間違った打ち合わせ | 帯ひろ志の漫画放浪記Powered by Ameba

間違った打ち合わせ

デビューして間も無い頃のお話です。

前にも書きましたが、ネームを沢山書くと言う誓いを立て頑張ったつもりでした。
頻繁に編集部に通い、担当さんにネームをチェックしてもらいます。

チェックを受けている時、どちらかと言うと僕は無口でした。
言うなれば、まな板の上の鯉。
描いて来たネームを担当さんが面白いと言うかどうか、真剣勝負のつもりでしたから。

そして、ここは、こうした方が面白いんじゃ無いの? とか、
この人物の行動が分からないなぁ............とか言われると、ああ、未熟がゆえに、また
没を喰らってしまったぁと、反省し、気に入って貰えるように直す事ばかりを目標にネームを
描いていました。
しかし、中々ネームは通らず、日々苦しんでいました。

そんなある日、いつものように編集部に打ち合わせに行った時の事です。

僕の前に丁度僕のデビュー作と同じ本でデビューした同期の漫画家さんが
打ち合わせをしていました。
同じ担当さんですから、当然彼の打ち合わせを待つことになります。
そうすると、隣の席に居ましたから、打ち合わせのやり取りが聞こえてきます。

僕は、ビックリしました。
兎に角彼は、僕と違い物凄くしゃべるのです。
担当さんが一言喋ると、その2倍3倍は言い返すのです。
いや、言い返すはちょっと違うかな、説明を念入りにするのです。
つまり、そこはそう言う意味でそうしているのではなく、ここがこうだから、
こう言う意図でわざとこうしているのです。
こんな具合に。

僕は、人事ながらなんで出来上がったネームの言い訳をするのだろうと、
凄く不思議でした。

しかし.......................

少しして、僕が間違っていた事に気がつきました。
ネームは完成品では無かったのです。
そう、つまりこれから育てる漫画のタネ。
編集側がどんな漫画を求めているのかを聞き、自分の中の描きたいものと照合して
よりベストな漫画が出来上がるように調整をする事が打ち合わせだったのです。

僕はそこのところを履き違えて打ち合わせに臨んでいたのです。
彼の打ち合わせを間近に見なければ、きっとそのことに気付くのにもっと時間がかかったでしょう。
素直に感謝です。