「譲子弾飛」は中国版オーシャンズ11か | Observing China

「譲子弾飛」は中国版オーシャンズ11か

中国を代表する映画監督の1人でありながら、監督作品が「太陽の少年」「鬼が来た!」の超話題作2作とオムニバス作品の「陽もまた昇る」しかない姜文が新作を撮影、すでに編集作業に入っている(中国公開は12月)。

タイトルは「譲子弾飛(Let the Bullets Fly、弾丸を飛ばせ)」。「清末以降の北洋軍閥期を舞台にした伝奇的ストーリー」らしく、映画の宣伝文句的には「全編にわたる騎馬戦、銃撃戦、市街戦の大スペクタクル! 乱世の友情あり、愛情あり、男の戦いあり、笑いあり! 中国映画の伝統を変える一大巨編!」というところになるようだ。



「中国版オーシャンズ11」と呼ばれるくらいだから、とにかく俳優陣が豪華絢爛。馬賊の頭目を演じる姜文のほか、「男たちの挽歌」の周潤発、「非誠勿擾」の葛優、「中国の小さなお針子」の陳坤、日本でも人気の胡軍、そしてあの「名優」馮小剛……と、中国映画好きには信じられない男性俳優陣のラインナップが実現している。「インファナル・アフェア」のカリーナ・ラウ(劉嘉玲)も出演する。

近代史をきちんと学校で教えない日本人には北洋軍閥期、と言われてもなかなかピンと来ないかもしれない。簡単に言うと、義和団の乱(1899年)以降、清朝が勢いを失うのに乗じて勢力を伸ばし、辛亥革命(1911年)を経てなお中国政治に大きな影響力を与えた地方軍閥の時代、ということになる。袁世凱、段祺瑞、張作霖という名前を思い出してほしい。

いわば「最後の戦国時代」と言っていいかもしれない。この後中国は日本の東北進出と北・中支侵略によって混乱の内戦時代に突入していく。映画が描いているかどうかは不明だが、背後には日本だけでなくソ連やイギリス、アメリカが暗躍する。中国人にとってそれなりに思い入れがあるのに、これまであまり映画では取り上げられて来ず、政治的にもそれほど敏感でない「おいしい」テーマ……に姜文は目を付けたことになる。

「譲子弾飛」がこの時代をどこまで描いているかはまだ分からない。もしそれなりの深みをもって描けているのなら、この作品に豪華俳優陣を擁した(だがそれだけの)映画の代名詞である「オーシャンズ11」の名前を被せるのは相応しくない。姜文が「太陽の少年」「鬼が来た!」の気概をもって臨んでいるなら、「オーシャンズ11」超えを期待していいかもしれない。

願わくば中国版「七人の侍」であってほしい。