もう日記は書かれていないけれど、あと少し続けます。
会社に入ると仕事が面白くて熱中した。
朝から深夜まで一心不乱に働いた。
早く終わる日が終電だった。
それでも面白くて毎日夢中になっていた。
仕事も面白いが、横浜も魅力的な街だった。
社会人としての生活を満喫していた。
そんな時、一人の女性を意識し始めた。
その娘は、嘉子さんと同じく、小柄で清楚で可愛かった。
そして正義感が強く、言いずらい事でも真心を込めて言ってくれる人だった。
表面的な付き合いではなく、お互いの気持ちや考えを
伝え合えるようになっていった。
喧嘩もするけれど、心から感動を共有し合えるようになり、
その娘に惹かれて行った。
いつしか嘉子さんの影が消えて、その娘がかけがえのない人となった。
今度は大切に育て、そしてプロポーズした。
その娘を通じて分かったことは、
僕は自分の事ばかりで相手の気持ちを考えられない、
そして相手を思いやる気持ちが少ない、
相手の気持ちに寄り添っていないという事だった。
それを自覚して、やっと大人になれたと感じた。
今頃だけど、長いこと回り道をしたけれど、
やっとちゃんとした大人になれたのかなと思った。
そうして、この『日記』を見つけた。
・・・・・
そこにはやりたい事がみつけられず、もがき苦しむ自分がいた。
そして大好きな女性と思うようにいかず、葛藤する生々しい自分がいた。
そんな切ない自分の感情が書かれていたけれど、
そこには嘉子さんの気持ちが欠落していた。
自分本位で別れを切り出した時、
どんなに悲しくて、苦しくて、辛い思いをしただろう。
それでも最後に会ってくれた、その優しさ。
その時に思いを馳せると、いたたまれなくなる。
僕は彼女の気持ちを考えていなかった。
もう一歩踏み込む勇気がなく、
幼かったのは僕の方だった。
好きだと言いながら、彼女に寄り添えていなかった。
だから最後は受け入れて貰えなかったんだと思う。
僕は振られた側のような気持ちになっていたが、
それはとんでもない事だった。
最後まで傷ついていたのは嘉子さんだった。
日記を読んで、その事がはっきりと感じられた。
そして『小説』も出てきた。
何篇かあったけれど、どれも何をやって良いか分からない青年が、
もがき苦しんで自分探しをするのがテーマだった。
そこにも本当に未熟な自分がいた。
どの場面でも青春の1ページは嘉子さんと共にあった。
会って伝える事は出来ないけれど、
どの時期もどの場面も、楽しくて、嬉しくて、ときめいて、
何よりも素敵で大切な時間だった。
そんな時を一緒に過ごせたことに感謝している。
素敵な思い出をありがとう。
そしてごめんね。
