破壊王回顧録。今のプロレスには橋本のような破天荒なレスラーが足りない。あまり顧みられることのなくなった橋本を忘れてほしくない。そんな思いで長いこと続けてきたが、そろそろ総括をしなければならない。ずいぶんと時間がかかってしまった…
振り返れば、橋本の第一印象は「重い男」だった。1996年の3月、確か武藤ライガー組対橋本平田組のタッグマッチ。当時知ってたレスラーは蝶野正洋、高田延彦、獣神サンダーライガーの3人だったので、この試合はライガー以外初見である。記憶があいまいなので試合展開はサッパリ覚えていないが、唯一記憶に残るシーンはとても間抜けなものだった。ライガーが橋本に雪崩式フランケンシュタイナーを仕掛ける。が、橋本は無表情でコーナーポスト上で微動だにせず、ライガーだけひとり回転してリングに落下。「橋本?な、なんて重いやつ!」と妙な印象だけが残った。
この印象が一変したのが4.29東京ドームの高田戦。友人が高田ファンで、事あるごとに高田最強説を唱えるので、そのまんま影響をうけて橋本が勝てるわけないとたかを括っていたのだが、結果橋本が高田を圧倒してしまった。(友人は橋本がフィニッシュ前に放ったボディへのヒザ蹴りを『金的だ!キタネェ!』と必死に抗議してたっけ…)橋本強し、この試合からすっかり橋本に魅了されて、レスラー最強の座はアッサリ高田から橋本に移り変わった。ところがそれが崩れるのもあっという間であった。その年の夏、G1クライマックスの舞台で、橋本の前に長州力が立ちはだかった。リーグ戦の初戦とは思えない壮絶な消耗戦の果てに橋本は敗北。以降まさかのリーグ戦全敗、あの高田戦の勇姿は何だったのかと目を疑うほどの転落ぶりであった。
それからも橋本は揺れる男だった。闘魂伝承を袖にされた第一次小川抗争、IWGP転落、第二次小川抗争から新日本解雇と、思い通りにいかないもどかしさ、不安定さが橋本を追うと付きまとう。まさかの新団体旗揚げ、奇跡のメインと逆転ホームランを放つが、ゼロワンは数年で崩壊してしまう。それでも橋本は思い出深い、良いレスラーだ。生きている橋本を見れたのは10年足らず、現在2022年、実際に自分の目で追ってきた年月よりも、思い巡らす年月の方がずいぶんと長くなってしまった。もう橋本は自分のなかにデーンと腰を据えてしまっている。やっぱり橋本は「重い男」なんだろう。
続く