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Oa's Report

(1)2013年4月「東北ひとめぐり」ツアー
(2)2012年2月「兄弟仁義Special「★シュウ・メイ・シキ★」@ TAKE OFF 7(東京渋谷)」ライブオフ by Oa

 最初にお断りしておきます。この記事には途中、失礼な表現があるかと思います。けれど、「聞いた側の本音」を書かないと、伝わらないものがあると思い、あえて表現を丸めていません。
 怒るなら読むな、とかいう、甘えたことは書きません。ご批判があればコメント欄にどうぞ。けれど、(お怒りになるのであれば)ナナメ読みでも結構ですので、「最後まで」読んでください。

安藤社長の話

 磯屋水産の安藤社長は、帰って検索してみたら、「JuNk stAge」というサイトに記事があり、「日テレ」オンデマンドで声も聞ける。
 「復幸マルシェ」の記事でも触れたように、気仙沼は現在、地震による地盤沈下が激しい。安藤社長は、国の対応の遅れにしびれを切らし、私費で自分の土地に土盛りをした。
 現在、行政が地盤沈下対策のため、港前にあった駐車ビルなどを取り壊した状態。安藤社長は、その代替として私費で土盛りした土地を駐車場として提供している。その場所に立って、話をうかがった。
 とにかく、行動も、話ぶりも、情熱的で、力強い方、なのだが。口から出た言葉に、心底驚いた。
「国はいま、気仙沼に高い防潮堤を計画している、所によっては9.8mにもなる」
「防潮堤ができれば、海が見えなくなる。そんな所に、誰が観光に来るだろうか? それに地震の時だって、海の様子が判らないのは、かえって危険だ」
「そんな高い防潮堤は、要らない」
 防潮堤は、要らない??
 頭が疑問符でいっぱいになった。あんなにも大きな被害を受けて、「防ぎたい」と考えるのが自然な人情ではないのだろうか? この方は、強靭な精神を持っているように思えるけれど。すべての人がそこまでタフではない。「要らない」というのは、この町のコンセンサスなのだろうか?
「防潮堤ができれば、生態系も崩れてしまう。漁業への影響の心配もある」
 そうだとしたら、環境省はなにをやっている?
「可動式の浮上式防波堤という案もあったが、いざというときにきちんと動くか判らないということで、否定されてしまった」
「防潮堤を海辺ではなく、もう少し内陸寄りに作る案もあるが、防潮堤より海側には人が集まる施設を作ってはいけないという。フェリー乗り場はどうする、魚市場はどうする、非現実的だ」
 それは運営の問題では? どこに建てるかという問題は、そのあとの影響が長期にわたる。市外のどの部分をどう使うかは、もっと短い期間で変更可能だ。
「防潮堤の建設と、都市計画がセットになっているために、防潮堤には反対の人も都市計画を進めたいがために賛成にまわっている」
 それは推論なのか? 根拠となるデータがあるのか。
 判らないことが多すぎて、脳髄がわんわん言っている感じ。質問したくても、まとまらない。もし質問しはじめたら、おそろしく時間がかかる予感もあった。
 旅行後半、この件で頭がいっぱいになってしまい、同行の妹とも、その夜同室になった方とも、この話をしたがってご迷惑をかけたと思う。ここでお詫びを申し上げたい。

町としての意見

 帰宅して。ネットでこの問題を調べ始めた。
 まず、アウトラインを掴むつもりで「気仙沼 防潮堤」だけをキーワードに、検索をしたのだが。気仙沼の防潮堤反対は、あちこちで報じられていた。安藤社長の個人意見ではない、というのは納得できた。
特集ワイド:巨大防潮堤に海が奪われる 宮城・気仙沼で住民が計画見直し要請(毎日jp)
気仙沼市を揺るがす巨大海岸堤防計画、被災地住民を翻弄(東洋経済)
堤防整備、訴え正反対・気仙沼市「景観損なう、低くして」/陸前高田市「防災に懸念、より高く」
千年に1度の大津波に耐える堤防を造っても、数十年後に生業が立ち行かなくなれば元も子もない。陸前高田市が高い堤防を求めるのは、「高田松原」が壊滅したことや高台が少ない土地柄も影響しているのだろう。気仙沼市は造成可能な高台がある程度確保できるため、堤防だけに頼らない対策も志向できる。[首藤伸夫・東北大名誉教授(津波工学)]
 上に書いたとおり、「安藤社長の個人意見」ではないのだが。賛成・反対の比率を明確に書いた記事は意外に少ない。私が探すことができたのは、これ。
住民合意 意見分かれる「防潮堤」(読売)
 建設賛成が3割、反対も3割で、4割が立場を決めかねている。
 私は別に統計の専門家ではないが、これではなにも解らないことくらいは解る。気仙沼のなかでもどこの地区か。住居は、職場は、海辺か高台か。職業は、漁業関連か、観光関連か、それ以外か。それくらいは層別して、「誰が」「なぜ」賛成し反対しているかをデータとして探らなければ、どちらがどちらを説得するのも難しいのではあるまいか。

 個人的に「力作」だと思ったのは、これ。皮膚感覚という「言葉」では表しようがないものを、なんとか「言葉」で説明しようとしたレポート。
人はなぜ命を守る「防潮堤」に反対するのか(東北学院大学生のレポート、2013年1月)

気仙沼防潮堤と、環境省

 生態系に問題があるなら、環境省は何を言っているのだろう?と思ったのだが、意外なことに「気仙沼 防潮堤 環境省」で検索しても、あまりそれらしいヒットはない。唯一見つけたのが「森は海の恋人」の関連ブログ。
NPO法人「森は海の恋人」事務局日誌「ハタボー日記65 防潮堤について」
一方、環境省では「三陸復興国立公園」なるものを考えているそうな。
国交省に比べると、予算規模からしても環境省の影響力は非常に弱く、環境か?堤防か?と問われると、国は堤防を選ぶだろう。
 別の検索アプローチとして、環境省のサイトを限定検索「気仙沼 防潮堤 site:http://www.env.go.jp/」そして見つけたのが、これ
大橋(名取市):名取市が示した復興計画では、国土交省が海岸地区に高さ7mに及ぶコンクリート製の防潮堤を整備することが、既成の事実として謳われている。防潮堤が景観に及ぼす影響を考慮すると、今回のような国立公園づくりの構想とは相容れないのではないか。国土交通省や防災林づくりで関係する林野庁等の他省庁とは今後、どのように話し合うのか。(略)
環境省佐々木:防潮堤は人々の命に関わるものであるため、国立公園づくりとどこまで調整できるかは難しいところである。場所によっては整備する位置の再検討をお願いすることも考えている。申し訳ないが、人の命が関わる防潮堤と、レクリエーションとして捉えられてしまう自然公園を比べた場合には苦しい立場となる。
 ……住民の反対がある気仙沼からの質問ではないとはいえ。この認識では、環境省に頼る気になれないのも仕方ない。
 なお、防潮堤事業には、環境アセスメントの義務がないらしい。
参考:防潮堤を勉強する会 分かった事と参考になる考え方

復興が人質

私が疑問をもった「防潮堤には反対の人も都市計画を進めたいがために賛成にまわっている」についても、安藤社長の個人意見ではなく、報道がなされている。
特集ワイド:東日本大震災 巨大防潮堤、被災地に続々計画 本音は「反対」だが…復興が「人質」に 口閉ざす住民(毎日jp)
 個人のブログにも言及がある。
ぺきぶろ
道路の位置と高さが決まらないと(もしかしたら防潮堤とかさ上げとセットで完成しないと)、建物が建てられない。
美容・医療ジャーナリスト海野由利子公式ブログ
「防潮堤問題が決まらないと、復興計画が決まらない」っていうのも
なんだかね、ずるい気がするんですけどね。

解らないところが多すぎる

 ここまで検索をしまくって、安藤社長のお話のなかで、私が疑問に思った点のうち、いくつかは裏が取れた。
 防潮堤のセットバックと利用計画の部分など、解らないことも残るのだが。
 さらに解らないのが、「では、なぜ国は、それでもなお防潮堤建設に拘泥するのか」という点だ。
防潮堤連続インタビュー
 このインタビュー記事はまだ全部読みきれていないのだが。たまたま先に読んだ(5)にこんな一節がある。
岩手は、浸水シミュレーションが何パターンか示されていて、地域が選択できると聞きました。一方で宮城では、シミュレーションの結果も見る事ができなくて、選択の余地もありません。そこに違和感を感じますね。
 行政側の決定根拠が、発信できていない面は、ないのか。もし根拠があれば、だが。
 もし、根拠がないのなら。なぜ、国は、住民の反対を押し切ってまで、計画を進めようとしているのだろうか。

 これでマンガかなにかなら、悪代官のような行政と土建かなにかの利権の結びつきが出てきて、自然を愛し住民のコンセンサスを大切にするほうが勝つのかもしれないが。どうも、この件の場合、行政側の悪意らしきものは見えてこない。
 根本にあるのは、何なのだろう? 行政のうちの推進派の「感情」ではないのか、とも、思う。たとえば、宮城県村井知事は、大震災当日、地震に遭遇し、直後から陣頭指揮に立っていた、という。あの地に在って、地震も体感し、現場も見た「行政の、中の人たち」の。その恐怖の「感情」に突き動かされての推進だとしたら。悪意がない分、つき崩すのは難しい。
「生態系が崩れたら、漁業はどうなる」
「海の見えない場所に観光客はくるのか」
 疑問符を行政にぶつけたところで、データがなければ説得はできないだろう。環境アセス不要というのはぞっとするが、既存のデータで何か防潮堤の影響を推測する理論構築はできないものだろうか? 震災前、観光客が何を求めて気仙沼に訪れたのか、といったデータはないのか?
 また、逆に。なぜ他の地域の住民は防潮堤に賛成し、気仙沼は反対が多いのか、そこも分からない。途中にも書いたけれど、住民意見についてのきちんと層別したデータ、統計の専門家がきちんと監修したデータがあれば、なにか見えて来そうな気がする。
 生態系の乱れ、観光への影響は、他の地域にもあるはずなのに。
「なぜ、気仙沼だけが」
 それが、今回かなり多くのサイトや文章を読んでも、伝わってこない。
 たぶん、私のもった疑問符が、行政が「気仙沼を特別扱いできない」という対応と、重なってくるのではないかと思う。


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△海から800m内陸まで流された第18共徳丸。津波の力は強大だ。

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△とはいえ。この美しい地を台無しにしていいのか? 本当に難しい。
(写真は気仙沼大島、田中浜)