ひねもすのたりのたりかな

ひねもすのたりのたりかな

日常の診療を通して思ったことや感じたことを書いています

子供の痔や肛門トラブルのほとんどは外科的手術を必要とせず、保存的治療(薬物療法と生活指導)で対処可能です。根本的な原因は「便秘」や「硬い便」にあることが多いため、痔の治療と並行して排便コントロールを行うことが非常に重要です。

1. 子供の便秘に対する薬と治療

便秘治療の原則は、便を柔らかくして出しやすくすることです。

  • 第一選択薬(浸透圧性下剤):
    • モビコール®(ポリエチレングリコール)酸化マグネシウム、ラクツロース(モニラック®)などが推奨されます。
    • これらは習慣性や依存性のリスクがなく、便に適度な水分を含ませて柔らかくする薬です。特にモビコールは小児にも安全に投薬でき、電解質異常の不安が少ない利点があります。
  • 第二選択薬・頓用(刺激性下剤):
    • 浸透圧性下剤で効果が不十分な場合に、ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン®)やビサコジル坐剤(テレミンソフト®)などを使用します。
  • 便が詰まっている場合(糞便塞栓):
    • 直腸に硬い便が詰まっている場合、無理な摘便(指でかき出す処置)は子供に精神的トラウマを残す恐れがあるため避けるべきとされています。
    • 代わりに、家庭でビサコジル坐剤を連日(1日2回程度)使用し、徐々に便を柔らかくして排出させる方法が推奨されます。
  • 漢方薬:
    • 小建中湯(ショウケンチュウトウ): 子供が飲みやすい甘い味(膠飴を含む)で、腹痛を和らげたり、虚弱体質の改善に役立ちます。お腹が痛くなりやすい子供や緊張しやすい子供の便秘・下痢に有効です。
    • その他、大建中湯などが消化管運動を調整するために使われることがあります。

2. 子供の痔に対する薬と治療

子供に多いのは「裂肛(切れ痔)」と「血栓性外痔核(いぼ痔の一種)」です。

  • 裂肛(切れ痔):
    • 硬い便が通過することで肛門が切れる病気です。
    • 治療には、上記の便秘薬で便を柔らかく調整しつつ、強力ポステリザン軟膏®などの痔疾用軟膏・坐剤を使用します。
  • 血栓性外痔核:
    • トイレでの長時間のいきみなどが原因で、肛門の外側に血栓(血豆)ができて痛みます。
    • 鎮痛作用のあるボラザG軟膏®プロクトセディル軟膏®を塗布し、痛みが強い場合はアセトアミノフェンなどの鎮痛剤を内服します。
    • 通常は外科的処置(手術)は不要で、保存的治療で1〜2週間で治癒します。

3. 推奨されるケアと生活指導

薬だけでなく、適切な排便習慣を身につけるためのケアが不可欠です。

  • 便の硬さの確認:
    • 保護者や本人が「便秘ではない」と思っていても、実際は硬い便が原因で肛門が切れているケースが少なくありません。排便回数だけでなく、ブリストルスケール(便の形状分類)を用いて便の硬さを確認することが大切です。「頭に硬いボールが当たると怪我(切れたり腫れたり)するけど、柔らかいボールなら痛くない」のと同じように、便を硬くしないことが大切です。
  • 排便習慣の定着(乳幼児期):
    • 学童期までに、便秘による痛みを経験することなく、毎日気持ちよく排便できる習慣を身につけさせることが重要です。
  • 心理的ケア(学童期〜思春期):
    • 学校での排便に対する羞恥心や、ストレス、ダイエットなどが便秘の背景にある場合があります。市販の下剤乱用を防ぎ、正しい薬の使い方を指導することが求められます。
    • 試験や発表会などの緊張で腹部症状が出る場合は、漢方薬(四逆散や抑肝散など)が役立つこともあります。

「まずは痛くならずに気持ちよく便を出すこと」を最優先し、安全性の高い下剤で便性をコントロールしながら、必要に応じて痔の軟膏を使用することが基本となります。