62作「文明開化」(30分 時代劇 ラブストーリー)

時は明治初期。ある遊郭に女がいる。女は貴高い顔立ちで凛とした面持ちで座っている。客が女を眺めながら言う。

「高貴なご息女が女郎に売られたと聞いていたが、今夜、噂のそのご息女を抱けるとは運が良い」

客は女に近づき抱こうとする。

女「無礼者。何をする」

客「何をするって決まっているだろ。高い金を払っているんだぞ」

女は逃げ回るが、ついには客に捕まり、抱かれようとしたその時、浪人が刀を持って飛び込んでくる。

浪人「姫様に何をする!」

浪人は客をつかみ投げ飛ばす。

店主が後ろからついてきて言う。

店主「お武家様、こんなことをされては困ります」

浪人「おやじ。わしがすべての夜を買うと言っていたではないか!」

店主「はい。でも今夜はおこしにならないものですから、以前から高値で買うと言うものがいまして…」

浪人「絶対に他の客を取らせるな。いいな」

店主「はあ、それでは今夜の御代を」

浪人「ほら」浪人は金を渡す。

店主「これでは足りませぬが…」

浪人「明日払う」

店主「それは困ります」

客「俺は高い金払っているんだぞ! 明治の世になって、武士も商人も関係ない。一番高く金を払ったものが勝ちだ」

浪人「うるさい! つべこべいうな」

浪人は刀を抜く。

店主と客は退く。

吉沢愛子は、吉沢藩の藩主の娘だったが、明治の世となり、藩は取り潰し。藩主は騙されて、すべての資産を失うどころか、大きな借金を背負うことに。あげくに借金のかたに娘を遊郭にとられてしまう。愛子ははかなくも遊女になってしまったのだが、1カ月の間、元吉沢藩の武士でいまでは浪人の小川総一郎が、すべての夜を買い上げ、男が愛子に指一本触れないよう守っていたのだった。だが総一郎の金もつき、最期の夜となってしまった。

愛子は総一郎に感謝の念を伝える。愛子と総一郎は楽しかった昔の思い出を語り、今の身の上に涙する。

 そこへ客と店主が警官を連れてきて、総一郎を追い出そうとするが、愛子と総一郎は警官を見てびっくりする。警官は吉沢藩と代々敵対してきた郷田藩藩主の息子・郷田俊太郎だった。吉沢家が破産した原因の一端に郷田家も関わっていたため、総一郎は俊太郎へ憎しみをあらわにする。愛子は敵同士の家にもかかわらず、俊太郎にひそかな想いをよせてきたため、自分のこんな姿を見られ恥ずかしく思う。

 俊太郎は愛子が遊女になっていたことに驚く。俊太郎は愛子を強奪することを決意し、刀を抜く。総一郎と俊太郎は対峙し、一触即発の事態に。愛子は二人の間に入って止める。

 俊太郎は店主と裏取引をする。店の都合の悪いことに目をつむってやる代わりに、愛子を身請けすることとなる。文句をいっていた客はたたき出される。

 俊太郎は、愛子を総一郎に託す。総一郎は、今は姫様のために借りを受けるが、必ず返すと、愛子の手を握って去る。

○登場人物

吉沢愛子(21歳) 吉沢藩の藩主の娘。明治の世となり藩は取り潰し、藩主は騙されて、大きな借金を背負うことに。あげくに借金のかたに娘を遊郭にとられて、愛子ははかなくも遊女になってしまう。

          ★衣装 遊女の姿    (   )

小川総一郎(25歳) 元吉沢藩の武士で今は浪人。かつての主君への忠誠心から愛子を守っていたつもりだったが、愛子にずっと想いをよせていたことに気づく。

          ★衣装 浪人姿     (   )

郷田俊太郎(28歳) 明治政府の警官。吉沢藩と代々敵対してきた郷田藩藩主の息子。

          ★衣装 明治政府警察官   (   )

遊郭の客  …(村上)

遊郭の店主 …(藤井)

吉沢倉之助(50歳) 吉沢藩藩主。(回想にて登場) …(木山)