引き取った時、顔を見た途端なぜか
マジシャンのセロを思い出し
セロと名付けた保護犬が
私のところに来たのは
7月14日(金)夕方５時なのに
陽は高く暑い真夏の太陽が
照りつける日でした。
初対面で会ったセロは、
全力で喜び、全力で笑い、尻尾も
どこかに飛んでいきそうな勢い。
見た目は強面の表情だけど
とっても人懐こく、
何と逞しく精悍な顔つきでした。
身体の何処かに悪い場所が
あるなんて全く思えない
元気そのものと見受けたセロが
たった３ケ月後に永遠の別れが
待っているとは夢にも
思えませんでした。
頑丈な体型で誰よりも元気だと
思ったので、２日後に控えた
ポニーでの里親会に連れて行こうと
思い参加させることにしました。
性格のいいセロは人にも犬にも
フレンドリーで、他の保護犬とも
オスメスに関わらず、
仲良く出来て最後まで皆と
楽しく過ごしたように思います。
2日後の18日の朝、
散歩に出たセロは、血尿が出て
呼吸も荒かったので、
健康診断のため、佐々木動物病院を
受診し、血液検査の結果、
フィラリア症強だと知りました。
先生からエコーを見せられた時は
心臓の中で数しれないフィラリアが
無数動いていて寒気を覚えました。
血尿が出るということは、
心臓の入口で虫が詰まりかけて
血液が循環していないと知り驚きました。
散歩もほどほどにと言われたので
1分ほどの公園まで行っても
セロは近くの公園では物足りないのか
もう少し行くと引っ張って
歩き始めると心臓に負担がかかり
蹲ってしまい少し休まないと
歩けない状態になり、
時折は抱いて家まで戻らないと
ならない状態でした。
先生の見立てではセロは6才位で
元猟犬だったのではと言われ、
心当たりのある猟犬（鎖の首輪を
していた）を飼っている
飼い主らしき人に電話を入れて
もらいましたが、
その人たちの飼い犬では
ありませんでした。
以前、猟犬は使い捨てと
聞いたことがあり、
役立たずになったらポイ捨てなんて
許されないと怒りを覚えました。
人のためによく働き役立ってきたのに
予防もされず病気になったり、
年老いて使いものにならなくなったら
いとも簡単に捨てるとは
許せないと思いました。
今後、たとえ飼い主が名乗って
来てくれても絶対セロは渡すまい、
私が絶対セロを守ってやろうと
決心しました。
18日より、フィラリア薬に抗生剤を
1か月半に渡り飲み、1ケ月が過ぎて
下痢が始まったので下痢止め薬も
プラスされました。
8月始めよりフィラリア独特の腹水が
溜まりはじめ、麻酔の効かないセロは
注射器で腹水を抜けず、
利尿剤を服用し、尿から少しずつ
出すようになりました。
辛くてしんどい筈なのに
そんな姿は一切みせず、
はち切れんばかりの笑顔で
私を和ませてくれ、
私が出掛ける時や帰宅した時は
どんなに爆睡していても、
どんなに体が辛くても
起きてきて私を迎えてくれました。
こんないい子のセロを捨てた
元飼い主に怒りがこみ上げてくるのを
抑えきれない日々が多かったし、
その気がしれないと思いつつ、
だからこそセロと会えたご縁に
感謝しています。
最初に気付いてやれなかった
セロの体調は、その後の関わりを
通して次第にわかり始めましたが、
彼が1日で一番エネルギッシュに
なれるときは、やはり私と主人が
接する時だと知りました。
「迎え入れたからには何が何でも
責任を持って最期まで」
「誰にも絶対譲らない」
と2人で決めました。それが、
セロに対しての愛情表現でした。
9月4日になって全く元気がなくなり、
食欲もなくなって、
9月5日には流動食をスポイドで
飲ませました。
でも量は殆ど少なく、このままだと
ひょっとしたらもう長くはないと
覚悟しました。
6日になって流動食も殆ど食べず
でしたが、それでも水だけは
覚束ない足取りながらも
自力で頑張って飲んでいました。
今夜は二人でセロの様子を見ながら
過ごそう、寂しくないように
眠い目をこすりながら、
夜通しセロの傍に付いてやりました。
朝まで何とか頑張ったセロでしたが
9月7日 朝8時18分、
か細い声でひと鳴きし、
苦しむことなく眠るように逝りました。
早過ぎた犬生の終幕を懸命に
「生きていた」
最期の時間まで、私達に気遣いさ
せることなく生き抜き、
生きることとは。のヒントを
私はセロからもらった気がします。
たった2ヶ月余りの間だったけれど
長い年月暮らしたかのように
セロが私の気持ちに「添う」瞬間を
何度か経験をしたかのように
思えてなりません。
セロに出会えて本当に幸せだった。
ずっと忘れられません。
【著者:オアシスの会 代表 加藤 弘子】
