東北未来リーダーズサミット2012
10月12日~14日、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・渋谷)において、
東日本大震災で被災し、困難な状況を経験しながらも、グローバルな視野を持ち、
国内外で活躍する志をもつ若者たちが、 東北の復興のあり方について果たすべき
社会的な役割について考えました。

岩手県釜石出身の小川彩加さんのスピーチを紹介します。

小川彩加です。岩手県釜石市から来ました。
震災で私は家族全員を失いました。
両親・姉・祖父母がいなくなり
17年間暮らした家も失いました。
これ以上失うものはないというくらい私はすべてを失いました。
3月11日地震の直後、私は母と祖母と高台に避難しました。
しかし、黒い壁のような波は私たちのすぐ背後に迫っていました。
その時、母が言った「津波だ」という言葉が、私が最後に聞いた母の言葉となりました。
走って坂を上り山を登り私は助かりました。
でも、どこを探しても母と祖母の姿はありませんでした。
翌日の朝、がれきの上を母と祖母の名前を呼びながら探しました。
木にささったおばあさんを見たときは震えが止まりませんでした。
あの時見たあの悲惨な光景は今でも私の頭から離れません。
数日後、姉がなくなったこと父が行方不明であることを知らされました。
遺体安置所で姉と対面したとき、姉の頬を触り何度もありがとうと言いました。
私の涙で冷たくなった姉の頬は濡れました。
もしかしたら目を覚ましてくれるんじゃないか、そう思いました。
姉から離れたくありませんでしたが、火葬して姉は灰になってしまいました。
そして行方不明の家族を探す日々が続きました。
亡くなった人の写真がおさめられているファイルを一枚一枚めくって探しました。
1ページ1ページめくる度に衝撃が走りました。
まだ幼い女の子、手足が曲がったままの遺体、私はたくさんの遺体を見ました。
もし次のページが
父だったら。
母だったら。
早く見つけてあげたいけれど、事実を受けれる事が出来ず、
ページをめくる事に途方もない恐怖を感じました。
その後、父と祖母は見つかりましたが、母と祖父は今も行方不明です。
たった一瞬にしてあまりにも多くのものを失い、
なぜ自分だけが助かったのかと心も魂もどこかにいってしまった気持ちでした。
震災直後はぼんやりと、高校を卒業したらどこかで働くのだろうと思っていました。
けれど、
震災の後にたくさんの方々に出会い、
世界が広がり、
人と人とのつながりの素晴らしさを知り、
そしてその過程で芽生えたアメリカへの留学は劇的なスピードで実現し、
今年の6月から、ミシガン州の高校に留学しています。
ルース大使、ビヨンドトゥモロー、他にもたくさんの、
本当にたくさんの方々の支えで
多くのチャンスや機会を得ることが出来ました。
チャンスは誰にでもあるわけではありません。
私はあの日、死んでもおかしくありませんでした。
でもこうして今ここに生きています。
生かされています。
多くのものを失いましたが、
多くのものを得ることが今の私に正直怖いものはもうありません。
あのような体験をした私だからこそできる事があります。
あの時の苦しみを思い出せば、なんだってすることができます。
生きたくても生きれなかった人々がたくさんいる中、私は生きています。
人は助け合い、支えあい、思いやりながら生きているのだと改めて実感しました。
私がたくさんの方々からきっかけやチャンスをいただいたように、
私も誰かにきっかけやチャンスを与える側に人間になりたいと思っています。
過去は過去でもう戻ることはできません。
でもこれからの自分の将来は変えることができるのです。
当たり前のことですが、私にとってとても重みのある言葉です。
時間は誰にでも平等です。
だったらたくさんのことをしよう、そう思います。
将来はファッションデザイナーとして活躍し、世界に貢献できる人間になりたいと思います。
そして単純な言葉ですが、”幸せになる”これが私ができる唯一の親孝行です。
きっと私は今までたくさんの人にかわいそうな子だと思われてきたでしょう。
悔しいです。
このような悔しさも私の原動力となっているでしょう。
震災はもちろんない方がよかったけれど、
辛い体験があって、今の自分があるとも思います。
震災後にたくさんの出会いと劇的な人生の変化があり、
今思うと、震災前の日々が、
震災の後の人生のために存在していたような気すらします。
3月11日というあの日がなかったならば、
私は今日という日を 夢を持って生きていただろうかと自問します。
姉はいつも弱い立場にある人のために行動する人でした。
父からは、思いやりを持って人と接することを学びました。
母からは強く生きることを教わりました。
3月11日あの日から 家族を思わなかった日は一日もありません。
家族が私に残してくれた思いや意思を胸に、
与えられたチャンスを大切に、自分の可能性を信じ、
そして何よりも自分の気持ちに素直に生きていきたいと思います。