医療法人オーク会 不妊ブログ|体外受精、卵子凍結など生殖補助医療を専門に診療しています
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妊婦の新型コロナウイルス感染における経過と予後について

医師の苅田です。

妊婦のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染における経過と予後についての論文がlancetに掲載されていたので紹介します。(Feb 12、2020)

2020年1月20日から31日にCOVID-19に感染した妊婦9名ついて検討しています。
すべて帝王切開にて分娩となっています。年齢は26-40歳です。糖尿病や高血圧、心臓疾患などの基礎疾患はありません。

妊娠27週から高血圧を認める患者が1名、妊娠31週から子癇前症を認めている患者が1名いましたが、妊娠経過は安定していたようです。その他1名が入院時にインフルエンザに感染していることが判明していました。39度を超える高熱はおらず、36.5から38.8度の範囲内での変動であったようです。4名が咳症状、3名が筋肉痛、2名が咽頭痛、2名が倦怠感、1名が胃腸炎症状を認めていました。しかし、だれも重症肺炎症状はなく、人工呼吸器使用や死に至る患者はいませんでした。すべての患者が酸素吸入と抗生剤投与をおこない、6名に対しては抗ウイルス薬を投与していました。

検査データでは、9名中5名がリンパ球減少、6名がC反応性タンパク(炎症時に上昇するタンパク)上昇がみられました。7名でWBC(白血球)は正常で低下はみられませんでした。胸部CTでは8名に斑状のすりガラス陰影が認められました。胎児および新生児死亡はなく、羊水、臍帯血、新生児の咽頭、母乳からはウイルスは検出されませんでした。

妊娠することで免疫が抑制され、横隔膜の挙上、酸素消費の増加、気管粘膜の浮腫などの生理的な変化によって呼吸器に細菌感染が起こりやすかったり、肺炎が重症化しやすい傾向になります。

9名という少数での検討なので、言い切れませんが、妊娠後期に感染した妊婦さんに関しては重症化がみられず、胎児にも影響がない可能性が示唆されました。妊娠初期や中期での感染での予後はわかりません。今後の報告を待ちたいです。

体外受精を受けると卵巣がんにかかるリスクが増えるか

医師の田口早桐です。

Assisted reproductive technology treatment and risk of ovarian cancer
-a nation wide population-based cohort studyから

ARTの際に排卵誘発によって卵巣がんになりやすくなるのではないかと心配される方も多く、ときどき質問を受けます。もちろん、注射などで不要な刺激はしたくないのですが、妊娠率を確保するためにはある程度しかたのないことではあります。

ここでご紹介する論文は、昨年Human Reproduction誌で発表された論文です。1994年から2015年までのデンマークでのデータの集計で、体外受精を受けた女性と受けていない女性を平均9~10年程度追跡調査した結果です。どちらのグループも6万人前後が対象ですので、大掛かりな調査ですね。

結論としては、体外受精を受けた女性のほうが、リスクは上がる。・・・これだけ聞くと怖くなるかも知れませんが、よく見てみると、それほど心配はないようです。

まず、体外受精を受けると1.2倍、卵巣がんにかかるリスクが増える。しかし、体外受精を受けることになった原因が、男性因子やPCO(多嚢胞性卵巣) 、もしくは原因不明の場合など、子宮内膜症以外の原因の場合は、まったくリスクは増えません。子宮内膜症の場合のみ増えるようで、3.78倍、3~4倍に増えるようです。卵巣がんにかかるリスク自体が0.06%と低いものであったとしても、やや注意が必要でしょう。

ただし、単純に「子宮内膜症だと体外受精をすると卵巣がんになりやすくなる」と、短絡的には言えません。もともと卵巣にできる子宮内膜症の中に癌化するケースがあること、不妊治療をしているために頻繁に超音波検査をするからこそ、見つけた可能性があること(超音波を頻繁にしていなければスルーしていたかも。それも怖いですが)。そして何よりも、ARTによる卵巣がんのリスクは、ART治療を開始して2年目がピークで、あとは減少していくという結果でした。

卵巣がんの最大の怖さは、発見が遅れる、ということです。体外受精治療や不妊治療をしている間は頻繁に超音波検査をしますし、サイズの増大があるなど、変化があると、すぐに造影MRIを撮るなど精密検査を行いますし、卵巣がん自体の罹患率がそもそも高くないですから、過度に心配する必要はないかと思います。著者も、データから、排卵誘発そのものが内膜症のがん化リスクを高めるわけではないと考えています。逆に、内膜症の場合は、そもそもリスクがあるので、超音波検査を頻繁に受けるよい機会になると捉えてもいいかもしれません。



甲状腺機能と卵巣刺激の関係

医師の苅田です。
甲状腺機能と卵巣刺激の関係についての論文です。
(Fertil Steril 2012;97:585)

前方視的検討です。
57人の体外受精患者で、高刺激法(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)で行い、①刺激前②刺激後4-7日目③HCG投与時④HCG投与1週間後⑤妊娠判定時⑥妊娠判定2週間後で、TSH値、FT4、E2、TBGの変化についてまとめています。

TSH値は、刺激とともに上昇し④でピークを迎えその後刺激前の値に戻っていきます。機能が正常の人では変動は少ないですが、甲状腺機能低下症の人は卵巣刺激と共に徐々に上昇し④で正常の人と比較し有意に上昇しています。FT4も④で一番高くなります。

特に、甲状腺機能低下症の診断でチラージン内服している患者さんでは、④で正常の方よりもTSH値が有意に高くなりました。また、刺激前はTSH≦2.5mIU/mlであった患者さんについて、その44%が卵巣刺激中~刺激後に2.5以上に上昇していました。

(解説)
甲状腺機能低下症、特に潜在性甲状腺機能低下症を疑う患者さんに出会う頻度は意外と高いです。潜在性甲状腺機能低下症は一般に5%前後存在すると報告されています。まだ定まった見解はないのですが、TSH2.5mIU/ml以上、甲状腺ホルモンは正常の状態をいいます。甲状腺ホルモンが正常でも、TPO抗体や抗サイログロブリン抗体陽性があれば橋本病と診断されます。

生殖補助医療を行うにあたって甲状腺機能と不育症(流産)の関係が一番重要ですが、甲状腺ホルモンは卵胞発育、黄体機能維持にとっても必要と言われています。

なぜなら、卵胞の成長や黄体、受精卵すべてに甲状腺ホルモンレセプターが存在するからです。甲状腺ホルモンが正常にあればまず問題ないですが(潜在性甲状腺機能低下症)、甲状腺ホルモンの低下をきたせば(原発性、中枢性甲状腺機能低下症)、卵胞発育の低下、排卵障害、黄体機能不全になります。

ただ、どの程度ないといけないのかということはわかっていませんが、TSH値が高いほど甲状腺ホルモンが低下してしまい、卵胞発育しにくく、排卵しにくくなるので、甲状腺ホルモンが正常範囲内に存在すれば問題ないのではと思われます。
よって、橋本病であっても、甲状腺ホルモンが正常にあれば、体外受精における刺激周期では卵胞発育や排卵に関しては問題ないと考えられます。また甲状腺機能低下症と受精率や着床率、妊娠率についての報告もありますが、証明されたものではありません。

今回のデータは体外受精において、卵巣刺激を行うと、どのように甲状腺機能が変化していくかについて調べたものです。海外では、卵巣刺激-採卵-新鮮胚移植が多いので、卵巣刺激によるTSH値上昇を考え、TSH値を慎重にみながらチラージンによるコントロールが必要ということです。日本では高刺激周期ではほぼ全胚凍結していますので、甲状腺機能を確認するとすれば移植前に確認されるのがいいのではないでしょうか。

1周期1回の採卵と1周期2回の採卵

医師の田口早桐です。

Luteal phase after conventional stimulation in the same ovarian cycle might improve the management of poor responder patients fulfilling the Bologna criteria: a case series

Fertility & Sterility 2020年1月号からの論文紹介です。

卵巣機能が低下して刺激への反応が悪くなっている例では、連日注射をして採卵するよりも、クロミッドなどの低刺激で採卵を行うことが多いと思います。

この論文では、普通に大目の量、450単位で連日刺激をして採卵、採卵後数日後から、再度刺激を開始して育ってきたものを採卵、という、「一粒で2度美味しい」(ご存知でない世代の方も多いと思いますが、グリコアーモンドキャラメルのコピーです)採卵方法を試しています。

黄体期から排卵誘発を始めるのは、今では当たり前の方法で、ランダムスタートと呼んでいます。今回の論文では、①同じ周期での1回目の採卵を2回目の採卵の比較(採卵数、染色体正常卵の数、生産率)②採卵と同周期でなく、1~2ヶ月あけてから2回目の採卵をした場合(これが通常なされている形と思います)との比較(1個以上染色体正常胚が確保できた割合、少なくとも一人生まれた割合)を行っています。

染色体を調べているので、着床前スクリーニングをしているわけですから、胚は全て凍結して、別周期で移植しています。

100人について1周期に2回採卵して比較した結果、発育卵胞数も、染色体正常卵の数も2回目の採卵のほうが多く、特に、生産率(生まれた数)は、1回目の採卵から得られた卵では7%、2回目の採卵から得られた卵では15%だったということです。

通常通り1~2ヶ月あけてから2回目の採卵をしたケースと、2回目採卵同士で比べても、生産率は同周期15%と別周期8%で、同周期に採卵した方がよかったという結果でした。

つまり、①採卵後に間髪いれずに刺激しても、むしろ多くの、そして良い卵子が取れる⇒とくに卵巣を休ませなくてもよい、②AMHが低くても刺激をしてよい、ということです。

当院でも、年齢や、医学的理由など採卵を急ぐ例では、ランダムスタートや連続刺激周期を行っており、その数はどんどん増えています。と同時に、とくに採卵数が減るわけでも、質が悪くなるわけでもないことを経験しています。実際、いつも1~2個しか取れない人が、同周期採卵をしたら、13個採卵できて驚いたこともあります。ただし、これからさらに検討を重ねていく必要がありますね。

慢性子宮内膜炎

医師の田口早桐です。

慢性子宮内膜炎についての論文を紹介します。
Fertility&Sterility 2019年 12月号から。
タイトルはEndometrial CD138 count appears to be a negative prognostic indicator for patients who have experienced previous embryo transfer failure。

CD138陽性細胞とは、形質細胞を意味します。形質細胞は、何か菌などが入った時に、それを攻撃する抗体を産生する細胞です。

ミサイル発射準備をしている感じでしょうか。子宮内膜にあると、妊娠率、着床率が下がると言われています。しかし、どのくらいあれば妊娠率が下がるのか、どのくらいあれば「慢性子宮内膜炎」と診断するのかは曖昧です。子宮内膜標本の読み方も、施設により、また観察する病理医により、ばらつきがあるし、病理からの報告に基づいてどのように判断するかも曖昧です。

当院では、様々な論文からの考察と、病理医と相談の結果、20視野をランダムに観察して、6個以上観察されたら、治療が望ましい慢性子宮内膜炎と判断しています。

今回の論文では、観察の方法を2通り試したり観察する人を変えて結果が一致するかを見たりと工夫した上で、結論として、142人の子宮内膜を検査した結果、CD138陽性細胞があると妊娠率着床率共に下がるという事、数が多ければより成功率が低くなる、という結論を導き出しています。

さらに、考察の中で、検査した時期の超音波検査で骨盤内に液体貯留があった例に関しては、それがCD138陽性細胞が多い原因になっているのではないかと述べています。骨盤内の液体貯留は、生理的なもので異常がない事も多いのですが(特に排卵後)、子宮内膜症や卵管水腫などの炎症が原因となります。液体貯留が見つかったら、そのような着床を妨げる原因がないかどうか調べ、内膜中のCD138細胞についても調べてみる方が良い、と述べられています。

着床不全に関しては、まだまだ分からない事も多いのですが、慢性子宮内膜炎という状態が関与している可能性はあるようです。ただし何か捉えきれない病変があるから(例えば、超音波ではっきりしないような、卵管水腫とか)、その結果として形質細胞が増えているのか、子宮内膜単独で増えているのか、というと、個人的にはどうも前者のような気がします。今後明らかになっていくでしょう。

妊娠前の血中ビタミンD濃度と妊娠について

医師の苅田です。
妊娠前の血中ビタミンD濃度と妊娠についての論文を紹介します。
(Human Reprod 2019;11:2163-2172)

前方視的検討です。
30歳から44歳までの522名について検討しています。不妊治療歴あり、PCOS、子宮内膜症、パートナーが男性不妊歴あり、授乳中は除外しています。妊娠するまでもしくは12か月間、日々の性交渉や月経(出血)、妊娠反応の結果、サプリメントの有無、喫煙、アルコール、カフェイン、運動などの記録をしてもらい検討しています。

平均年齢33歳、ビタミンD血中濃度は36ng/mlでした。ビタミンD血中濃度が10ng/ml上昇すれば妊娠率は10%上昇する結果になっていました。また、ビタミンD血中濃度が30-40ng/mlと比較して20ng/ml未満では妊娠率が0.55倍、50ng/ml以上では妊娠率は1.35倍となっていました。さらに、ビタミンD血中濃度が20ng/ml未満、30-40ng/ml、50ng/ml以上の妊娠までの期間が6か月以上かかった割合はそれぞれ51%、28%、15%でした。

(解説)
ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の構築に必要なことは有名ですが、最近では妊孕性における役割について注目されています。マウスの実験ではビタミンD受容体欠損や酵素を作るための遺伝子発現を抑制すると、卵胞発育が抑制されたり子宮が小さくなり妊娠しにくい状態になることがわかっています。また、ヒトでもビタミンDが高いと体外受精の成功率が高かったり、また月経不順やPCOSの排卵障害が改善することが報告されています。

今回の結果としてはビタミンD血中濃度が高いほど妊娠率が高い(早く妊娠する)ことがわかりました。いろいろな報告があり、関係を否定する論文もありますが、ビタミンDが妊娠にプラスになっている可能性は高く、サプリを飲んだりビタミンDの多い食べ物を意識して摂取してもらうことは少しでも早い妊娠に向けてプラスになると思います。

当院で採血してみるとほとんどの方が30ng/ml未満です。欧米に比べて積極的にサプリを摂取することが少ないせいかとも思います。紫外線を浴びることでもビタミンDは体内で生成されますが、女性にとってシミ、しわの原因になるので積極的にはお勧めしません。サプリでしっかり補っていくことが大切だと思います。







着床不全患者に対するGnRHagonist+レトロゾールの効果

医師の苅田です。

着床不全患者に対するGnRHagonist+レトロゾールの効果についての論文を紹介します。
(Fertil Steril 2019;112:98-103)

後方視的検討です。
良好胚盤胞を2回連続移植しても妊娠にいたらない523名について、3回目の移植前に①何もしない②GnRHagonist(リュープリン)投与を2周期(60日)行う③GnRHagonist(リュープリン)+レトロゾール(5mg/日)投与を2周期(60日)行う、その後移植し妊娠率について検討しました。患者背景に違いはありませんでした。結果としては、臨床妊娠率(7週相当が確認)および生産率は①②よりも有意に③が高い結果となりました。
(臨床妊娠率:①40%②42%③63%、生産率:①34%②36%③56%)

(解説)
着床不全とは良好胚を移植しても着床しない状態のことです。日本産婦人科医会の定義では「良好胚を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠にいたらない場合」と定義されています。明確な世界的な基準があるわけはないですが、2回連続して妊娠に至らないことや合計の移植数が初期胚を4個もしくは胚盤胞2個移植しても妊娠に至らないことが世界的には一般的はようです。この論文でも、良好胚盤胞を2回(1個ずつ)移植しても妊娠に至らない方を対象としています。

レトロゾールは日本では、閉経後乳がんの治療薬として用いられ、卵巣局所でのテストステロンおよびアンドロステンジオンをエストラジオールおよびエストロンに変換する酵素を阻害し、エストロゲン生合成を抑制するものです。保険適応にはなっていませんが、不妊領域では排卵誘発剤として活用されています。これは、エストロゲンが低下することによって視床下部や下垂体へのnegative feedbackが低下し、卵胞発育に必要なFSHの分泌が増えることで卵胞発育を促しています。

また最近では子宮内膜症の治療薬としても注目されています。今回のこの研究に関しても、子宮内膜症の診断には至っていないが、着床不全の患者には超音波では診断されないような初期の子宮内膜症があるかもしれず、それが着床しない原因かもしれないという前提のもとにGnRHagonist(リュープリン)+レトロゾール投与の効果を検討しています。以前の論文でも内膜症患者に両方投与することで妊娠率、生産率の上昇や反復着床不全の患者への生産率が上昇したという報告があります。

レトロゾールを追加する利点としては、①GnRHagonistのフレアアップ現象を抑えることができる(初期の段階からエストロゲンを低下させられる)②内膜症の抑制③インテグリンと呼ばれる着床に関わる接着分子の発現を補助する効果があるのではと書かれてありました。また、GnRHagonist単独投与ではどうして効果がなかったかについては、投与期間が短かった、軽い内膜症に対する治療効果がない可能性が考えられます。

今回は後方視的検討なので、結論づけることはできませんが月経痛が強い方や内膜症が疑われる方には有効は治療になるかもしれません。前方視的ランダム試験での検討を待ちたいと思います。





子宮卵管造影検査で油性と水溶性の造影剤のどちらがよいか

医師の苅田です。

子宮卵管造影検査で油性と水溶性の造影剤のどちらがよいかについての論文を紹介します。
(Hum reprod open 2019;1-13)

排卵は確認できる1119名の不妊患者(18から39歳、月経周期は整、排卵はある、少なくとも
1年間はタイミングをとっているが妊娠しない、重度の男性因子はない)について、
油性(557名)水溶性(562名)にランダムにわけ分析した結果です。実施後6ヶ月間で
妊娠率は油性39.7%、水溶性29.1%で、油性の方が有意に妊娠率が高いことがわかり
ました(P<0.001)。また、BMIと精液量に関係が認められ、特にBMI≦30または精液量>3ml
であるとき、油性の方が妊娠率が有意に高い結果となっていました。

(解説)
子宮卵管造影検査(HSG)は卵管性不妊症の診断に第1選択の検査として用いられます。
卵管通過性、卵管水腫症、さらに子宮内宮癒着、中隔子宮などの子宮内宮の所見が得ら
れます。使用する造影剤には油性と水溶性があります。油性の利点としては、明瞭な抽
出像を得ることができる点、欠点は拡散像が翌日になること、造影剤が長期に残留する
(特に卵管閉塞や卵管留水腫の場合)ことで不妊の原因になる可能性がある、血管に入
って塞栓の原因となる点です。水溶性の利点は1日で検査が終了する、吸収がはやく、
血管内に入った場合の塞栓のリスクがありません。欠点としては腹膜刺激症状が強い
こと、抽出像が油性よりややおとる点です。

HSG後の高い妊娠率や生産率からHSGの効果は認めるが油性と水溶性のどちらがいいとは
言い切れないといった結論になっていましたが、今回のRCT(ランダム化比較試験)で
油性を使用した方が妊娠率が高いという結果がでました。この原因として、はっきりと
わかってはいませんが、子宮内膜や腹膜に対して免疫機能改善効果や卵管の繊毛運動を
増強する効果などが言われています。また、油性を使用して痛みがあった方が妊娠率が
高かったといったデータもあります。

今回のRCTでは、油性使用のほうが妊娠率は高いが、高度肥満(BMI≧30)や精液量が少
ない方にはそれほど効果がないという結果でした。(これはHSGの効果以外の要因が強
いということだと思います。)

はっきりした原因がないのであれば一度HSG検査をしてみてはいかがでしょうか?




ホルモン補充での融解胚移植において、移植時の子宮内膜厚が薄くなる方が妊娠率が高くなる

医師の苅田です。

ホルモン補充での融解胚移植において、移植時の子宮内膜の厚み(子宮内膜厚)が薄くなる方が妊娠率が高くなったという論文について紹介します。

後ろ向きのコホート研究です。2017年3月から2018年8月にかけての374周期について検討しています。すべてホルモン補充での融解胚移植です。
月経開始2-3日目からエストロゲン製剤を開始し、12-13日目に経膣超音波にて内膜厚と形状を確認し、7mm以上で3層構造(木の葉状)がみられればプロゲステロン製剤を2日以内に開始し、胚盤胞を移植するという方法です。
そして再度、移植の際に内膜厚を測定します。
まず内膜厚の変化と妊娠継続率についてです。
〔妊娠継続率〕
子宮内膜厚の減少が5%未満:23.1%
         5%以上:45.2%
         10%以上:51.8%
         15%以上:58.9%
そして内膜厚の減少が10%以上のときに、胚のクオリティのみが妊娠継続率に影響し、年齢やBMIは関係ないという結果でした。
また、移植決定時の内膜が8mm以下では厚みの変化によって妊娠継続率に有意差はなかったが、8mm以上では内膜厚の減少が10%以上のときが54.1%、反対に内膜厚が変化なしか増加した場合が21.8%と内膜厚が減少した方が有意に妊娠継続率が高くなっていました。
まとめると、移植決定時8mm以上かつ移植日の内膜厚減少率10%以上であれば、着床に良い可能性があるという結果でした。

(解説)
内膜の厚みは通常移植決定日に7mm以上あれば問題ないとされていました(新鮮胚移植は8mm以上)。
しかし今回は移植日にも測定し、さらに内膜の厚みが減少していることがよいという結果になっていました。
通常でも黄体期前半では内膜厚はやや薄くなります。
ただ、今回はホルモン補充での融解胚移植に限定して内膜の確認としています。
その結果、厚みが薄くなる場合と薄くならない場合が認められました。
厚みが薄くならない原因としては、BCL-6やSIRT-1の過剰発現によるプロゲステロンレセプターへの抵抗性や変異、慢性子宮内膜炎などが関与していること、さらにエストロゲン/プロゲステロンのバランス異常が関与している可能性が考えられるとのことです。
厚みを減少させない対策として、プロゲステロン剤を増量したり、着床の時期のずれが考えられるので投与期間を延長することがよいのではと書かれてありました。
症例数が少なく、はっきりしたことはいえませんが、良好胚を移植して着床しない方はプロゲステロン剤を増量したり、ERA検査(内膜着床能検査)をしてみる意義はあるのではないでしょうか。

少子化と卵子凍結~ヨーロッパ各国での卵子凍結、卵巣凍結の事情とともに~

医師の船曳美也子です。

令和元年も終わりに近づきました。令和になっても少子化は進んでいるようです。https://this.kiji.is/576971410122179681
少子化に対して金銭的解決しかないという提案もしばしば耳にします。これは、結婚しているご夫婦に対しては有効かもしれません。

ですが、産婦人科の目からみると、真の少子化の原因は、晩婚化にともなう晩産化であると考えます。出会いの場をひろげるとか、経済的インセンティブをつけるとか、早婚へむけてのきっかけ作りも必要とは思いますが、知的成熟社会で身に着けないといけない技術や知識の量がふえている今、こどもはいずれほしいけれど、今現在は産めないという女性は多いと思います。そして、産むことを考える時期が遅くなると、生殖的に妊娠しにくくなってしまう生殖年齢の壁が一番の少子化の原因だと思います。
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa20.html (生殖医学会HPより)

そこで、生殖医療専門医としての技術的解決策は 卵子凍結です。日本では、2013年の生殖医学会のガイドラインより医学的適応でない、社会的卵子凍結も認められています。

がん治療で卵子が激減する可能性に備えてする卵子凍結を医学的適応といいます。海外では、がん治療だけでなく、早発閉経といって30代で閉経してしまうリスクの方や、子宮内膜症などで卵子の予備力がさがっている人も医学的適応になっていたりします。医学的適応か社会的適応か、この線引きは国によっても様々です。この論文では、ヨーロッパ各国での卵子凍結、卵巣凍結の事情をまとめています。

Human Reproduction Open,pp.1-9,2017
Oocyte and ovarian tissue cryopreservation in European countries:statutory background,practice, storage and use/ The Eshre woreking group on Oocyte Cryopreservaion in Europe

この論文によると、最も多かった卵子凍結適応は 卵子提供用59.9%、がん治療前10.9%、他の医学的理由(早発閉経、内膜症など)16.1%、医学的理由でないもの(いわゆる社会的理由)13.1%でした。ここで、医学的理由をどこまで認めるかが問題になっていました。というのは、国によっては医学的理由の凍結は金銭的補助があるからです。例えば、卵巣腫瘍が良性であっても手術時切除の範囲が広いと卵子は減ります。こういった卵巣機能低下を医学的と認めるかどうかがケースにより異っているようです。

また、国による規制や制限年齢も様々でした。社会的適応の卵子凍結はオーストリアでは認められていませんが、ドイツは49歳までOK。フィンランド、スペインやイタリアは年齢制限特になくOKとなっています。フランスでは2015年まで禁止されていました。が、陸続きのスペインやイタリアで治療を受ける人がいるので、2016年より一部認められているようです。

このように、各国の組織により、考え方は異なります。現在日本の生殖医学会の社会的卵子凍結の指針は2013年は40歳未満推奨、2018年は36歳未満推奨と変更されています。少しでも妊娠率が高い時期の卵子凍結は望ましいので、指針変更は有効と思いますが、反対に、当院では40歳以上でも凍結卵子からの出産された方がいらっしゃるので、しっかり情報を集めていただければと思います。(当院でも卵子凍結セミナーは隔月に行っています。
住吉 https://www.oakclinic-group.com/info/info39.html
銀座 https://www.oakclinic-group.com/info/info60.html

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