彭麗媛と習近平 | Observing China

彭麗媛と習近平

ポスト胡錦涛の一番手である習近平の妻で国民的歌手の彭麗媛が来月、所属する人民解放軍総政治部歌舞団の一員として訪日する。複数の日本メディアが27日夜から28日朝にかけて報じた。共同通信によれば、習自身も11月下旬か12月に訪日する予定なのだそうだ。

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人民網の今月21日の記事によれば、総政治部歌舞団は20日に訪日について発表していたという。今回の公演で彭は芸術総監督を務める。そして演目である「木蘭詩篇」の主役花木蘭を演じるのは他の若手歌手である。一般席で8000円払って入場しても、残念ながら彭の伸びやかな歌声は聞けそうにない。

国家一級歌手にして、解放軍所属の「文芸戦士」中の最年少少将——ゆえ、中国の政治家夫人にしてはめずらしくウェブ上に写真や情報があふれている。ありきたりの礼賛記事ばかりかと思いきや、思わぬ情報にぶつかることもある。

■□2人を結びつけた「共通体験」■□

2004年、<FTV明星心情>という番組に出演した際、彭が話した内容と見られる記事を今でも見ることができる。そこに、公式プロフィールには出てこない次のような彭の情報が書いてある。

「小さい頃、彭麗媛は軍に無限の憧れをもっていた。しかし出身が悪く、しかも母方の叔父と黄埔軍官学校出身の叔母の夫が台湾にいたため、父親は(文革時に)『右派の反革命』と批判されていた。彼女は(正しい)政治的身分について初めて(政治的抑圧から)解放されると思った」

「(解放軍に)入営して十数日後、部隊幹部が彼女を当時、もっとも危険な前線の慰問活動に派遣した。突然の命令に、彭はびくびくしながら現地での公演の舞台に立った」

彭は1962年に生まれ、18歳で「文芸戦士」として解放軍入りしている。あとの情報にある「当時もっとも危険な前線」は、おそらく79年の中越戦争直後の中国・ベトナム国境地帯だろう。入っていきなりそんなに過酷な任務を言い渡されたのは、彼女に有力な後見人がおらず、地位も最初は決して高くなかったことを示している。

父親の文革受難話も興味深い。香港メディアの中評社が昨年、習との出会いについて語った「最初会ったとき、感情の面で多くの共通点があるのに気づいた」という彭のコメント入り記事を転載している(元記事は山東省の都市女報)。習も父親とともに文革で辛酸をなめた。「多くの共通点」の中には間違いなく文革体験が含まれるはずだ。

年齢が10歳も違う「図体は大きいが(少なくとも当時は)あまりぱっとしない太子党の政治家」と、「国民的解放軍歌手」がなぜ接点をもちえたのか、長い間疑問だったのだが、やっと氷解した。

習が毛沢東に嫌悪感をもっている可能性について先日書いた。次期総書記・国家主席夫妻がともに文革、そして毛沢東に露骨に反感を示す事態になれば、中共の正統性をゆるがす一大事だが、そこまでドラスティックに動くだろうか。

*ネットにはこんな婚沙?(結婚写真↓)まで残されていた。まだまだ「掘り出し物」があるかもしれない。

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