芸のためなら女房も泣かしちゃうようなやつはオッチーが泣かしちゃうんだから。
先日実家に帰った際に、両親と3人でカラオケへ行きました。
突如、採点機能にハマり出した母。
自分や私が歌い終わるたびに「何点!?今の何点!?」と、はしゃぎまくり。そして、“歌いたい歌”よりも“高得点の出る歌”に選曲のポイントを絞り始めた。
どこで聞いたんだか、“女性が男性の歌をうたうといい点がでるらしい”という、信頼度2%の知識をもとに選んだ曲は、『与作』。渋いイントロが流れ出したと思ったら、ボソッと一言…。
「これ、“ヘイヘイホー”のとこしか知ラネんだよな…。」
うん、なんかもう、いろいろ間違っていてすごい。
一方、カラオケに行く前からすでにかなり酔っ払っていた父。
酒と娘が生き甲斐である。最近じゃ年と共にますます涙もろくなり、わたしが何かを歌うたびに、隣で涙。
恋愛の歌であろうが友情の歌であろうが、詞の内容を自分と娘に置き換えてひたすら感動。
歌:「頑張っているからねっ~て♪強くなるからねっ~て♪」
父:「うんっ、うんっ、頑張れっ!頑張れっ!ウッウッ・・・(涙)」
歌:「ひとりじゃないから~♪わたしが君を守るから~♪」
父:「うんひとりじゃないっ!ひとりじゃないぞっ!ウウッ・・・(涙)」
…ものっそい歌いづらいんですけど。
そんな父がカラオケで必ず歌う大好きな曲が『浪花恋しぐれ』。
「芸のためなら女房も泣かす~♪」で始まる、“三歩下がってついて来い!はいアナタ”・・・的な、昭和の夫婦を象徴するデュエット演歌である。
曲中の、「・・・つべこべ抜かすな、酒や!酒持って来ーい!!」というセリフ部分を熱演する父に、「うっせえ、ジジイ!!!」という、趣を一切無視した母のアドリブ(もちろんマイクon)が花を添える。
次に父が一人で歌おうと、選んだ曲は『娘よ』。嫁いでゆく娘への、男親の思いを歌った曲である。
嫌な予感はしていたが、最初の一行を歌った時点で早くも、歌詞が心に響きすぎてしまったらしい。嗚咽しながら「やめとけってぇぇ~!!(泣)」を連発するという、奇抜な展開に。
そして泣きじゃくって歌えない父の代わりにマイクを持ち、しれっと歌う母。ナイス・メオトプレイ。父は最後まで、「やめとけってぇぇ~!!やめとけってぇぇ~!!」と叫びながら号泣し続けた。嫁ぐ予定など微塵もナッティンなわたしには最後まで、何を「やめとけ」ば良いのかは解らなかった。
歌い(?)終えた父が「俺、めぐが結婚するとき、披露宴でこの歌かあちゃんと歌うんだ!」と無邪気に言った。それこそこっちが「やめとけってぇぇ~!!」である。
楽しいひとときを過ごして、上機嫌になり飲みすぎた父。帰る頃にはろくに歩けない状態になっていた。
父は、足が悪い。障害者ではないけれど、片方がうまいこと動かないのだ。
年のせいもあって最近は、酒に酔うと特に歩くのが困難になる。
階段は一段ずつゆっくりでないと降りられないし、平らなところでも躓いてしまう。いつもは見守る程度だけど、その日は何となく父と腕を組んで、支えながらカラオケ屋を出た。
駐車場で父は、ふと言った。
「今日はありがとう。帰ってきてくれてありがとう。お父さん楽しかった。」
そう遠くもないくせに、気まぐれにしか帰ってこない娘に好きなものを食べさせてやり、カラオケに連れて来てやり、父は、「ありがとう」と言った。
父のことを、なんて豊かな気持ちを持っている人なんだろうと思った。わたしは「こちらこそ」と小さく言うのが精一杯だった。
いつかお嫁に行く日がきたら、この日のようにお父さんと腕を組んで、バージンロードを歩くと思う。お父さんに似て涙もろいわたしは、色んなことを思い出して入場するときからもう、泣いちゃうんだ。
せっかくのお化粧も崩れちゃって、お父さんもわたしと一緒になって泣いちゃって、「あらら親子して…」って笑われちゃうんだ。でもいい。二人で泣きながら歩こう。
そのときは、「今日までありがとう。」ってわたしの方が先に、お父さんに言いたい。