昔、サッカーのドイツW杯。
日本は黄金世代を擁して
史上最高のメンツ2006大会。
ジーコが戦術だった、と
褒めてるのか、けなしているのか
わからないくらいこの代表は
確固たるもの=戦術がなかった。
2002年日韓大会でわかりやすく
トルシエに植え付けられた私たち。
戦術というバイアスに縛られていた。
トルシエによって次の大会も
戦術ありきのバイアス越しに
ジーコを見て比較してしまうのだ。
当時の私たちが拍子抜けするほど
個人戦術と決め事をしない
選手任せな自由さに、逆に
面食らった人が多かった。
ワタクシは当時、最高の世代が
戦術に縛られずに個人で判断する魅力。
一番難しいけど、一番ワクワクした。
下の世代から活躍してきたのを
つぶさに見ていた選手たちばかり。
その世代が融合してピークを迎えた。
日本でもお馴染みのジーコのもとで。
最高のシチュエーション。
レジェンドとか使うやつがいるが
あの呼び方はゲーム上がりっぽい言葉で
なんだかあまり好きじゃない。
言葉に運動量が加算されていないから
安っぽくて、薄っぺらく感じてしまう。
ジーコのやるサッカーは
タレントがそろう強豪国だからこそ
成立するサッカーのやり方だった。
それくらいの選手が揃っていると
感じたからこそなんだろう。
選手に任せることで能力を
最大限の発揮させるために。
しかしそのやり方は日本には
まだ早かったのだ。
サッカー文化が成熟した国の
世界中に散らばるトップ選手が
時間をかけられないからこそ
個人戦術ベースでやれる芸当。
これに夢を見たのは私たちも一緒だった。
日本人は当時もいまもガチガチに
固められて準備してその通りやるとき
そのパフォーマンスはトップクラス。
サッカーに限らずだが。
確かにヨーロッパで活躍する選手が
目立ち始めた世代だが、甘くはなかった。
しかし狙って優勝するには
相応の選手が揃い、ピークを
決勝ラウンド以降に意図的に
持ってくるような流れが
うまくハマらないと結果が出せない。
トルシエによって叩き込まれた
戦術を理解しオーダーを忠実に守り
任務を遂行することよって
ある程度の位置にまでは導ける。
それが証明されたのが日韓大会だった。
だが、課題として残ったのは
戦術や想定が崩されたときに
何もできずに終わったこと。
グループリーグを突破し
その目標を達成してあらゆる
ピークが過ぎて狂乱の余韻の中
あっさりと抵抗もできずに敗退した。
さまざまな疑惑の中、勝ち進む
共同開催のライバル国を尻目に
もっとやれたのではという悔しさを
にじませながら、日本は敗退した。
戦術ありきからの、次のステップ。
直面する課題を突きつけられた。
マスコミは神経質にジーコの采配を
無能だ、無策だと嘆いてあおりながら
さらにナカータと他の選手の確執を
演出しつつ楽しみ、大衆の興味を誘った。
あの大会の直前のテストマッチ。
ドイツ戦でピークを迎えてしまった。
あの大会を通して観て思ったのは
大会が始まる前にピークを持ってくる
結果を出してはいけないんだなと。
むしろ大会前はコンディションも
含めて評判が良くないくらいでいい。
うまくいっていないくらいが
ちょうどいいのではないか。
あまり期待してなかった2010年。
期待していた2014年。
これまた期待低い2018年。
W杯の結果はご存知のとおり。
大会が始まると、大会に限らずだが
何事も順調には進まないのが常となる。
そこで修正して流れをつかみ、
ピークに向かっていくあの感じ。
それができた時は結果につながった。
いまの東京五輪代表はどこか
あの期待値の高い時とダブるのは
気のせいだろうか。
マスコミは選手の発言を真に受け
金メダルを取れるようなあおりをする。
なんら学習していない様子で。
大会前の、スペインとのテストマッチ。
あの時のドイツ戦が頭をよぎる。
もし金メダルを本気で狙える国なら
本番から逆算して、まだ本番じゃないと
流すのが当たり前なんだけど。
なんだかできることを全部やって
全部の試合で全部結果を出そうと
してしまうと悪い流れを呼び込む。
マジメな日本人はチーム内外で
頑張ってしまう流れを呼び込む。
そんな気がしてならない。
実際、選手のやる気がプレーの
ひとつひとつにみなぎっている。
かなり、前のめりになっている。
万にひとつ、スペイン五輪代表戦で
最高のパフォーマンスを見せて
結果を出したとしよう。
期待値は上がるだけ上がる。
それと対照的にパフォーマンスの
ピークは下がっていくのではないか。
次の本番でパフォーマンスが下がると
あれだけやれてたのにどうしてだと。
この短期決戦でのピークのつくり方。
いけるところまでいくスタイル。
やれるところまで出し惜しみ無く
毎回やりきるスタイルはどうだろう?
吉田らオーバーエイジのベテラン選手は
その辺りを感じ取っているだろうか。
自分が出たい、アピールしたい。
ライバルも負けられない。
ポジションを失いたくない。
どんどんボルテージは上がる。
しかしその分だけ知らず知らず
加速がついてしまいピークが早まり
コンディションの維持が難しくなる。
大会で結果を出すために
後悔しないようにやれることを
すべてやりきって不安を潰して
大会に入るような流れをつくる。
そんな時は得てして思うような
結果や運はついてこないことが多い。
こういう流れってハッキリしないけど
必ず勝負のアヤとしても存在してる。
これも杞憂に終わればいいんだけど。