「今から他の場所に転移がないか、すぐに調べるからね。」
座ったばかりでしたが、再び立ち上がり看護師に誘導されてCT検査の部屋に行きました。
CTを撮ったことはなかったので、検査室に入ってもどうしたらいいのかわかりませんでした。
「ここに横になってね。」
靴を脱いで細い台の上に横たわります。
その日は、綿麻のニットにデニムを履いていました。
「下着に金具ついてますか?」
下着はタンクトップタイプのブラトップを着けていました。
『・・・いえ。』
看護師がニットをめくります。
「ちょっと、ごめんね。お洋服脱がさしてもらいますよ。」
当時はよくわかりませんでしたが、下着の金具がCTに通せないように、デニムのボタンやファスナーもダメなのです。
デニムは膝のあたりまで下げられ下半身はショーツ一枚になりました。
ここまで私には怒濤の展開で、恥ずかしさも感じませんでした。
「体の中をよく見るためのお薬を点滴します。」
『はい・・・。』
何が何だかわからず、もうまな板の鯉という状態でした。
私の左側に立った看護師が左腕に点滴を施します。生理食塩水が落とされ始めました。
右側には検査技師らしい男性が立っていて、
「失礼します。体触りますよ。」
と、台の上で私の体を少しずつ動かし、CT撮影に備えて微調整しているようでした。
そのとき医師も検査室に入ってきました。
「じゃあ、撮りますからね。」
小さな機械音を立ててCTが動き始めました。
左右に看護師、検査技師、医師が立ったままで、彼らに見下ろされながら、何だか自分自身の体じゃないような、
すべて夢のような感覚でCTが上下に動くのを見つめていました。