資格さえ取得できれば簡単に仕事が決まると思い込んでいました。
退職届を提出した翌日から憧れの年休消化に入っていた私は、年休消化中に次の仕事が決まると何の根拠もなく思っていました。
逆にそう思っていたから慣れない勉強も頑張ることができました。
ところが現実はそう甘くありません。
ただ資格取得前は一度も応募すらさせてもらえなかったことを考えると、ハローワークの方がかけてくれた電話で「とりあえず求人票と応募書類を郵送して」と言われる機会はぐっと増えましたが、ほとんどの企業からは音沙汰がありません。
ハローワークで1度に出してくれる求人票は5通まで。
50通を郵送したところで、一度も面接に呼ばれることもなく年休が終わって完全に退職となりました。
応募書類の郵送費だけでも相当かかりますし、これからは収入が途絶えてしまいます。
すぐに見つかると甘い考えを持っていた私は、次の仕事の給料が入るまでの1ヶ月が乗り切れればいいと考えていて、貯蓄も20万円あるかないかの状況でした。
ハローワークで失業保険の手続きを勧められましたが、自己都合退職のため待機期間が3ヶ月もあります。
3ヶ月も貯蓄が持たないことは明らかでしたが、手続きだけでもしておけばこのまま連戦連敗が続いてもアルバイトをすれば何とかなるかもしれない。
そう考えた私は、自宅近くの小さなハローワークでは失業保険の手続きができないということで、少し離れた場所にある大きなハローワークへ行きました。
時代はまだアベノミクスが誕生する前。
大きなハローワークは求職者で溢れかえっていました。
自宅近くの出張所のようなところでは見なかった光景です。
お恥ずかしながら、そのときにようやく世間の就職難を肌身で感じました。
どこに行けばいいのかわからずウロウロしていると、聞き覚えのある声の女性から話しかけられました。
お久しぶり。
私に資格取得のアドバイスをくれた職員の方でした。
退職届を出した次の日に行ったときに、試験に合格したことを報告しようと思ったのですがおられませんでした。
それからも見かけなかったので退職されたか異動されたのだと思っていましたが、どうやら異動されていたようです。
もう顔をみた瞬間に、40代にもなって号泣してしまいました。
資格を取ったものの50社で連敗中だと伝えると、またアドバイスをくれました。
例えで出したように、ツナ缶工場の総務事務だった人がふぐ調理師の免許を取ったからといって、ふぐ調理師に応募しても書類選考が通らないのは経験もないから当たり前。
まずはどうしても譲れない条件を最小限に絞りなさい。
その上で、ふぐも出している料亭の仲居さんにでも応募してみなさい。
決して簡単な資格を取ったわけじゃないんだから、学歴不問にこだわらずに高卒以上になっている案件にもどんどん応募しなさい。
この方のアドバイスはいつも刺さります。
一通りアドバイスをして励ましてから、失業保険の手続きの窓口を教えてくれました。
手続きを済ませて受給までの流れについての説明を受け、さっそくアドバイスに従って求人を探す端末に向かいます。
今までは資格職に絞って月給制、正社員、学歴不問、月給16万円以上で検索をしていましたが、自分なりに考えて月給制と業界のみに条件を設定して検索をしたところ、資格職以外の求人は今までと比較にならないほどありました。
こういうことか・・・。
月給が安いものも多く職種も様々でしたが、自分でも何とかできそうかな?と思えた求人に応募を申し込むと、1件がハローワークからの電話に食いついてくれました。
ハローワークの方が電話で「高校中退の方で未経験ですが、資格をお持ちの40代女性です。」と伝えると、今からでも面接をしたいと言ってくれたのです。
月給14万円~、高卒以上、経験者優遇となっていて、資格職の募集ではありません。
月給14万円だと色々と引かれて手取りで11万円くらいかな?生活できるかな??
急に不安になりましたが、せっかく面接をしてくれると言っているのですから逃す訳にはいきません。
ちょうど大きなハローワークから電車1本で行ける場所でしたので、いつでも面接に行けるようにと日付を書いていない履歴書と職務経歴書を持ち歩いていた私はそのまま面接に向かいました。
面接に行くと、たまたま東京から出張で来ていた社長と関西地区の担当役員がおられました。
子どもが小学生になり、フルタイム勤務が難しくなって退職した事務員さんの後任を探しているとのこと。
すでに何人か面接はしていて、ある程度採用者は決めていたものの資格者の応募があったと聞いて帰らずに待っていてくれたそうです。
求人票の月給は新卒(高卒)の基本給で、実際には年齢を考慮した基本給になり諸手当が付くから、私の場合は22万円程度になると言われました。
ただし高校中退では前例がなく親会社からの了承が必要になる、と結果はその場で出ませんでした。
慢性的に資格者が不足していて、正直喉から手が出るほど欲しいことは事実だから親会社を説得するとも言ってくれました。
面接を終えて帰宅をする電車の中で、ニヤニヤを抑えることができませんでした。
喉から手が出るほどほしい、なんて人生で言われたことがなかったからです。
物心がついたときから家族に疎まれ、ブラック企業で身も心もボロボロになっていた私には初めての経験です。
私の年齢だと22万円!?
もう嬉しくて嬉しくて、その夜は興奮して寝付けませんでした。
面接をしてくれた企業からは1週間が経っても何の連絡もなく、やはりそううまくはいかないかと諦めて、ちょうどハローワークで新たな応募の申し込みをしているときに携帯電話が鳴りました。
面接をしてくれた企業からでした。
親会社から高卒扱いでの採用の許可がおりたので、資格職で採用しますという内容でした。
ハローワークの窓口の方も驚いて、貴重な瞬間に立ち会えてよかったと言って応募の電話をしたばかりの企業に断りの電話を入れてくれました。
20年以上もかけて、40代になってようやく長いトンネルから抜け出すことができたのです。
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こうして私は今もその企業で働いています。
業界の中では決して好条件ではありませんが、私のスペックからすると採用されただけでも奇跡のようです。
もちろん日々の業務の中で嫌になることもたくさんありますが、そんなときは過去の辛かった時代を振り返ってあの頃には戻らない!と気持ちをリセットしています。
今はこうしてある程度の安定を得ていますが、これから先も続くとは限りません。
ですが、今までの経験がこれから先に起こるかもしれないことにも多少は役立つかもしれません。
毒家族との絶縁は今も尾を引いています。
いつか見つかって罵倒されるのではないかと内心ではビクビクしています。
色々と困る場面もあり、今の会社でも入社時に保証人を求められました。
まだまだ自称天涯孤独で生きていくには厳しい世の中だと感じます。
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長々とお付き合いをいただいてありがとうございました。
私の経験が、少しでも今困難を感じている方々のお役に立てれば幸いです。