香港メディアの台湾侵攻作戦 | Observing China

香港メディアの台湾侵攻作戦

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香港のメディア企業「壹傳媒」の主席、黎智英が「壹週刊」「蘋果日報」で台湾に殴りこみをかけたのは01年。この2つのペーパーメディアで台湾の新聞・出版界を制圧した黎は11月、新たに台湾でインターネットニュース「動新聞」の配信を始めた。この「動新聞」、既存のニュースメディア人士が思いもつかなかった方法でニュースを伝えているのだが、その過激ゆえに良識ある台湾のお父さんお母さんたちの猛反発を招いている。

通常ニュース映像がない場合、テレビメディアはほかの資料映像を使ったり、あるいは写真を静止画として使ったりしてお茶を濁す。ところが、「動新聞」は自分でCGを使ってニュース映像を作ってしまう。最近ではタイガー・ウッズにビンタを食らわせ、逃げるウッズの車の後部ガラスをゴルフクラブで叩き割る美人鬼嫁の姿も再現している。



これを「暴力」「性」絡みの犯罪ニュースでやるのだから、台湾のお父さんお母さんはたまらない。11月末、社会福祉団体の抗議を受けて台北市長の郝龍斌が蘋果日報に計100万台湾ドル(280万円)の罰金を課し、小中高校での同紙の購読を禁じる措置を取ると(そもそも蘋果日報を学校で読むのもどうかと思うが)、蘋果日報側も市長を「強制罪」で告訴。ところが蘋果日報がなぜか突然謝罪文を紙面に掲載した。

突然のわび入れの背景には、壹傳媒が台湾でテレビ局の開設申請をしていることがあるらしい。台湾当局は日本政府と違って放送局の新設に寛容だが、それでもさすがに「壹電視」の開設は認められないだろう、という見方が大勢のようだ

台湾人たちが動新聞に拒絶反応を起こすのは単に「エロ」「暴力」ゆえ、ではないような気がする。壹週刊も蘋果日報も報道の自由を誇る香港の媒体だし、そもそも壹傳媒は反大陸、民主派メディアである。それでも、台湾人は何となくその背後に大陸の影と不安を感じているのではないか。じわじわ大陸に飲み込まれる香港に、自分たちの将来を重ねているわけだ。

このニュースが両岸の事実上のFTAである中台経済協力枠組み協定(ECFA)の話し合い(と反対デモ)に合わせて出て来たのは、単なる偶然ではないだろう。