京都の美を探す旅 ⑥町家見学 無名舎(吉田家住宅) | 名古屋発グルメ旅行日記

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美味しいものを追求してちょっとだけ贅沢♡



こちらの住宅を見学させて頂くにあたっては、色々とありました(笑)。

笑ってしまうくらいのすごいレベル。


まずこちらを見学するには前日までに電話をする必要があります。

お休みは不定休となっているので、とにかくかけてみるしかない。

第一回目の電話。日曜の色々な時間にかけてみましたが留守。

月曜日、何度かかけてやっとつながる。

電話に出たのは声から察するにおじいちゃん。名前を伝えて見学希望時間を申し出ると、30分前に別のお客さんがいらっしゃるので相客となるがその方に合わせてもらえると助かる、と。

もちろん大丈夫です、と快諾し電話を切りましたが、確認されたのは「名前と時間と場所はわかりますか?」の質問のみ。


そして当日。10分ほど前に到着し、中へ入ると・・・・・・。

パンフレットを一枚渡され、そこから上がって右の部屋の椅子に座って待っていてください・・・・で、おじいちゃん消える(笑)。

部屋は暗いし、座っていろと言われたお部屋の椅子は年代もので美術品なんだか、ただ古いだけなのか見分けがつかず、座るに座れず棒立ち。


どうしよう?と思ったらおじいちゃんが再度フラっと現れて、一階と二階、好きなように見ていていいですよ。写真も撮ってください・・・・と言って消える(笑)。消える前に、お部屋を猫が横切ったので「あ!猫!」と声をあげると「通い猫ですな。どこから来てるのか」と言われる。が、後にこれは嘘と判明(笑)。


フラフラと撮影しながら相客の方を待っておりましたが、まぁ、蚊が凄い!

刺されまくること数カ所。待てど暮らせど相客さんが来ないので、どうしようかと思ったら、再度おじいちゃん登場で、二階は観られましたか?と。見てませんというと、突然襖あけて、ここからどうぞ、ってここに階段があったんかい!という忍者屋敷のような作りで(笑)。というか、暗くてわからない。

まずは二階に上がってみるでございます。






道路に面した方に行っても、中庭に面した方に行っても、とにかく暑い・・・・・。

これは真夏はたまらんだろうなぁと思いつつ。








目に留まる凄い物たち・・・・・・。


下に降りると、こちらのお部屋におじいちゃんがお抹茶とお菓子を用意してくれていました。

ここらへんでやっと相客さんから電話が入る。どうやら道がわからないよう。何とか到着されたかな?と思った瞬間、相客さんおじいちゃんにど叱られる(笑)。








おじいちゃんが用意されたとは思えない美しく美味しいお抹茶とお菓子にびっくり。






ここでやっと相客さんと我が夫婦そろったので、おじいちゃんの説明が始まりました。


中庭



奥庭




中庭の向こうにあるのが元はおじいちゃんのお母様のお部屋で、おじいちゃんはそのお部屋で生まれたそうです。

その向こう、奥庭に面しているのが、お父様のお部屋。

二階はどうでしたか?と聞かれたので、「暑かったです」と答えたら笑われて、真夏はひどいもんです。しかし、子供達は冷やさないように、との配慮で二階で生活させられていたんですよ、って。




お茶を頂いた広いお部屋は商売をしていたので、商いをする場所であったと。

そしてびっくりしたのが、建具の交換。格子の建具は夏用でお彼岸を過ぎたら障子に変えるのだそうです。祗園祭りの時は、襖を全てはずしてすだれのみとし、季節や行事に合わせて調度品、建具を全て取り替えるんですって。なんという重労働。「大変ですね。これ全部ですか!」と聞くと、「昔は店員さんがたくさんいたので良かったんですが、今は家内と私だけなのでゆっくりやってますが大変ですよ。しかし季節によってしつらえを変えるのは、けじめがつきますしキリっとして良いもんです」と。

「なるほど~」


そして置いてある家具もやっぱり凄いものでした。テーブルに敷かれたインド綿はとんでもない貴重品だったし、椅子はアンティーク。


どこからいらっしゃいました?と聞かれたので「名古屋からです」とお答えすると「前の家が名古屋の伊藤さんという人で商売をされておりましたが、再開発でホテルになってしまいました」と。

伊藤さん?と思ったんですが、松坂屋の創始者ではないか!!!


驚きの連続で次に案内されたのが、玄関~台所




町家というのは、表裏はっきりしていて、お客さんを応対するところ、裏方のお仕事をするところ、と分かれているのだそうだ。

ものすごく天井が高いけれど、陽が入りこちらは明るい。

そして、火事になると煙や炎が上に上がり近隣に燃え移るのを少しでも回避しようとする作りになっているのだそう。




「これが貼ってあると、火災保険に入らなくてもいいんですよ。いつも火の用心心がけているということで」、というのは本当かどうか不明(笑)。



このたくさんの箱は、昔商売をしていた時の御膳箱なんですって。

上の段の足がついているのが、当家の家族用。ただの箱が店子さん用。ちゃんとお膳が中に入っていました。さすがは京都と思って思わず「よく残ってますね」と口に出したら「うちはたまたま置く場所がありますから」と。



ここで教えてもらったのが、京都の家には収納場所がほとんどない、ということ。

確かに、お部屋には何にもなかった。少しばかりの調度品のみ。

実は、京町家というのは、収納場所がないので代わりに蔵があり、そこから季節ごとに出し入れしているんですって。

こちらの家は商売をしてるので、仕事用、プライベート用、二つ蔵があるそうです。


何がすごいって、ここでおじいちゃんは暮らしている、ということ。

井戸の上にはワイングラスがあったし、水しか出なさそうな流しにはおじいちゃんのカミソリと石鹸、肌着が干してあったし(笑)。

「どうやってこちらを知りました?」と聞かれたので「町家を改装した宿を予約したら、周辺の歴史的建物の紹介があって」と答えました。

するとおじいちゃん「立ち行かなくなると復活する。皮肉なもんです」と。


やっぱり維持管理するのは大変らしい。

そのコツをお伺いすると、「質素に生活すること。お金を使わないことです。今の人はお金の使い方が下手だ」というお答えでした。

なるほど、おじいちゃんの生活はまことに質素。




でね、御台所に入ったら先ほど見た猫がこの籠から出てきて(笑)。ちゃんとエサも置いてあって、子猫が見た限り最低3匹。

おじいちゃん「母さん、子供達はどこへ行った?」と猫に話しかけていたので、「なんだ、通い猫じゃなくて飼ってるんじゃ~~~ん」て(笑)。


そしてまたひとつ驚きが。


天井にかけてある巨大な絵をさして、これが私の職業ですって・・・・・・画家!!!


「孝」と書かれていたので、「孝さんというお名前なんですか?」とお聞きしたら孝次郎さんでした。5人兄弟の末っ子だけど、次男だから孝次郎と名付けられたとおっしゃってました。


こんな巨大なおうちが、「これが京都では一般的な家庭です。今では大きい家のように見えてしまいますが」って、これは一般的じゃないだろう!と突っ込みたくなりましたが(笑)。


ちょっと偏屈で頑固そうなおじいちゃんでおお!と思ったんですが、この後、お客さんがいらっしゃって「先生」と呼ばれているし、お客さん妙に緊張してるし。

このじいさん、只者ではないのかも?と思って調べたら、祗園祭山鉾連合会理事長さん!でした。

調べてから行かない自分もどうか?って感じですが(笑)。


一見怖いおじいちゃんと思いましたが、相客だった若いひとり旅のお嬢様が叱られたのもおじいちゃんがしっかりした方だから。

私達は相客さんに合わせて時間変更してるし、10分前から待ってるし、おじいちゃんはちゃんと電話予約の時に場所がわかるか確認してくれているので、それで場所がわからない、遅刻はないよな~って。


とにかく、勉強になる見学ができました。


京都は奥が深いな~って改めて学習致しました。

ありがとう、おじいちゃん。