​風に狂ふは、散る花か、
それともこの身の乱れ髪か。

黒髪をきりりと結びたる
紅きりぼんは、ひとつに繋がれぬ
さだめを縛りし、
まじないの鎖にほかならぬ。

振り仰げば、空は一面
血を吐きたるようなくれないの吹雪。


その凄まじき白昼夢のなか、私はただ、石のごとく背を向けて佇むのみ。

「あなたの名を、呼ぼうとして止めた。」

​呼びかければ、その瞬間に、このうつしの景色は
さらさらと崩れ、 
私は黄泉の淵へと引き摺り込まれるに違いなき。


唇を噛み締め、言の葉を
喉の奥にほうむれば、 
未練は毒となって五臓を駆け巡る。

​ああ、いっそ、このまま花に呑まれ、影も形もなくしてしまいたい。

​袖に纏わる、はかなき花の冷たき手ざわり。

それは、去りし人の執着か、はたまた、己が情の化身か。

​振り返れば、そこには地獄がある。

前を向けば、そこには虚無がある。

呼べぬ名を胸に、
私はただ、永遠に止まらぬ花の荒野を彷徨うのでございます。