​そらの片隅に、「名前を失った星」がありました。

​その星は、誰からも呼ばれなくなったことで光を失い、冷たい影の中に沈んでいました。

そこに住んでいたのは、光の精霊と、一人の旅人です。

二人は長い時間を共に過ごしましたが、星の寿命が尽きようとした時、残酷な運命が告げられます。

​それは、星が消える瞬間に交わされる「二度と会えない約束」でした。

​星が塵に還れば、魂は宇宙の濁流に飲み込まれ、二度と同じ場所で巡り会うことはできません。


旅人は震える声で、精霊の消えゆく指先を握りしめました。

「行かないでくれ。君を忘れたくない」

​精霊は静かに微笑みました。この星の掟では、消滅の際に「最後に一つだけ叶う願い」が許されています。


旅人は迷わず願いました。

​「彼女の名前を、もう一度だけこの宇宙に刻んでほしい」

​その瞬間、真っ暗だった足元から眩い光が溢れ出しました。失われたはずの星の名前が、数千億の火花となって宇宙の隅々まで響き渡ります。

精霊の姿は光に溶けて見えなくなりましたが、旅人の心には温かな温度が残りました。約束通り、二人は二度と会うことはありません。けれど、夜空を見上げれば、そこには新しく名付けられた一番星が、今も旅人の行く先を照らしているのでした。




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