ウイグル騒乱:中国政府が情報公開する理由 | Observing China

ウイグル騒乱:中国政府が情報公開する理由

5日夜に始まった新疆ウイグル自治区の「騒乱」の死者数が150人を超えた。昨年3月のチベット「騒乱」の公式死者数22人を超え、89年の天安門事件の公式死者数319人に迫る勢いである。今回の事態では、中国政府の積極的な情報公開ぶりが際立っている。昨春のチベットでは厳しく規制をかけた海外特派員の自治区入りも容認している

中国政府が焼き討ちや流血の写真を大盤振る舞いするのには、それなりの理由があるはずだ。天安門事件の民主活動家で台湾に亡命しているウイグル人のウルケシ(吾爾開希)がブログで「中国政府はウイグル人と全世界に向けて冷徹に鎮圧した事実を伝え、さらなる『恐怖』を作り出そうとしている。これは大規模な軍隊を北京に入城させ、戒厳令を実行したあの年の出来事とまさに同じだ」と書いている。チベットのように、自治区へ入る道を封鎖しようと思えばできるウイグルで起きた騒乱と、首都のど真ん中で起きた天安門事件が同じとは思わないが、少なくとも中国政府が今回の事態にあまり引け目を感じていないことは確かなようだ。

もちろん、ウイグルの分離独立運動であるETIM(東トルキスタンイスラム運動)は米政府からテロ組織認定を受けているし、今年の夏にはオリンピックもない。ただ、今回の事態は昨年のチベットより「文明の衝突」度が高い。いったん着火するとより激しく燃焼するはずだ。それでもあえて情報を表に出すのは、中国政府が鎮火に相当な自信をもっていることの現れである。その根拠が金融危機後の世界を(ほぼ)1人で支える経済力なのか、ダライ・ラマ14世のような偶像なきウイグル人のアピール力の弱さなのかは分からない。

ひょっとしたら、「ネタを小出しにするとあとでややこしくなる」という情報公開の大原則に、中国政府もやっと気づいたのかもしれない(ホントにそうならいいのだけど)。