初めてのアシスタント | 帯ひろ志の漫画放浪記Powered by Ameba

初めてのアシスタント

アニメの背景を仕事にしている時は、兎に角一日中仕事で休みが無い。
とてもじゃ無いけど、漫画に割く時間が無かった。
おまけに給料は固定になっちゃったしね(苦笑)

アルバイトニュースを買い、なにか漫画を描けそうな仕事はないかと探した。
すると、そこには漫画家アシスタント募集の記事が!
「月給10万~」
おおっ、漫画の仕事が覚えられて、しかも給料が出るのかぁ!

僕は早速電話をした。
面接をしてもらえる事になり、その先生の仕事場にお邪魔した。
物凄く緊張する。
だって、漫画を仕事にしている、本物のプロ漫画家に会えるのだから。

かなり舞い上がっていたと思う。
色々言われたが、条件は住み込みで働くと言うことを呑めば、雇ってくれそうだった
ので、即決で返事をした。
「はい。お願いします」

早々にアニメスタジオを辞めた僕は、先生の仕事場に転がり込んだ。
もちろん、アパートも解約して。
いま思うと、計画性も何にも無い、滅茶苦茶な行動だった。

漫画の現場は予想を遥かに上回り大変だった。
アニメ時代は5~6時間は睡眠時間が取れたが、アシスタントは3~4時間ほどの
睡眠時間。
おまけにまだ原稿を手伝える技量が無いので、ほとんど一日中つけペンの練習に明け暮れる。
これが単調で、物凄く眠くなる。
時たま廻ってくるベタやトーン貼りが天国のように楽しい作業になった。
食事はもちろん、新入りの僕が先輩の分も作った。
ただ、先輩は一人しかいなかったが(笑)

ペンが慣れてくるようになると、背景のバンクを描かされるようになった。
描き方を教えてくれるのは、先輩で、先生は出来上がりを見て、採用か不採用を決めるだけだった。
ここでのアシスタント作業は物凄く大変だったが、漫画素人の僕を一人前に近づけてくれたと、
今でも感謝している。

ただ、当時の若い僕はこの住み込みの内弟子の生活が本当に息が詰まりそうで、反発してしまったのも
事実である。
お使いにちょびっと時間オーバーしてみたり、そのついでに買い食いしてみたり。
買い食いはもちろん、自分のお金でである。
食費はきっちり管理されていたので、余計な予算は無かったのだ。

お金について、ついでなので書くが、確かアルバイトニュースには「月給10万~」とあった筈が、
受け取ったのは「5千円」だった。
一ヶ月の報酬である。
先生の話だと、先輩ぐらい上手くなれば、10万円だと言う。

教えているんだから、授業料が欲しいぐらいだとも言われたが、素直だった僕は、ちぇ、と思いながら
その5千円を受け取った。
確かに寝るところ、食べることに関しては保証されているので、お金は必要なかった。
多分、今の常識で考えると、あり得ないとは思うが(^_^;

しかし、いつも先生の管理下にあると言う状況がどうにも我慢できず、僅か3ヶ月勤めただけで
初めてのアシスタント生活をやめてしまった。
本当にこのころの事を思い出すと、自分の未熟さが恥ずかしい。
ご迷惑掛けました、先生。

この先生が誰なのか、先生と約束したので名前は明かせません............。