23.ヴォトリエント | 脂肪肉腫との戦い

脂肪肉腫との戦い

2015年8月14日に腹腔内の巨大脂肪肉腫の摘出手術を受けました。
その後、2016年9月、2017年11月、2019年9月、2020年9月、2021年6月、2021年10月、再発手術を受けました。
私にとってまさに戦いです。
これまでの経過を綴っています。

平成27年6月22日、県立がんセンターでの診察です。最後の望みであった有明病院でも断られ、今後の治療方針を決めるためにやってきました。
思い起こせば、その年の2月21日に正体不明の腹部巨大腫瘍が発見されてから4か月、様々な検査をそれも相当の苦痛を伴う検査を受けたにも関わらず、腫瘍に関しては一切何の治療もしていません。この日は、少しでも何かを始めたいという思いで主治医と面談しました。
「分子標的薬のヴォトリエントを処方しましょう」と主治医の比留間医師はいいました。
分子標的薬という言葉は、同級生のH君から聞いていました。この薬は、悪性軟部腫瘍に新しい血管ができるのを阻害する薬で、平成24年11月に発売された比較的新しい薬です。
抗がん剤は、直接的に腫瘍を破壊するため、同時に他の正常な細胞まで破壊してしまうという副作用があるのに対して、ヴォトリエントは間接的に腫瘍が増殖するのを抑えるというこれまでとは発想を逆転させたもので、比較的副作用が少ないのが特徴です。
腫瘍の細胞も寿命があり、やがて死にます。新しい血管の増殖が抑えて、腫瘍が死ぬのを待つ。この作戦でいこうと主治医は言いました。
私から恐る恐る、「仮に効かなかったらその後はどうなりますか」、と問うと主治医は天を仰ぎ、「打つ手なしです」と答えました。
抗がん剤は効果が薄いと言われていたので、これに賭けるしかありません。
プラセボ効果の威力は恐るべしとも言われています。服用する人が効くと思えば、偽薬であっても効果があるというものです。信じる者は救われる。こう思ってこの決して安価とは言えないヴォトリエントを1日2錠服用し始めました。
このとき測った腹囲は93センチ。(腫瘍ができる前は78センチ)薬の効果が出てくれば、腹囲も小さくなるだろうと期待しつつ病院を後にしました。