19歳になる白猫が死んだ。
猫が死んだから妊活を始めたの? と聞かれやすいけれど、実際はそうではない。
4年間、白猫の重度の腎不全が発覚してから、子のいない我々夫婦は、とにかく頑張った。
私がワーカーホリックで、12年間遠方に通い続けた災害支援事業もあり、家を空けたりは、ざらだったので
夫婦のスタイルはそれまで、あまり会話しないルームメイトか、それ以下の関係でしかなかった。
それが、白猫に元気でいてもらうため、私は医療費を稼ぎ、夫は毎日皮下点滴と投薬治療と時々の強制給餌をすることで
夫婦が初めて、チームとなった。
家事は夫中心、大黒柱は私という、世間一般とは異なるスタイルが定着するにつれ、将来のことも考え始めた。
猫がいる今は良いとして、今後、夫婦関係、そのままで良いのだろうか。
私の周囲で、子ができない共稼ぎの夫婦の離婚率はとても、高かった。
それに、大体は、結婚したら子どもができるので、友人も、子がいる既婚者と、独身者の2パターンがほとんどだった。
長年不妊に悩みつつ、出産した友人のところに若いうちは遊びにも行っていたが
私が不妊なのを承知の上で、子ども良いよ、子ども産みなよ~子ども、と、
すごく嫌な感じでしつこく言ってくる元友人がちらほらいたので
自然と子持ち家庭自体が怖くなり、独身の友人と、数少ない既婚子なしの友人としか、絡まなくなった。
独身の友人達が楽しそうに生活しているのを見て、独身時代を思い出し、一人の方が楽だなとも、思い始めていた。
猫が死んだら離婚するか、と考えが固まってきた。
そして、白猫が急変し、逝ってしまう2日前。
瞳孔が開き、体温が下がり、反応がほぼなくなった白猫を抱き、号泣しながら、言葉が自然と出てきた。
「あなたがいるから離婚しなかったんじゃない。元々離婚できなかった。
あなたのせいにしてごめん」
言いながらも、何故そんな言葉が出てきたのか、自分ではその時、わからなかった。
そして、その2日後、私が仕事から帰る2時間前に、白猫は息を引き取った。
眠るような綺麗な姿だった。
泣きながら、白猫が最期に引き出してくれた、私の本音について考えた。
ずっと、夫に不満があった。
その不満は、いつもいつも、ループしていた。
そのループから抜け出した時、一つの答えにたどり着いた。
結婚してすぐ、私は、不妊治療をしたかった、と思っていた。
それができなかったのは、夫のせいだと、ずっと思い込んできた。恨んできた。
いつもそこで止まっていた。人生返せと思っていた。
けれど、本当は、仕事にしがみつき、今子どもができても困る! とも内心感じていた。
多分、不妊治療を、やろうと思えばできていたのだ。行動力もある方だし。
妊活しなかったのは、私の意志だった。
そうわかった瞬間、夫への恨みが、完全に消えた。
そして、眠るような白猫の遺体の横で、私が感じた経緯を夫に話した。
「だから、不妊治療を、してみたい。今更だけど、したいと思う」
そう言うと、夫は一言
「いいんじゃない?」
と答えた。
そして活動が始まった。