茨木智博さんの「クラシック・オカリナの世界」というコンサートは、10年以上にわたって続いているシリーズです。(共演者はピアニストの森浩司さん。)今年は5月10日(日)に開催されました。会場は兵庫県加東市のやしろ国際学習塾L.O.C.ホール。このホールを運営している公益財団法人が主催しており、このコンサートだけの特別なプログラムで開催されます。(最近は東京で同じ内容の収録コンサートも開催されているようです。また茨木智博さんのYouTubeチャンネルでのメンバーシップに登録すると後日の配信でもみられるようです。)

この企画で茨木智博さんは毎年新たな挑戦を続けておられます。単にクラシックの名曲を並べるだけではなく、オカリナという楽器の可能性そのものを広げようとされているように思います。だから私はいくたびに「クラシック・オカリナ」という新しい文化が少しずつ形になっていくのをみているような気持ちになります。
土の笛 今日も限りを 越えてゆく 挑む背中に 道は生まれて

このコンサートでは毎年テーマをきめてプログラムを組んでおられます。今年のテーマは「Scrigno~宝箱」(スクリーニョ)。このテーマに私はとても心を惹かれました。「宝箱」という言葉から真っ先に思い浮かんだのは、一つひとつが小さくても、それぞれに違った輝きを放つ宝石たち。短くても美しいクラシックの小品を聴かせていただけるコンサートを思い浮かべました。実際には短い曲ばかりではありませんでした。しかし、一曲一曲がそれぞれ異なる輝きを放ち、宝箱を開けるたびに新しい色彩と出会うような、そんな時間でした。音楽の価値は長さではなく、その一曲が放つ光なのだと、あらためて感じました。

チャイコフスキーの「感傷的なワルツ」は約1分30秒という時間でしたが、その限られた時間の中に深い情感が凝縮されていました。私は自分が提案している「86秒のオカリナ」をあらためて見つめなおすきっかけをいただいたように感じました。

プログラムの中で私が特に注目したのは「子守歌」でした。キュイの小品集「万華鏡」の中の「子守歌」、そして「ブラームスの子守歌」による変奏曲です。異なる作曲家による二つの子守歌をこのプログラムの中で見つけたとき、私は偶然とは思えない驚きを感じました。
この日のコンサートを聴きながら、ふと今年の南大阪オカリナフェスタ2026のことを思い出しました。今年の「86秒のオカリナソング」のテーマは「ララバイ(子守歌)」です。また、私自身も最近「ゆたかなこもりうた」という86秒のオカリナの曲をつくったばかりでした。そのこともあり、この日のコンサートにおける「子守歌」という存在は、私自身の現在の音楽的な関心と静かに重なり合うものとして響いてきました。子守歌は、子どものためだけの音楽ではないと思います。子どもにとって心地よい音楽は、大人にとってもまた、心に安らぎをもたらす音楽なのでしょう。
このコンサートは、オカリナの可能性を教えていただくだけではありませんでした。私自身が大切にしている「86秒のオカリナ」や今年の南大阪オカリナフェスタ2026 の86秒のオカリナソングのテーマ「ララバイ」という取り組みを、もう一度見つめ直し、その価値を静かに確かめる時間にもなりました。

「Scrigno~宝箱」というテーマのコンサートを聴きながら、私は一つの願いが芽生えました。一曲一曲が宝石のように大切に磨かれ、一人ひとりの演奏が誰かの心に残っていく。そんな時間を少しずつ積み重ねていくことで、南大阪オカリナフェスタもまた、誰かにとって「また開いてみたくなる宝箱」のような存在になれたら、これほど嬉しいことはありません。宝箱は、一度開けて終わりではありません。時々開けては、大切な宝物を眺める。南大阪オカリナフェスタも、一年に一度、その箱を開けるような存在になったら素敵だと思います。
オカリナの 磨かれし音 胸にしみ 短き調べ ながく輝く











