幸四郎ライを観て。

2007年版を観た時と同じくらい、

シビれまくった今月のはじめ。

なんせ…コレがコレで

ライが"鬼"になったもんで。


ほどなくして。

もう一人のライ…松也ライに会いに

再び新橋演舞場へ。


この日は、カーテンコールの最後に

松也ライから客席に投げキスいただいた。

客席も盛り上がっていたし、

初見だけど、

松也自身もノリにノッていたと思う。


そのくらい…

松也ライは素晴らしかった。

「あぁ、ものすごく面白いお芝居を観た。

やっぱり歌舞伎って面白いっ…」

心からそう思わせてくれた。


彼がその良い声で台詞を言う度に。

彼が見事な身体能力で

ところ狭しと舞台上を動き回り、

剣を振るう度に。

松也の芝居が生み出す"熱"に

ビリビリとあてられ、

それはとっても心地よくて。


第一幕から第二幕、終盤に向かって

加速度的にその熱量が増え、迫力が増し、

松也ライから目が離せなくなった。


自分が松也ライを観ていて、

特に切なくなったのはキンタとのやりとり。

役者同士の年齢が近いのも

あるかもしれないが、

何者でもなかった序盤の二人は

まるで本当の兄弟のよう。


村にいた頃からライを兄貴と慕うキンタ。

そんなキンタの純真な気持ちを

いとも簡単に踏みにじったライ。

目を潰され、ライに裏切られたと

知ったキンタの心中は…察するに余りある。


後からキンタに指摘されたように、

キンタの命まではとらなかったライ。

松也ライなら…。

松也ライならば。

ライがキンタを殺さなかったことに、

ライにまだ"人の良心"が

ほんのわずかでも残っていたのか、と

少しホッとできたのである。


しかし、そんなものはかなぐり捨て、

"究極の悪"でもって突き進んで…

ーー朧の森を真っ赤に染め上げ、

最後のペテンをしかけたライ。


オボロの森によって産み出された、

かつて"ライ"という男だった、"オニ"。


ーーライはこうして"鬼"になった。


とにもかくにも、

かっこ良かった松也ライ。


ーー歌舞伎界の

新たなダークヒーロー、爆誕。


そんなことを思いながら、

カーテンコールに手を叩き続けたーー。



…さぁ、この後。

自分にとっては最後の。

再びの幸四郎ライが待っている。