AT限定でもいいじゃん、免許は免許だし、踏もうと思えばクラッチも踏めるよただし、捕まるけどね!!
今週は、“やさしいかりんとう”の話。
何を隠そうわたしは、極度の寂しがりやなのである。
そんなやつが車の免許を取りに、新潟県まで合宿に行った。ちょうどハタチの頃だった。
忘れもしない、行きの新幹線の中で早くも大後悔して、兄にメールを送った。
『2週間長いよ、新潟遠いよ、やっぱりやめればよかった!!』
『あっという間だよ。すぐに友達もできるし楽しいよ。がんばれ。』
優しい兄の言葉に半べそをかきながら、いざ新潟へ。
この合宿、部屋が個室だった。トイレ・バス付で普通のビジネスホテルの部屋みたいな感じ。集合部屋と違い、教習の時間以外に人と接することはほとんどない。窓の外は、うっそうとした雑木林…。初日はもう、友達なんてできる予感もなく、さみしいわ怖いわで、眠れぬ夜を過ごす。
2日目に、携帯の充電器を忘れて来たことに気がつき、送ってくださいませんかと母に電話をした。 ついでに部屋にない箱ティッシュと、目覚まし時計を一緒に頼む。その日も友達はできず、さみしくてさみしくて、 おまけにその夜なぜか金縛りに遭い、死ぬほど怖いし、もう免許などどうでも良くなり、本気で帰ってやろうかと思いながら朝を迎えた。
3日目、母より荷物が届く。箱を開けて、中身を確かめる。 充電器、よし。目覚まし、よし。ティッシュ、よし。かりんとう、よし。・・・んんー???な、なぜ、かりんとうが・・・?
あれだ。あの甘くて黒~い。あれがひと袋無造作に、ぼん、て。べつに、わたしはかりんとうが好物なわけでもなんでもない。しかも、知っている。それは合宿に出かける2週間くらい前から家にあり、誰も手をつけず未開封だったやつである。
箱に充電器や時計を詰めながら、母・利恵子は考えた。
『何か、入れてやりたい。でも、買いに行っている暇はない。何かないだろうか。ガサゴソ…かりんとうしかない。 娘はかりんとうなんて食べない・・・・。でも、何か入れてやりたい。・・・かりんとうしかない!!』
荷造りする母の気持ちが手に取るようにわかったその瞬間、シブいパッケージを握りしめて、子どものようにわんわん泣いていた。おしゃれなチョコでもキャンディーでもない。それは日本茶の友、かりんとう。
「おかあさ~ん!!うちに帰りたいよ~!!」
泣きじゃくるハタチの娘。けれど思い切り泣いたらすごくすっきりして、頑張ってとっとと免許を取って帰ろうと思った。
かりんとうはやっぱり最後まで食べなかったけど、枕元において寝たらよく眠れた。金縛りにはもう遭わなかった。次の日には、友達もできた。
そして決意どおりに、わたしは最短時間で免許を取り終えて、家に帰ったのでした。かりんとうも一緒に。
未開封のまま持ち帰ったかりんとうを、母は「やっぱ食わなかったか。」と言いながら、自分で食べていた。わたしが「おやつにはなりませんでしたが、魔除けにはなりました。」と言うと母は、「なにそれ?」と言った。
魔除けにはなったし、勇気も出たし、涙も出たし、友達もできたし、免許も取れたし、いろいろお世話になりました。
説明するのが恥ずかしくて、「なにそれ?」は聞こえないふりをしたけど、“やさしいかりんとう”のことはずっと忘れないと思う。