善き人間としての安住の地を得たい。そして 全ての人間を愛する思想を伝えたい。ー そう望むことが今大切なのではありません。


社会過程の中に生きて、悪しき人類とともに 悪しきその一員となることができるように 自分の才能を発揮することができる、そのことが大切なのです。


悪しき存在であることが いいことだからではなく、克服されるべき社会秩序が 私たち一人ひとりに そのような生き方を強いているから、そのことが大切なのです。


ー 自分はどれほど善良な存在であることか、そんな幻想を抱いて生きようとしたり、指をしゃぶって綺麗にして、ー 他の人間などより ずっと自分のほうが清らかである、そう考えたりするのではなく、社会秩序の中にあって、幻想に耽らず 醒めていることが 今必要なのです。


なぜなら、幻想に耽ることが少なければ少ないほど 社会有機体の健全化のために働くことができるでしょうし、今日の人々を深く捉えて離さない睡眠状態から 目覚めることもできるでしょうから。


それには、こんにち公認されている科学に内在する、弱くて投げやりで 麻痺状態になった思想に巻き込まれず、よりエネルギーにあふれ、より迫力のある 霊学の思想を身につけることが 大きな助けになってくれるはずです。


ルドルフ シュタイナー『意識問題としての社会問題』