大陸メディア初の政局記事(続) | Observing China

大陸メディア初の政局記事(続)

人民日報系の環球時報英語版Global Timesに続いて、南方週末12月3日号が今回の中共人事に関する政局記事を打った。

「『18大』に向けた14人の省・部級官僚の集中人事」という味も素っ気もない見出しが付けられた記事の中に、福建省委書記に異動する胡春蘭・中華全国総工会第一書記の後任について、「同会副主席を兼任する孫宝樹・人力資源社会保障部副部長が後任の見通し」という人事予測を潜ませていた。

総工会のサイトを見る限り、胡春蘭の後任はまだ決まっていないようだ。博訊網が11月30日、胡の人事記事がいったんアップされたあと、2時間もしないうちに中新網など各サイトから削除されたという情報を流しているから、何か人事でもめる要素があったのかもしれない。

Global Timesの記事もそうだったが、中共人事に関する「前打ち」を見るのは初めてである。党中央宣伝部が3日、わざわざ「南方某報(秀逸な表現!)の記事はでたらめ」と否定するコメントをわざわざ流しているが、南方某報は6日夜現在、サイトから記事を削除していない。

■□中国メディアと中宣部の「明るい未来」□■

記事はこのほかにも、人事を伝える12月1日の関係各省の党報の中で、河北日報と重慶日報の記事の量が少なかった、とも伝えている。重慶日報にいたってはわずか50字あまりだったらしい(1行15字で4行!)。

今回の人事が重慶市トップの「打黒書記」様の癇に障ったのかどうか定かでないが、しかし中共人事の前打ち記事が大陸メディアから出るなんて、これまででは考えられなかった。

中宣部が否定のコメントを出したことも喫驚であるし(あとユーモアも!)、南方週末が記事を直ちに削除していないことも変化を感じさせる。

数年前、中宣部はメディア監視担当の「閲評小組」を江沢民時代の100人規模から100グループ規模に増やした。財経の編集長辞任劇、多維網の閉鎖(さいきん接続不能になっている)、南方週末のオバマ会見への圧力……と、すべてが中宣部の仕事ではないにせよ、報道に対する圧力は相変わらず続いている。

その一方で、Global Times やチャイナデイリーの報道にみられるように、メディア自由化の動きもある。度重なる圧力にもかかわらず、南方週末が発刊し続けているということは、廃刊にすると人民の反発が大きすぎると中宣部が判断しているからだろう。

大局的には市場化の波が中宣部を呑み込みはじめているように見えるが、どうだろうか(希望的観測かもしれないが)。