日曜日。

 

病室で目覚めたとき「あぁ、やっぱり私は乳がんになって入院しているんだ。」と、じわじわと実感が大きくなってきた感じがしました。

 

7時半頃、看護師が回ってきます。

体温や血圧の測定をし、夜は眠れているか、お手洗いの回数などの体調の確認をされます。

 

8時からは朝食なので、また食堂に向かいます。

朝から食堂はにぎやかで、みんなで朝ドラを見ながら食事を取ります。

 

クリニックの食事は、イメージしていた病院の食事とは全然違って、食器も陶器やガラスのすてきな物ばかりでした。

メニューも一汁三菜でボリュームがあって、もちろん味もおいしかったです。

 

患者さんは圧倒的に主婦の方が多かったので、みなさん「作らなくても、こんなにおいしいご飯食べられて幸せ」「このご飯食べられなくなるなら退院したくないわ(笑)」「入院してから太ったみたい」などと笑いながらお話されていました。

 

朝食後、9時からは回診です。

院長先生と副院長先生、看護師が回ってきます。

 

私の手術は明日です。

 

今はまだ特に先生方と話をするような問題はない状態なので雑談を少しして回診は終わりました。

 

11時を過ぎるころ、夫と娘がやって来ました。

 

夫は家事全般を問題なくこなすことができるタイプです。

娘にも栄養バランスを考えた十分な食事を与え、清潔な格好をさせてくれています。

娘と離れて生活するにあたって、娘の寂しさや私を恋しがることなどの精神面はとても心配していましたが、生活について心配がないのはとても助かりました。

病室で三人で食事を取り、ゆっくり過ごしました。

 

また、この日は明日行われる手術の準備を始める日でもあります。

 

午後、看護師が2リットルの液体が入ったボトルを持ってきました。

 

「手術に備えて下剤を飲んで貰います。ゆっくりでいいのでこれ全部飲んでくださいね。」

 

普段たくさん水分を取る習慣がなかったので、少し驚きました。

 

「少し飲みにくいので冷やしてますから、体が冷えないようにゆっくりでいいですからね。」

 

ボトルの4分の1ほどは氷でした。

おそるおそる飲んでみるとアクエリアスのような味で、飲めないようなものではなかったのですが、量の多さに苦戦しながら2時間ほどかけて何とか飲み干しました。

 

夕方になり夫と娘は帰る時間になりました。

娘は少しぐずりましたが、想像していたほどではなかったので、こういった場合に備えて買っていたお気に入りのアニメのDVDを渡しました。

 

 

「おうちに帰って見ようね。」

 

そう言われると、完全に納得してはいないようでしたが、何とか車に乗って帰っていきました。

 

夜、手術前最後の入浴をしました。

 

明日はお風呂に入れないので、バスタブにお湯を張ってゆっくりと入りました。

 

浴室の鏡に上半身が映ります。

 

次に入浴するときには左の胸は無くなっているのでしょう。

 

涙は出ませんでした。

 

悲しいとも思いませんでした。

 

ずっと一緒に生きてきた左の胸。

 

たくさん母乳を出し、娘の命を育んでくれた胸。

 

変な言い方かもしれませんが、胸に感謝しました。

 

そして、この胸はもう役目を終えたのだと思いました。

 

このとき私は胸の中にいる悪い細胞に対して忌々しさを感じていて、その細胞が取り除かれることに清々とした気分でした。