劇場版『SPEC ~天~』のDVD & Blu-rayが
リリースされました。

私もレンタル屋さんに足しげく通って
ようやく借りてこれました。ヽ(´-`)ノ
(↑買わないんかい


作品の内容的には劇場版の「天」よりも
スペシャルドラマの「翔」の方が
個人的には好きなのですが、
それは『ケイゾク』のときもそうだったので、
ストーリー的なものはひとまずおいておきます。


今日はドラマ『SPEC』の主人公 当麻と瀬文、
二人の関係について語りたいと思います。

『SPEC』はいわゆるラブストーリーとは
違うかもしれませんが、
私の中ではこれも一つの愛の形と受け止めています。


まだDVDとBlu-rayはリリースされたばかりですが、
もう劇場公開が終わってだいぶ経つのでネタバレします。

今回はスペシャルドラマ『SPEC ~翔~』、
および劇場版『SPEC ~天~』について
ネタバレしてしまうので、
これから『SPEC』を楽しまれる方はご注意を。m(_ _)m


あまりにドハマりしすぎて熱く語っているので、
人に見られるのは恥ずかしいのですが。




『SPEC』-01



瀬文焚流と当麻紗綾。

この二人の間柄を一言でいうと、
警視庁公安部公安第5課 未詳事件特別対策係
通称「未詳」と呼ばれる
同じ職場で働く「同僚」。

これが月9ドラマだったら
きっと二人は恋に落ちちゃったり
なんかしちゃったりするところですが、
『SPEC』はそういうドラマではありません。

でもこの二人は互いに深い絆で結ばれています。

劇場版では瀬文の元カノが登場し、
当麻は嫉妬にも似た感情をのぞかせますが、
それでも当麻と瀬文の間に「恋愛感情」
という表現は似合わないと思います。






スペックホルダーと呼ばれる特殊能力者。

もう超能力などという枠では収まりきらない
ワケのわからない超常の力を持つ
新しい人類との命がけの戦いの中で、
刑事魂をもって常に全力で職務にあたる二人は
次第に共感し、互いを尊敬し合うようになります。



でも二人は全く違うタイプの人間。



片や瀬文は特殊部隊SITあがりの軍人気質で、
人情に厚く、愚直なまでに真っ直ぐな男。

強靭な肉体と精神を持ってはいても、
スペックを持たない普通の人間です。



片や当麻はIQ201の天才にして変人。

その左手に宿ったスペックで
死んだスペックホルダーを召喚して、
その相手に能力を使わせることができるという
最強クラスのスペックホルダー。



互いに刑事として守りたいものは同じはずなのに、
考え方も、能力も、何もかもが違う二人は
事あるごとに衝突してばかり。






でも何気ないところで
相手を気遣っていたりします。

瀬文が心身共に追い詰められ
疲れきっている時には、

当麻が牛丼持って現れたり、

うどんを作ってあげたり。

およそ女子らしいところを持たない当麻が
時折見せる精一杯の優しさ。



自分の部下を殺され、
スペックホルダーへの復讐という
闇に堕ちてゆく瀬文にとって、

あくまで刑事として
スペックホルダーを逮捕しようとする
当麻は「光」でした。


また、最強のスペックに振り回され、
その能力によっていつか自分が
怪物になってしまうことを恐れ、
スペックの闇に堕ちてゆく当麻にとって、

スペックの存在を否定し、
スペックの力に頼ることなく
あくまで普通の人間の力だけで戦おうとする
瀬文は「光」でした。


互いに自分を孤独の闇から救ってくれる光。



当麻と瀬文は互いに相手を
求めているわけではありません。

自分を好きになってほしいとか、
つき合ってほしいとか、
結婚したいとか、
そういう思いはありません。

ただ、スペックホルダーたちとの死闘の中で
瀬文と当麻は互いに誰よりも相手のことを大切に思い、
相手に生きていてほしいと願っています。






でも瀬文は当麻に対し

「スペック込みのお前なんか、俺は認めん」

と思いをぶつけてしまいます。

理屈ではなく感情で。






当麻は戦いの最中、左手を切断されて
一時はスペックを失いましたが、
その時当麻は
逆に自分の人生は豊かになった
と感じます。

そして左手が治って
スペックを取り戻したことで、
あらためて当麻は気づきます。


自分が死者との絆に逃げ込んでいたことに。


自分を孤独から救ってくれたのは
未詳の仲間との絆であるということに。


自分がこれから生きていきたい人生は
未詳の仲間との人生だということに。


「その絆が壊れるくらいなら、何もいらない」


そう言って当麻は自らの能力でもって
左手の全ての感覚を殺し、
その手に宿ったスペックを封じてしまいます。


自分の能力を永遠に失ってでも
未詳の仲間との絆を守るために。


瀬文との絆を守るために。


それが自分の幸せだと信じているから。






死者とつながる能力を失い、
動かなくなった左手を見て
当麻は泣きます。

あのいつも強気だった当麻が
子供のように泣きじゃくります。

瀬文がその左手を握り締めても、
当麻にはもう瀬文の体温を
感じ取ることはできません。


そんな当麻に瀬文は告げます。


「お前の手は、あたたかいよ」


と。




この時私はテレビの前で号泣しながらも、
瀬文に対して反感を抱いていました。

なぜ当麻をその特異な能力ごと
受け入れてあげられないのかと。

瀬文にとってスペックは自分と違う異質なものでも、
当麻にとっては進化の過程で獲得した個性の一つ。

事故で死んだ両親や弟とつながりたい
と願う心が生んだ力です。

瀬文は刑事として
スペックを悪用する犯罪を憎むことはあっても、
当麻が身につけた力を憎む理由は無いはず。



と同時に、心のどこかで瀬文に共感していました。

スペックがある限り、
瀬文と当麻は旧人類と新人類。

住む世界が違います。

どんなにすぐそばにいたとしても。

でも左手を失い、能力を失うことでようやく
瀬文と当麻は同じ世界に生きることが叶いました。



もしかしたら瀬文は当麻に対し
上下関係ではなく対等の関係を
求めていたのかもしれません。

自分と同じ世界で生きてほしいと
願っていたのかもしれません。

私にはそれが
瀬文が当麻に対して求めた
「愛」ではなく、「欲」に見えました。






でもその後、
スペックホルダーたちとの死闘の末に
瀬文は自分なりの結論にたどり着きます。

人間にとって進歩や進化より大切なのは
人の「思い」であると。

そして当麻がこの先
スペックホルダーとして生きようが、
普通の人間として生きようが、
当麻は当麻。

全てを受け入れ、
当麻が抱える痛みも思いも
共に抱えて生きていく。

それが自分の「思い」であると。



もうこの時の私は映画館で
涙をこらえるのに必死でしたが、
瀬文はようやく当麻の全てを
受け入れてあげることができたんだな、
という思いでホッとしていました。



どうしようもなく不器用な二人の
強い思いと微妙な距離感。

これも一つの愛の形と言えるのかもしれませんね。