北野武監督「アウトレイジ」を見てきました。(ネタバレ的なところがあります。見てない方は、ご注意ください)

全員、悪人。セコイ、ヤクザばかりです。

誰かに感情移入したり、カタルシスを得ることを赦しません。ただ、ただ、ろくでもない奴らがろくでもなく終わっていくだけの映画です。

暴力場面も確かにありますが、いつもの自分が殴られているような、身を切られるような、ヒリヒリとした描写ではありません。

誤解されてるようですが、武さんの映画で、はっきりした暴力描写とかはそれほど、多くはないと(私は)思うのですが、殴ったり、殴られたりの感覚が直接感じられるのです。その為に印象に残る。

今回は、派手な場面はあるものの、その辺のスイッチは、切って有るように思うのですが・・・。(相方は、慣れない人にはやはりキツイと申して、体調もよくなかったようですが、途中2回も席を立ちました)

私は、北野監督のファンです。ファンというのは、もう彼が傑作を撮ろうが、駄作を撮ろうがそれなりに愛してしまいます。彼のファンには、割合、どんなものでも本数を見るあまり理屈を言わないけどそれなりに意見をもってるエンタティメント好きに多いように思います。(ヤヤコシイですね。映画ファンではあるけど、映画通とは決していわない、みたいな)

そんなファンが世界中にいます。なぜ、世界中かといえば、彼の映画は意外にも映画を「シャシン」と呼ぶ昔の撮影所育ちの監督ような世界共通の映画の文法に則っているからです。常に枠を意識し、その枠を外さない。

そして、これも誤解されてるようですが、彼は映画を論じるタイプの方にも大変に好かれ、そのため芸術映画を撮るように思われていますが、たぶん、彼が芸術を撮ろうと思ったことは、一度もないはずです。

ただ、人のいうように、言われるように決して撮らない。まして、ファンの期待に応えたりは決してしない。そのわがままな立ち位置は、芸術家的です。ま、そのためにテレビで着ぐるみきて頑張っているワケです。

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今回、ひさびさにヤクザ映画を撮るとなれば、ファンならずとも色めき立ちます。しかし、まったく、過去の映画とは違ったものでした。

その代わり、役者はみんな嬉そうに演じています(役者で不満な方は一人もおりません。くつを脱ぐ殺し屋まで、それは見事なものです)。これもいままでとは違う。北野組の役者たちは、どんなに好演しようともそれは、キタノ映画の一部であり、決して役者自身が立つ訳ではない。だから素人でもいい。というかあまし、変な色がついていない方がいいのです。

ところが今回は、見事に芸達者な人たちに、「ろくでもない奴らをろくでもなく終わらせる」為だけに演じさせました。

自分自身のいままでの作品を拒否し、ともかく彼に心酔したいファンをこれでもかと拒否してるようです。作品的には、『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』『アキレスと亀』の個人的作品3部作とあまり変わっていないというか、コインの裏・表のような気がしました。自分を抹殺したい願望が強く感じられるのです。

まあ「BROTHER」をこんなふうに描きたかったのかも知れません。こういう才能のある方の特徴で、ちょっと失敗したかなあ、というテーマは繰り返し、成功するまでやるところがありますから・・・。

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とはいえ、椎名桔平さんは、色気のあるいい役でした。私はこの方の銀行員のような背広姿が好きなのですが、ヤクザ風でもきちっとネクタイ締めているのがいい。それに、ほんとうに嫌な卑小な調子よく無責任な上役親分の國村隼さんもうまかったです。今「仁義なき戦い」をやるなら金子の親分候補ですね。また、あのチョロを演じた中野英雄さんも傷のよく似合ういい面(ツラ)してました。

この群像劇を民主党や自民党の様子に武さんがパンフで例えてましたが、皮肉にも今の民主党内閣と生き残った方々とそっくり。菅直人さんは、3回落ちてるそうだが弁理士の資格を持ってるみたいだし、弁護士などの法律に詳しい方々が多いのは、かなりアメリカに似て来てるそうだが、生き残った方々もなんかそんな感じです。雑巾がけから始まる武闘派は、一掃ですね。

なんか、もっと言いたいことがあったような気がするのですが、どうも好きな方の映画は、饒舌な割にまとまりませんね。取りあえず、ここまでということで・・・。

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