愛人(5) |  阿古・二本の虹 第2章

 阿古・二本の虹 第2章

滝の中に洞窟がある。

滝の外側から落ちてくる水に限りなく近づいたとき、砕け散る小さな水玉に二本の虹は見えた。

[ 真 ]


 蝶々は本州から奄美諸島へ向かうらしい。

なぜそんな遠くを移動するのだろう。何に会いたいのか。何にぶつかりたいのか。何にほめられたいのか。

本能的なものか。きっと、でも、何かを求めている。


 そんなことを考えながら弘前城のお堀の横にいた。しだれざくらは終わっていた。

おれは桜を思い出しながら「さくら」という詩を考えていた。

桜のトンネル そんな出足を考えた。ダサいだろうか。そこには少女がいる。

なぜか泣いている。どうしたんだろう。ふられたのだろうか。それとも家庭内のどうしようもない問題。

おれは少女に話しかける。

「コーヒー飲まない?」

超古いトーク。

「飲む」

何だろう、なんかわからない。その子についていく。

ジャズ喫茶に入る。ソングフオーマイフアーザーが流れている。

「私これすきなの」