
・33D-09883/4 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(フィッシャー)
・33D-010033/4 シューベルト:交響曲第9番『グレイト』
・33D-010851/4 (2LP)  ベートーヴェン:交響曲第9番、ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲

「オールドメロディア」と言われる古くからのプレスが存在する6つに共通して、レニングラード・プレスのAKKORDレーベルとモスクワ・プレスのトーチ(聖火または松明と呼ばれる)レーベルがある。確かに、場所が変われば機械、もしくは技術者が異なるので、音の鳴り方が違うが、「良し」「悪し」で言えるような大きな差は無い。それ以前に、これらのレーベルが付いたGost-56とGost-61のレコードについては、保存状態が良くてもレコードの個体差によって、音の鳴り方が随分異なる。「1枚ごと」ではなく、「面ごと」に音の鳴り方と材質原因のノイズの出方が異なる。レコードに合う針を見つけて、針圧を工夫するとプチパチ・ノイズが減ったり、きちんとした再生音が得られる。よって、レーベルを基準にして、どのレーベルが音が良いかというのは難しい。当然のことだが、まず第一に、「良い状態」のレコードかどうかが重要である。その次が、そのレコード再生装置に合うかどうか、または上手く再生できるレコード針と装置があるかどうかである。傾向としては、レニングラード・プレスのAKKORDの方が、モスクワ・プレスのトーチ(聖火または松明と呼ばれる)よりも再生しやすい。大戦中のフルトヴェングラーのレコードについては、AKKORDレーベルのレコードで、再生に難しさを感じたのは1枚も出会っていないが、聖火レーベルのレコードでは、針の相性や針圧によって再生が上手く行かないレコードがある。

オールド・メロディア期に複数の機械で製造された事を示す証拠として、例えば、AKKORDのレコードをとってみても、レーベル付近の形状が異なる。レーベル内の円形の溝の経が小さいのと大きいのがあり、さらに、大きいのでも、レーベルを貼る部分が厚く盛り上がっているのと平らのがある。

レコードに刻まれた音自体について、基本的に、AKKORDと聖火の音の違いは好みの問題で「善し悪し」ではないと考えるが、AKKORDの方が聖火レーベルと比べて明らかに音が良いといえる例外は、シューベルトの『グレイト』で、AKKORD Gost-56を上手く再生すると、とてもリアルで、戦後のDGG録音とどちらか分からなくなるほどである。これがメロディアの戦時録音で、最も音が良いレコードではないだろうか。『運命』についても、聖火と比べるとAKKORDの方が自然な音を再生する。これらの2つ以外は、「音楽を伝える質感のある音」を再生するという意味では、大きな差がないと言っても良い。保存状態が良くて、プレスも良いレコード自体少ないので、そういうレコードを手に入れる機会があるかどうかにかかっていると言っても良い。

AKKORDや聖火のようなオールド・メロディアを上手く再生すると、後のプレスと違って、オリジナルテープから直接カッティングしたかのように、テープの情報を直接伝えるような音がする。例えば、弱音から始まるベートーヴェンの『第九』では、ホールの空間まで再現するかのようなリアルさがある。旧フィルハーモニーは、残響が大きなホールだったのをよく伝えていて、まるで戦時中の旧フィルハーモニーにタイムスリップしたかのようにさえ感じる。フルトヴェングラーのレコードの場合、Gost-61のレーベルが貼られていても、Gost-56と余り音質の変わりはないか、むしろGost-56よりも良い音を再生するレコードがある。

D-05800/1 ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
*Gost-68後期からカタログ番号が変わってHD-05800/1になった。

モスクワ、レニングラード、リガ、3カ所でレコード製造者が変わるので、当然ながら、それぞれで音は違う。エンジニアの音に対するセンスの良さを感じさせるリガの再生音は、アコードとも聖火とも異なっていて、図太くて奥行き感がある。このレコードの音は豊かで素晴らしいが、針によってはきちんとフィットしない感じで、再生が難しい要素を持っている。リガと水色大聖火の音は、それぞれのエンジニアによる手が加わったような音がするが、恐らく、テープの音をほとんど調整せずにレコードにしたのがアコード盤である。しかも、普通のステレオ針でも針圧などを調整せずに、問題なく再生できる。ただ、モノラル針の方が、ステレオ針よりも材質が原因となるノイズが少ないので、より良い再生音が楽しめる。今まで5枚のアコードGost-56を聴いた経験では、コンディションの問題を除いたプレスの状態においては1枚も「はずれ」なく、素晴らしい演奏を楽しめた。レニングラードでプレスされた大33は、アコードよりも古いプレスだと考えられる。やや材質によるノイズが出やすく、きちんとフィットする針が見つかりにくいが、きちんと再生できると、ノイズが少なくなってアコードと同じ傾向の音づくりで作られたレコードであることが分かる。水色大聖火については、板起こしCDの元になっているだけあって、その調整は成功しているように思う。ただし、LPでアコードと聖火を聞き比べたとき、アコードの明るくて分離の良い音を支持する人は多いのではないだろうか。この曲については、基本的にGost-61よりもGost-56の方が良い音で楽しめる。ただし、A面にGost-56、B面にGost-61のレーベルが貼られた1枚は、レコードの形状から、Gost-56の他のレコードと同じ時期のプレスと考えられる。プレスの状態が良く、音はトップクラスである。マグネットフォン録音の音の良さを伝えるのはGost-68の前期までのプレスまでであろう。カタログ番号を新たにしたGost-68後期になると、初期盤の音とは比べものにならないくらい音が劣化していて、メロディア盤らしいダイレクト感もなく、ほとんど聴く気になれない。後のプレスで発生する第1楽章の音飛びは、再びオリジナル・テープからマスター・テープを作ったことを物語っているようだが、1970年代初頭には既にテープの劣化がかなり進行していたのがよく分かる。

フルトヴェングラーが最も気に入った作品の一つである『運命』が、まだ気力と体力が充実していた時期に、驚くべき高音質で録音されていたことは、後の人々にとって幸運なことである。高音質で楽しめるオールド・メロディアは、ファンにとっての至宝と言っても良い。とりわけ、希少価値の高く、高音質なリガ・プレスは、全フルトヴェングラーのLPの中でも頂点に立つレコードであろう。状態の良いアコード・プレスもまた、元のテープの音を素直に伝える名盤で、音自体での判断では、リガ・プレスと肩を並べるトップ・アイテムと言える。

33D-09083/4 ベートーヴェン:交響曲第4番(全楽章放送録音と前半2つの楽章がライブの2種類)
33D-09867/8 ブラームス:交響曲第4番、ベートーヴェン:『コリオラン』序曲
33D-09883/4 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(フィッシャー)

◆銑い粒擺錣硫擦虜童修砲弔い討蓮∪渋ぞ貊蠅叛渋せ?釮琉磴い砲茲覯纂舛領匹薫しの差は少ない。恐らく、発売回数とプレス枚数が少なかったため、元テープが酷使されなかったからではないだろうか。それでもGost-56と初期のGost-61の時期に作られたレコードの音の鮮度の素晴らしさは伝えようが無く、実際に聴いた人にしか分からない。

33D-010033/4 シューベルト:交響曲第9番『グレイト』

『クレイト』のアコードGost-56の生々しい再生音は、実に素晴らしい。聞き比べたことがない人には信じられないことだろうが、大袈裟ではなく、戦後1951年スタジオ録音であるDGGのLPM 18015/6と互角か、それ以上の音の良さである。全戦中録音の中でもトップクラスの音質を誇るが、なぜか、同時期にモスクワでプレスされた聖火レーベルは、生々しさで劣る。ただし、中低音の響きの豊かさなどの利点もあり、「板おこし」に使われた理由がそこにあるのかもしれない。この録音については、製造時期による音質の良し悪しがかなり大きく、Gost-68のレコードの中には、かなり音質が落ちるのもあるようだ。

33D-010851/4 (2LP)  ベートーヴェン:交響曲第9番、ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲

3面にわたる『第九』は、個体差によって面ごとの出来不出来がある場合もあり、一つのセットで全曲を統一的に良い音で聴くのは難しい。例えば、手元のレコードで確認したのについては、Gost-56アコードの第1面の臨場感がある再生音が素晴らしかったり、Gost-56水色大聖火の第2面の響きが豊かで素晴らしかったりするが、同じレーベルが付いた他のレコードで同じとは限らないと思う。ただ、共通した問題は、第3面の第4楽章は曲の進行と共に音質の低下が著しいことである。その面の再生を含めて、出会ったレコードの中では、総合的に、ピンク小聖火が全体的に最も材質によるノイズが少なくて聴きやすい。また、Gost-61ピンク・ダブルレターは、同じピンク・ダブルレターであってもGost-68とはかなり音の生々しさが異なり、Gost-56にかなり近い良い音がする。Gost-56とGost-61は、この録音については、ほとんど差は無いと言っても良い。モスクワ・プレスとレニングラード・プレスの音の違いは、モスクワ・プレスが若干、響きが豊かな感じがして、レニングラード・プレスは自然な響きがする。リガ・プレスは、低音がしっかりと響いたがっちりとした印象である。

たくさんの『第九』Gost-68のレコードを聴いて分かった大まかな傾向としては、レニングラードでプレスされた黄色ダブルレターは、モスクワでプレスされたと考えられるピンク・ダブルレターよりも音が良く、製造当時のテープの状態をよく伝える。一方で、ピンク・ダブルレターは、Gost-68のような遅い時期のプレスでもレコードの材質自体が原因と思われるざらつき感があるレコードがあるようだ。しかしながら音自体はしっかりとしていて、Gost-73のようなテープのコピーを重ねたような音が遠くなるような聞こえ方はしない。

Gost-56の中では『運命』が最も市場に出てきて入手しやすい。人気があったので、プレス枚数が多くなったのが理由だろう。フルトヴェングラーの最高傑作LPとも考えられるこのレコードが、比較的に入手しやすいのはラッキーなことである。一方で、『第九』もそこそこ出てくるが、2枚揃って状態が良いのは、かなり珍しい。

Gost-61のレーベルが付いた、レコード本体がGost-56のと同じような初期盤が、ごく稀に出てくる。要するに、過渡期のレコードで、レーベル自体も普通の白抜き「ダブル・レター」とは違う。材質起因のノイズが少なく、音の鮮度が良いので、もし選べるのであれば狙い目である。

メロディアLPのGost-68からGost73が製造された時期に、一時的に制作する機械が原因と思われる音質の低下が認められる。特に、次の2枚については、音がとても良いと感じられるのはGost-68の初期に製造されたと思われる、ほんの一部のレコードのみである。プレス・ミスなどの個体差がかなりあって、良い出会いに左右されるレコードである。

<Gost-68で初めて出たもの>
33D-027777/8 ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番

*初版ダブル・レターの多くには、曲名が記入された専用ジャケットがある。オリジナル・プレスの青レーベルはベートーヴェンの顔が印刷された白いジャケットに入っていて、ピンクダブルレターレーベルは紅白のジャケットに入っているのが基本のようだが、逆パターンもあるようだ。

2曲とも、Gost-68のレーベルで最初期と考えられるのは、青ダブルレター(白抜きMelodiya)とピンクダブルレターである。2曲の商品番号が続きであり、それぞれが同じデザインの共通ジャケットに入れられたことから、製造時期は同じと考えられる。このダブルレターは、後にプレスされたと考えられるシングルレターと比べると一皮むけたかのように音が良い。『田園』の音質について善し悪しがばらつきがある一方で、交響曲第7番は、どれもがある程度の力強い音を鳴らせても、鮮明さを備えた生々しい音を出すのはごく一部という印象である。CDの音しか知らない多くの人は、元々のこの2曲の録音の良さを知ったら、きっと驚くに違いない。

ダブルレターといえども、オリジナル・プレスとそうでないのが混ざっている。交響曲第6番『田園』のマトリックスが、初期プレスも後のプレスもA面3-2・B面3-2で変わらないのに対して、交響曲第7番は、初期プレスとの見分けがマトリックスで可能である。A面3-2・B面3-1が初期プレスで、A面3-2・B面1-2が後のプレスである。ただし、A面が同じ3-2であっても、初期プレスと後のプレスとの差が感じられるので、実際に聴いてみないと最終判断が難しいかもしれない。

日本向けに輸出された青レーベルは、ダブルレターではあるがGostが書かれていない。しかしながら、ダブルレターのレーベルが貼られているということと、ソ連国内向けレコードの音に似ていることから、ソ連国内向けに製造されたすぐ後ぐらいに製造されたのではないだろうか。

ダブルレターの後の時期に製造されたのがシングルレターである。このレーベルがついたレコードは、ダブルレターよりも音質が落ちる。テープの音をよく伝えるダブルレターの「当たり」レコードと比べると、シングルレターの音は「かなり」落ちるのが多い。Gost-68の時期にダブルレターからシングルレターにデザインが変わったが、ブラームスの2枚のように、シングルレターになってもかなり良い音を再生するのもあるので、レーベルのデザインは、大まかな目安にしかならない。

シングルレターで、テープの音そのものを伝えるような素晴らしい再生音を出すレコードにも出会った。Gost-68の製造期に作られた、ブラームスの交響曲第4番のイエロー・レーベルである。シングルレターからダブルレターにレーベルが変わる時期にプレスされたのであろう。Gost-68もまた古いレコードのためか、コンディションが良いのが少ない。海外のディーラーが良い評価を下していても、届いて聞いてみると針飛びや傷による周期ノイズが発生するのが意外に多い。思いがけなく良いコンディションのレコードに出会うのは、本当にラッキーである。

<Gost-73で初めて出たもの>
・33D-09083/4 ベートーヴェン:交響曲第4番(全楽章ライブ)
・M10-36605/6 シューマン:ピアノ協奏曲(ギーゼキング)
・M10-40429/30 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(レーン)
・M10-40961/2 R.シュトラウスの家庭交響曲 
・M10-41233/4 R. シュトラウス:『ドン・ファン』と4つの歌曲(アンダース)、ウェーバーの『魔弾の射手』序曲
・M10-42555/8(2LP)シューマン:チェロ協奏曲(マヒェラー)、ブルックナー:交響曲第5番

Gost-73で初めてレコード化されたこれらのレコードは、ピンク・シングルレター・レーベルが最初期プレスである。この時期のメロディアのレコードは、どういうわけか、オリジナルテープから何世代かコピーを重ねたような遠い音がする。唯一の例外は、シューマンのチェロ協奏曲とブルックナーの交響曲第5番の2枚セットであり、これだけデザインの違う青いレーベルであることとカタログ番号から判断すると、Gost-73の後期プレスと思われる。ジャケットに書かれた数字から推測すると、青いレーベルが1980年頃、マトリックスが違う赤レーベルの付いたレコードは1984年頃のプレスである。

<Gost-80で初めて出たもの>
・M10-45909 004 シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、交響詩「伝説」
・M10-45921 009 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(エッシュバッハー) 
・M10-45949 008 ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』前奏曲と「愛の死」、ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲
・M10-46005 000 ヘンデル:合奏協奏曲第10番、モーツァルト:交響曲第39番(ライブ)
・M10-46067 003 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番(ハンゼン)
・M10-46967/70(2LP) ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(レーン)、R. シュトラウス:家庭交響曲(旧フィルハーモニーでの最後の演奏会)
*Gost-73で出たのと同じ録音を番号を新たに2枚組にして作られた。
・M10-47465 005 ブルックナー:交響曲第6番

Gost-80の時期にプレスされたレコードは、基本的には、白地か赤地のゴシック黒文字の2種類のレーベルが付けられた。レニングラード・プレスの中には、青地か赤地のゴシック銀文字レーベルもある。戦争の被害を受ける前の旧フィルハーモニーでの最後の演奏会を収めたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とR. シュトラウスの家庭交響曲は、Gost-73の時とは全く異なるマスターテープを使ったかのようなクリアな音がする。ブルックナーの交響曲第6番以外は、同じデザインのジャケットを使っていることから、同時期に発売されたのかもしれない。これらの同じパイプオルガンの写真を使ったデザインのジャケットの裏には、1984年と書かれている。

大戦中の録音で、生々しい音を再現するメロディア盤は、基本的にはG0st-68までである。「例外」が9つ目のアイテム、ブルックナーの交響曲第5番とシューマンのチェロ協奏曲である。青地ゴシック銀文字レーベルGost-73が付いたレコードは、マグネットフォン録音の本当の実力を伝えるレコードである。ジャケットには1980年と書かれている。すぐ後の赤地ゴシック黒文字レーベルも決して悪くはないが、青レーベルは、まるでオールド・メロディアをきれいに再生した時のような驚くほど生々しい演奏を再現する。マトリックスも赤レーベルとは違う。1990年頃にプレスされた黒レーベルは、音質面で赤レーベルと大差はない。

ブルックナーの交響曲のように演奏時間の長い曲を、1940年代に、欠落無く1950年代の商業録音に負けないような音質で圧倒的な名演を伝えるのは、まさに驚異的であり、奇跡と言っても良い。元々、録音状態が良くて演奏内容も素晴らしく、ロシアからドイツに返還されたテープから、独フ協会と英テスタメントが、なぜかこの交響曲だけを短い期間に次々にCD化した。残念ながら、CDの音はテープの劣化が進んでいて今ひとつの印象だが、劣化が進む前に作られたメロディアのLPの音を聴くと深く心を動かされる。この交響曲は、構造的にかなりしっかりと作られていて、9つの交響曲の中でも最高の完成度なのだ。この曲には「版」の問題がほとんど無いのがそれを証明している。しかも戦火に苦しんだ人々が共感できるような内容で、この録音から聴けるのは、演奏者達が聴衆達と作品への感動を分かち合いながら生まれた名演である。この長大な作品への聴衆の没頭ぶりは、会場ノイズの少なさが証明している。作品の知名度はベートーヴェンなどよりは落ちるだろうが、実は、大戦中のフルトヴェングラーを象徴するような録音だと思う。メロディアのフルトヴェングラーの中でも「傑作」に数えて良いだろう。


写真:
´↓ベートーヴェン:交響曲第7番 33D-027779/80 Gost-68  青ダブルレター 専用ジャケット このデザインのジャケットに入った色々な演奏者による演奏を集めた、ベートーヴェン交響曲全集もある。『田園』と同じ時期に発売されたのに、新世界レコードによって輸入販売された中に含まれなかったのは、第4楽章冒頭に欠落があったからだろうか。

きキΕ戞璽函璽凜Д鵑痢愿脹燹戞33D-027777/8(a) 青ダブルレター ガスト・ナンバーなしは、まだ外国のアーティストのレコードを輸出しようとしなかったソ連時代に、新世界レコード社が輸入に成功した。CDとは比べものにならないほど音が良い。ジャケット裏の演奏者の部分に白い紙が貼られている。透けて見えるのを読んでみると、ここには、
最初の行に英語表記で「レニングラードフィル ムラヴィンスキー指揮」と書かれていて、次の行に、ロシア語で作曲家名と作品名、三行目に演奏者名がロシア語で書かれているようである。ムラヴィンスキーが1949年に録音した『田園』のカタログ番号は D-01091/2であることから、33D-027777/8(a)と印刷されたこのジャケットは、輸出するためにフルトヴェングラーのLP用に作られたジャケットだと分かる。これは、旧西側諸国の人々が、ソ連時代にフルトヴェングラーのLP を入手するのがいかに難しかったかを示す物的証拠といえる。

日本で付けられた帯の裏などによると、当時輸入販売された「フルトヴェングラー オリジナル・レコード・シリーズ ベルリン・フィル定期演奏会実況録音」は、次の10タイトルだった。当時、メロディアで出ていたLPの全種類だった。

(1)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付』 ブルーノ・キッテル合唱団ほか
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲(2枚組)
(2)
・ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調『運命』
(3)
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』 ウィーン・フィルハーモニー
(4)
・ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調
(5)
・ブラームス:交響曲第4番 ホ短調
・ベートーヴェン:『コリオラン』序曲
(6)
・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 エドウィン・フィッシャー(ピアノ)
(7)
・シューベルト:交響曲第9(7)番 ハ長調
(8)
・フランク:交響曲 ニ短調 ウィーン・フィルハーモニー
(9)
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』
(10)
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調

Л┐瓦稀ににか出会えないウルトラレア盤の『グレイト』。オールド・メロディアと(白抜き)ダブルレターの過渡期にプレスされたレコード。オールド・メロディア本体に新しいレーベルが付いているレコードで、材質ノイズが少ないのに音の鮮度が良い超貴重盤。写真のは、レニングラード・プレスのVSG盤で、レーベルの左側、GOST 5289-56の上にロシア語で小さくそのように表記されている。珍しい曲名と演奏者名が書かれた専用ジャケットの周囲はセロハンテープで補修してあるように見えるが、実はこれは印刷で、古めかしく見えるようなデザインである。

オールド・メロディアの中でも特に珍しいリガ・プレスのベートーヴェンの『第九』(Gost-61)。リガの『運命』とは違って、レーベル・デザインは、一般的なリガ盤と同じ。『運命』と同じように、低音がくっきりとした図太い音が素晴らしい。