ヘルマン・ヘッセ「自伝素描」 人は、教師や牧師や医者や職人や商人や郵便局員に成ることが出来た。 この世のあらゆる職業には道が通じており、 前提が有り、学校が有り、初心者の為の教授が在った。 ただ詩人にだけは、それが存在しなかった。 「詩人であること」、つまり詩人として成功し有名であることは許されており、 名誉とされていた。 ところが、「詩人に成ること」、それは不可能で有った。 詩人に成ろうと欲することは、もの笑いであり、恥じであった。