娘と二人だけで新幹線に乗るのは初めてでした。
残暑は厳しいものの、朝晩は少し過ごしやすくなった頃でした。
遠方に住む大学時代の友人とその娘ちゃんと、母娘二組で京都で会うことになっていました。
卒業後も年に一度は会っていた友人とは、お互いの妊娠出産を経て約三年ぶりの再会でした。
二歳の娘と一歳の友人の娘ちゃん、幼い二人がいるので少しいいホテルでのんびりと過ごす予定で、京都駅で合流してから
タクシーでホテルに向かいました。
一瞬で気分は大学時代に戻ったけれど、話すことは恋愛の話ばかりだったのが育児の話ばかり。
そのことに時折、笑いながら楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
それぞれ娘とお風呂に入ろうという時間になりました。
ホテルのバスルームの大きな鏡の前で裸になったとき、自分の胸が目に入りました。
春に気づいたしこりはまだそこにあります。
いつも子どもと入るお風呂は慌ただしく、お風呂上がりにすぐには化粧水もつけられないほどですが、
着替えのたびに何となくそのしこりに触れるのが癖のようになっていました。
ホテルのムーディな照明の下で鏡を見たとき、左の胸にしわが寄っていることに気が付きました。
しこりの有る部分に向かって中央から少しひきつれているような感じだったのです。
そのころ、娘は寝入りばなにおっぱいを口に含みたがる程度で、ほとんど授乳は終わっているような状況だったので、
役割を終えた胸がしぼんでいるのだろうと思っていました。
翌朝、ホテルの玄関で友人母娘といつかの再会を約束して別れました。
秋晴れの京都で、別々のタクシーの窓から手を振り会う二組の母娘、その光景を今でもよく覚えています。