久しぶりに映画を観ました。

ファーゴでお馴染みのフランシス・マクドーマンドを主演、クロエ・ジャオを監督として、リーマンショック後で仕事を失って日雇い労働者としてアメリカを車中泊で放浪する労働者たちの映画です。

 

第77回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞に位置付けられる金獅子賞に輝いた作品です。

監督のクロエ・ジャオは中国北京出身の女性で、非白人かつ女性が賞を獲得したことで当時話題になったそうです。

 

映画は派手な内容や演出はなく、淡々と進みます。原作がドキュメンタリーだったこともあり、ドキュメンタリー映画チックな構成です。

 

タイトルでも使われている「ノマド」(Nomad)は、辞書的には「遊牧民」という意味ですが、本作では「車上生活者」を指します。

車中泊をして各地を放浪する生き方は一見自由に見えますが、リーマンショックで被害を被ったのは資本家ではなく、こうした貧困層や労働者層だったことを嫌でも浮彫にします。

ただ、作中の登場人物はいずれも自由を謳歌しており、時にはダンスをし、時には歌を歌い、日々を楽しそうに過ごす尊厳のある者として描かれています。

作中で、妹の自宅を訪れたファーンが、不動産営業職の親族に「他人に多額の借金を背負わせて金儲けをすることに、人として恥ずかしいと思わないのか」というシーンがとても印象的で、これは労働者階級として行き過ぎた資本主義社会に警鐘を鳴らすという意味に捉えることもできそうです。

やはり、労働者階級を尊厳のある者として描いているというのは非常に重要だと思います。

「ノマドこそ、西部開拓者の伝統を受け継ぐ人々だ」と称えた理由が、そこにあります。

 

あと、映像がとにかく綺麗。

ネバダ州→アリゾナ州→サウスダコタ州とどんどん場所は変わりますが、どこ後も自然がとても美しく、特に「バッドランズ国立公園」の岩景色を背景に車で走る映像は圧巻の一言でした。

 

作中では、シェイクスピアの詩が印象的に使用されていますが、私自身はシェイクスピアに造詣は深くないので、ここは消化不良です。

シェイクスピア研究家の北村紗衣氏の以下のブログなどがこの点をわかりやすく解説していましたので摘示しておきます。

 

アカデミー賞最有力! 映画『ノマドランド』──放浪する主人公を支える詩の力 | GQ JAPAN

 

時代を越えたシェイクスピア ~映画『ノマドランド』に見る、悲しめる者にこそ宿る詩心~ - コトバの小径 (hatenablog.com)