きよしのヅラまで薄くなっちゃうかもしれないから、関係ないけど電気を大切にネッ!東京でんりょく。
わたしが住んでいる町には「キヨシ」という名前の小さい商店がありましたが、残念ながら今年の2月に閉店してしまいました。このキヨシ、小さいからといって馬鹿にはできなかった。駅前という好立地、食料品全般が一通り揃い、しかも安い。
人がすれ違うのがやっとな程の店内には、所狭しと商品が並ぶ。無駄のないように厳選されている…と思いきや、見たこともない異国の調味料や、怪しげなドレッシングがしれっと陳列されていたりもする。
“大丈夫じゃないルート”で仕入れているのではないかとハラハラさせるようなラインナップが、今思えばなかなかオツだったのだ。
店員は韓国人と思われる男性1人と、ナニ人かわからない男性1人、そして「きよし」(経営者)と思われるおじさんが1人。
これが3人とも、笑っちゃうくらい愛想がない。一日密着すれば、「やってはいけない接客態度」というマニュアル的なビデオが1本撮れそうである。代わりに、「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、キヨシです。安いよ安いよ、キヨシです。安さがウリの、キヨシです…」という、 確実にきよしの肉声だと判るテープが流れているが、その声は割りと明るいので、“もしかするとただの恥ずかしがり屋さんなのかもしれない“と、わたしは思っていた。
そして店内の至るところには、客へ向けた手書きの熱いメッセージが貼られている。
「万引きはダメ!!バレてますよ」
「卵を割ったら買ってください。割り逃げ禁止」
「会計前に飲むな!犯罪ですよ」
「ちょっと待て!あなたは見られている!」
極めつけは、酒の棚にある長文メッセージ。
「いつも来る50歳前後の緑色のジャンパーの男性、迷惑しています。もう二度と来ないでください。」
決してネタではないのだ。初めて入店した時、自分はスラム街に越してきたのかと不安になった。
おまけにキヨシは、でんこちゃんもびっくりの節約上手。
レジ前には、「100円以下は袋に入れません。赤字になります。」 と張り紙がしてある。
なんでいちいち喧嘩腰なのかは解らないが、キヨシはビニール袋1枚の値段も計算しているわけだ。ヨッ、商売人。(テンション低め。)それは良しとしても、これがまたビックリするぐらい薄いビニール袋を使っている。ほんっとにうっすうす。「サガミオリジナルか!」とツッコミたくなるほど極薄なのだ。
一度、レジできよしが商品を袋に入れ、わたしに渡そうとして、持ち手の部分がぶち切れたことがある。さすがのきよしもこれには焦ったのか、「最近はねー。ガソリンがどんどん高くなって、こういうのもどんどん薄くなってるんだよねー。」と、苦し紛れにその場を取り繕っていた。
“いや、そうそう切れないよ!?石油高くても、向いのローソンの袋は切れないよ!?”と思ったけど、…何も言えなくて、夏。J-WALKである。
そして、あるとき気がついた。1000円以上買い物すると、袋がちょっと丈夫&きよしの機嫌がいい。最後の方は、「あと200円できよしの笑顔が...ありがとうございましたが聞ける!!」とか思いながら買い物をするという、新たな楽しみ方を見つけた。そんな自分が、少しだけ好きだった。
駅前のシンボルだったキヨシ。閉店すると知ったときは、本当にさみしかった。
「やだねったら、やだね~♪」と店の前で歌ってやろうかと思った。(捕まるか…)
「ありがとうございました」も言わない(知らない?)レジ係。
しなびたほうれん草。蛍光ピンク色した明太子。
客に敵対心むき出しの張り紙。マニアックな品揃え。
クララのように、か弱いビニール袋。
いつも釣り人みたいなベストを着ている、きよし…。
いろいろな思い出が、走馬灯のようにわたしの心を駆け巡る。
あたたかい涙が、頬をつたう。キヨシはわたしに、客商売の新しい世界を教えてくれた。ありがとうキヨシ。ありがとう!
最後に…ずっとずっと気になってたんだけど、あのねきよし?
その頭ヅラでしょ!!原料、ガソリンだねー!!