グーグルの中国での評判は必ずしも悪くない | Observing China

グーグルの中国での評判は必ずしも悪くない

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グーグルの中国「撤退」表明が世界を震撼させている。中国政府の検閲と中国方面からのサイバー攻撃に辟易したグーグルの正義感の発露――と、額面どおり受け取ることはできないが、さりとて百度にどうしても勝てないから、「表現の自由」にかこつけて逃げ出した――というITビジネス人士の冷ややかな分析も、あまりに表面的過ぎはしないか。

そもそも、検索エンジン界の巨人がどうして中国の民族企業にこんなに苦戦しているのか。

北京正望咨詢(チャイナ・インテリコンサルティング)というリサーチ会社が毎年、中国の検索エンジンシェアを公表している。北京・上海・広州(09年から深センも加わる)の3都市の百度、谷歌(グーグル)の各シェアは、

百度60・3%(06年)61・8%(07年)60・9%(08年)64・5%(09年)
谷歌25・5%(06年)26・9%(07年)27・0%(08年)25・5%(09年)

で、それほど劇的に動いているわけではない。もちろん「谷歌」側にとっては展望が見えない市場のように見えるが、次のデータを見ると、必ずしも悲観したものでもなかったことが分かる。

チャイナ・インテリコンサルティング社は「現在の検索エンジンの問題点」という調査で百度と谷歌の中国ユーザーの間の評判を比較している。

「基本的に問題なし」→百度39%、谷歌48%
「必要な内容を検索できない」→百度23%、谷歌13%
「検索結果に広告多すぎ」→百度9%、谷歌4%
「検索結果にウイルスあり」→百度6%、谷歌4%

「グーグルより百度のほうが中国語の検索では使いやすい」という“常識”が一般には信じられているが、それとは正反対の結果だ。グーグルと百度が反対なのではないかとすら思える。この結果を見る限り、「谷歌」としての中国でのビジネスはそれほど悲観したものではない。

中国人アナリスト肖宇生氏が06年に興味深いレポートを書いている。そのレポートによれば、グーグルが検索連動型広告で収益を得ているのに対し、百度は中国全土の代理店を通じて検索結果をオークションにかけ(広告ではなく検索結果である)、より高いカネを払った者が検索結果で高い位置に表示されるシステムを作り上げた。

これが今も変わらないとすれば、百度の検索結果に対するユーザーの評価が低いのは当たり前、ということになる。もし百度がグーグル同様に検索結果を「売り」に出さなければ、ユーザーの評価も逆転する可能性が高い。「ハンディ」をもらっているにもかかわらず、シェアが大きく動かないのだとすれば、グーグルが中国でのビジネスに未来はないと考えても無理はない。まして政府の検閲やサイバー攻撃といったマイナス要因が加わるのだとすれば、なおさらである。

グーグルとしては、中国という政治的・経済的泥沼に足をとられる前に逃げ出した、というところか。06年の本格参入以来、ずっと気になっていた「谷歌」という間抜けな中国名を眼にしなくてよくなるのは救いだが。