「CCTV経済年度人物」をめぐる疑惑 | Observing China

「CCTV経済年度人物」をめぐる疑惑

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CCTVが毎年末、「中国経済年度人物奨」という中国経済人の表彰活動兼イベントをやっている。2001年に番組の一企画としてスタート。経済学者の呉敬璉や百度CEOの李彦宏、人民銀行行長の周小川をその年の中国経済を代表する中国人として選んで来た。最近では「中国の経済分野のオスカー」と言われるまで成長した、らしい。

その「中国経済年度人物」の今年の表彰式が23日にあったのだが、「現代快報」紙が審査結果に疑問を投げかける記事を25日掲載した。元々経済学者や経済記者の投票方式で始まった同賞だが、現在はネット投票がその選考課程に組み込まれている。同紙が疑っているのは主に

1:候補者のネット総得票数が2億5000万票にもなり、1人の候補者の得票が一晩で900万票も増えるなど票の動きが不可解。

2:得票の急増現象は12月18日から19日にかけて起きたが、CCTVはもともと23日だった投票締め切りを突然19日に切り上げた。

記事は、記者が「2009CCTV中国経済年度人物候選人網上評議」というキーワードで検索すると、「ネット投票サービス」引き受けます、という広告がたくさん表れる――という傍証を挙げつつ、「不正投票」が横行していることを匂わせている。

■□「2億5000万票」は多いか■□

今年のネット投票期間は17日間。CCTVの一カ月のPVがどれくらいか定かでない。投票数はもちろんPVより少ないとしても、2億5000万票というのは、中国の3億4000万人というネット人口から考えて多いのかどうか。

ちなみに、英国BBCの2009年3月の月間PV数は37億(!)。日本の朝日新聞でも2億3000万ある。CCTVの数は全世界の英語圏読者がアクセスするBBCの37億まではないだろうが、朝日よりは多いだろう。

英語の公用語人口14億人に対して中国語は10億人。ヤマ勘でBBCの半分とみてCCTVのPVは18億。投票期間は約半月だから、さらにその半分で9億。サイトを訪れた9人に2・5人が投票する……ちょっと多い気もするが、あり得ない数字ではない。少なくとも「分母」を「分子」が上回るという矛盾はない。

「投票代行業務」も、少なくともCCTVの能動的・組織的犯行は裏付けない。あくまで、各候補者がズルをしていたことを示す傍証でしかない。

□■書き込みが元ネタの「調査報道」■□

現代快報が頭に描くストーリーラインも、各候補者(各企業)が「投票代行業者」をつかって「ニセ投票」を行い、CCTVもそれを暗黙している――というところなのだろうが、今ひとつそれは伝わりにくいし、何より決定的な証拠に欠ける。そもそも、元ネタのほとんどがネチズンの書き込みである。

彼らの調査・批評能力を必ずしも否定するものではない。ただそれを端緒にするのは構わないが、あくまで「ウラ取り」は記者が自分の責任でやらないと、調査報道は成り立たないし、記事に説得力は生まれない。

現代快報は新華社系の日刊紙タブロイド紙で99年創刊。江蘇省エリアで100万部を発行している。新華社系地方紙がCCTVを攻撃する――最近も新華社は国営通信社と思えない動きをしたが、これもその流れの一環なのだろうか。

今年2月の社屋ビル火災以来、CCTV叩きが中国メディアのトレンドなのかもしれないが、この「調査報道」はあまりにお粗末。ずっと当局のリークに頼って来た中国人記者の調査報道能力は、まだまだ西側記者には遥かに及ばない。