医療法人オーク会 不妊ブログ|不妊診療と婦人科を中心に診療
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2018-10-16 10:07:14

胚盤胞移植における移植個数の検討

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
今回は胚盤胞移植において、形態良好胚1個移植がいいのか、良好胚と不良胚を1個ずつ
移植するほうがいいのかについての比較検討した論文です。前向き研究です。
(Fertility and Sterility 2018 Sep;vol110,No4:p655-660)

胚盤胞移植において、初回採卵での初回新鮮胚盤胞移植(939周期)、初回凍結融解胚
盤胞移植(1009周期)で検討。形態良好胚(AA,AB,BA,BB)、形態不良胚(AC,CA,BC,CB
,CC)。5日目胚盤胞が82.1%でしたが、6日目および7日目まで培養したものも含まれて
います。
①形態良好胚1個 ②形態不良胚1個 ③形態良好胚2個 ④形態良好胚1個と不良胚1個 
⑤形態不良胚2個に分けて検討しています。



①と④では、新鮮でも凍結でも妊娠率に有意差はありませんでしたが、①の方が高い
傾向にありました。反対に多胎率は①と比較して④で有意に高い結果になっていました。
また②は新鮮および凍結双方で、①と比較して有意に生産率は低くなっていました。
③は①と比較して新鮮および凍結双方で妊娠率、多胎率は有意に高くなっていました。
ただし、双方ともに年齢が①と比較し④⑤で有意に高くなっていました。
(①34±4歳、④36±4歳、⑤37±3歳)

(解説)
形態良好胚(AA,AB,BA,BB)であれば、1個移植で十分であること、むしろ形態不良胚を
同時に移植することで多胎率が上昇するだけということがいえます。そして私が注目した
のが不良胚でも多胎率は高くはなりますが、2個新鮮胚盤胞移植では20%をこえる妊娠率を
示しているところです。

また、形態不良胚での融解胚移植の妊娠率を比較すると②17.1%⑤21%で、⑤が高い傾向に
ありました。
移植を考える時、良好胚なら1個移植、不良胚だけなら多胎のリスクはありますが2個移植、
ただし35歳以上なら良好胚と不良胚の2個移植が①と同等と考えていいかと思います。

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2018-10-07 13:49:46

ビタミンDと卵巣機能の関係

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
不妊女性において、ビタミンDと卵巣機能の関係について書かれた論文があったので
紹介します。(Fertility and Sterility Vol.110,No.4,Sep,2018,761-766)

不妊女性457人(21-50歳)を対象に、AMH 、FSHとビタミンDの関係について検討
しています。ビタミンD 20ng/ml未満をビタミンD不足としています。

その結果、20ng/ml未満と以上で年齢、BMI、AMH、FSH値に有意差は認められません
でした。季節による比較では、春と冬にビタミンD不足の割合が多い傾向が見られました
(おそらく日照時間との関係)。また、38歳未満と38歳以上で、それぞれビタミンDと
AMHの間に相関があるかをみていますが、相関はみられませんでした。

(解説)
ビタミンDは以前よりカルシウムや骨代謝に関わっていると言われていますが、最近では、
卵巣機能、肥満、免疫機構、メタボリックシンドローム、心臓血管系の病気にかかわりが
あるといわれています。

卵巣機能との関係では、ビタミンDレセプターを無くしたマウスでは卵胞発育の減少、
卵巣の血管新生、子宮形成不全などが見られるとの報告があります。また最近の体外受精
との関係におけるメタアナリシスでは、ビタミンDが不足すると妊娠率、生産率が低下する
ことがわかっています。

今回の論文ではビタミンDとAMH、FSHの相関関係がないという結果になっていました。
しかし、ビタミンDが10ng/ml以下に低下するとFSHが10%上昇するという報告もあります。
まだまだ卵巣機能や妊娠においてビタミンDの役割は明らかにされていないことが多いと
考えられます。今後も注目していきたいです。




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2018-09-29 13:41:52

卵胞期採卵と黄体期採卵での採卵数や卵子の質について

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
卵胞期に採卵後、黄体期に再度卵巣刺激し採卵することがあります(DuoStim)。
卵胞期採卵と黄体期採卵での採卵数や卵子の質について検討した論文があったので
紹介します。
(Human Reproduction Vol.33,No.8,p1422-1448,2018)

採卵前周期の黄体期にエストロゲン製剤を内服し、月経2日目から注射で刺激
開始し主席卵胞が13-14mmでアンタゴニストを併用します。すくなくとも2個の
卵胞径が17-18mm以上で採卵決定し、トリガー(GnRHアゴニスト)後35時間
で採卵します。採卵5日後より同様のプロトコールで刺激し、再度採卵するといった
やり方です。

対象はAMHが1.5以下、前胞状卵胞数が6個以下、35歳以上、前周期採卵巣数が
5個以下の方(188人)を対象としました。結果は以下のとおりです。




(解説)
成熟胚数、受精数、胚盤胞数、正常胚盤胞数は黄体期での採卵で多い傾向にあります。
採卵あたりの受精率、胚盤胞率、正常胚盤胞率には変わりがなく、卵胞期と同様に黄体期
での採卵の有効性を示していると思われます。

当院でも、がん治療前の方や短期間に多くの採卵回数を希望される方には1周期2回の
採卵を勧めています。今までの常識からすると、黄体期に取れる卵の質はどうなのだろう?
という疑問がこの論文では問題ないことが証明されました。今後は自信をもって勧めていける
と思いました。

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2018-09-22 10:47:56

妊娠初期における低容量アスピリンの内服と絨毛膜下血腫の可能性

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
妊娠初期において低容量アスピリンを内服していることで絨毛膜下血腫の可能性が上昇
することを示した論文です。
(Fertility and Sterility Vol.105,No.5,May 2016,p1241-1246)

体外受精や不育症の治療として妊娠初期から内服するアスピリンやヘパリンが絨毛膜下
血腫(SCH)とどのような関係にあるか検討しています。

①アスピリンもしくはヘパリン投与群(不妊症233人、不育症88人)、②コントロール群
(212人)としています。SCHの出現率は①40.2%②10.9%と有意に①が高かったです。


①の中でSCHの出現は、アスピリン投与群50.2%、非アスピリン投与群13.6%で、有意に
アスピリン投与群でSCHの出現率が高いことがわかりました。しかし、へパリン投与群と
非へパリン投与群とではSCHの出現率に差はみられませんでした。

(解説)
妊娠初期のSCHは0.46-22%出現するといわれています。SCHは子宮の壁から栄養膜
(絨毛膜)が部分的に剥離してしまうことによって、子宮と栄養膜の間に出血が貯留する
現象です。不正出血や子宮収縮による腹痛をともなうことがあります。SCHによって流産
や胎児死亡、早産などのリスクが高まるとも言われています。また体外受精妊娠では自
然妊娠に比べるとSCHが高率に見られるという報告もあります。

子宮卵巣の血流をよくする効果があるアスピリンやヘパリンを不妊患者や不育症患者に
使用することがよくあります。抗凝固療法といって血を固まりにくくする治療です。SCHが
出現した時(出血がおこっている時)にこれらの薬剤を中止するか悩みます。止血
したいが凝固機能を高めることで胎児発育が阻害されるかも知れないからです。




 

この論文のデータによって、アスピリン投与によってSCHが出現する可能性が高いことが
わかりました。よって、アスピリンを一時的に中止することがSCHの治療になり、へパリン
投与は続けていくもしくはかわりに投与することも可能であるということです。

 





 


 

 

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2018-09-19 16:00:14

抗甲状腺抗体と流産

テーマ:田口早桐
医師の田口早桐です。


			
妊娠10週以前の流産の原因の7割が胎児(受精卵)の染色体異常によるものと
言われています。なので、流産をした場合の対応として、「大丈夫、次はうまくいくから」
「自然淘汰だと思って」などと軽く流されてしまうことも多いと思います。不妊治療を
しているからというわけでなくても、一度流産すると、ショックも大きくて、トラウマに
なってしまうことも多いです。念のために流産の原因を調べてから次の妊娠をしたいという方も
少なくありません。

母体側の原因としては、甲状腺ホルモンの異常が流産の原因の一つと言われています。
アメリカ生殖医学会の2012年のガイドラインでは、流産したら、両親の染色体検査、
子宮形態評価、抗リン脂質抗体症候群、プロラクチン、耐糖能、そして甲状腺の検査を
することを勧めています。甲状腺機能低下で、流産だけでなく、新生児の低体重、早産、
胎盤早期剥離などの妊娠に伴うリスクが高まることも言われています。甲状腺機能異常が
あれば、投薬でコントロールします。

体外受精の場合は、流産の主原因である受精卵の染色体について、移植前に調べることが
可能なので(着床前診断)、それでかなりの程度流産を防ぐことはできます。反復流産の方に
着床前診断が勧められるのはそれが理由です。しかし、染色体正常と分かった胚を移植しても、
流産することもあります。甲状腺機能異常に関しては治療でコントロールしているはずだけれども、
中に甲状腺に対する抗体を持っている人たちがいるので、その抗体が関与しているのではないか、
ということを、調べた論文があります。

Human Reproduction8月号に掲載された、Maternal antithyroid antibodies and euploid
miscarriage in women with recurrent early pregnancy loss
です。染色体正常胎児の流産歴があり、甲状腺機能異常のある女性のうち、17%の方の女性が
抗甲状腺抗体を持っていたとのことで、抗体のある人とない人で、その後、染色体正常の流産を
繰り返すかどうかを比較しています。抗体陽性の人では初期流産が70%、化学妊娠が30%、
陰性の人では55%と43%、結論としては、抗甲状腺抗体自体では流産の原因になるとは言えない、
という結果になりました。

当院でも不育・着床不全の検査の一つとして、甲状腺ホルモンの検査をしています。甲状腺ホルモン
自体が正常範囲でも、甲状腺をコントロールするホルモンであるTSHの数値が高い人は甲状腺機能異常
と位置付けて治療することが推奨されています。当院では、内科の医師が「不妊内科」を担当して、
治療にあたっており、抗甲状腺抗体である、抗TPO抗体と抗サイログロブリン抗体もその際採血して
測っています。


流産は心身ともにこたえます。防ぐために少しでもできることがあるなら、しておきたいですね。
今回の論文では抗体自体が悪さをするわけではなさそうということですが、さらなる検討が必要だと
思います。

 

2018-09-13 10:16:09

IVFにおける免疫治療に関するASRMのガイドライン

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
IVFにおける免疫治療に関するASRM(アメリカ生殖医学会)のガイドラインが
Fertility and Sterilityに載っていたので紹介します。
(Vol.110,No.3,August 2018,387-400)

①	低用量アスピリンを常に使用することでARTでの生産率が上昇することはない。
②	コルチコステロイドを常に使用することでARTでの生産率が上昇することはない。
③	コルチコステロイドを着床時期に常に使用することで生産率が上昇することはない。
④	G-CSFの局所投与によって子宮内膜厚の改善や臨床妊娠率が上昇することの証明は不
   十分である。
⑤	脂肪乳剤(イントラリピッド)使用することを不妊患者に推奨するには証明が不十分
   である。
⑥	免疫グロブリン投与で妊娠率の改善効果は証明不十分である。
⑦	アダリムマブ投与による妊娠率の改善効果は証明不十分である。
⑧	自己リンパ球の子宮内投与による妊娠率の改善は証明不十分である。
⑨	精液の子宮内投与は臨床妊娠率の改善効果は認められるものもあるが、妊娠継続お
   よび生産率の改善効果は証明不十分である。
⑩	抗精子抗体を除去した体外受精結果の改善効果は証明不十分である、
⑪	タクロリムスのIVFでの妊娠率の改善効果は証明不十分である。

(解説)
上記のような治療は、主に原因不明不妊や反復着床不全、不育症の方に試されているこ
とが多いです。まだまだ論文が少なく、はっきりした結論が出せないのが現状です。


しかし、アスピリン、ステロイド、G-CSF、脂肪乳剤、免疫グロブリンでは有効性が
あるとしている論文も少なくはありません。今後の症例の蓄積による結論を待ちたいです。



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2018-09-08 16:02:41

7日目胚盤胞はどうなのか

テーマ:田口早桐
医師の田口早桐です。


体外受精の際の胚盤胞凍結では、D5もしくはD6で凍結することが一般的です。
発育が遅い胚より早い胚の方がよいと思われているので、よい胚であれば、D5に
胚盤胞、少し遅れてD6、もし6日目に胚盤胞にならなければ、破棄されることが
一般的です。


しかし、数は少ないものの、発育が遅くて7日目にやっと胚盤胞になるものも、
少数ですが、あります。その場合、その胚の妊娠率はどうなのか、そこまで発育の
遅い胚で妊娠しても、新生児に問題ないのかどうかが気になる方もおられます。

2018年6月号のHuman reproductionにD7凍結胚についての記事が二つありました。

一つ目はミニレビュー、今までのD7に関する報告をまとめたものです。それによると
胚盤胞到達速度からは、D5が65%、D6が30%、D7が5%、とD7での胚盤胞は少ない
傾向にあります。7日目まで培養する理由で多いのが、着床前診断を行うためだと
思われます。通常、発育が遅かったりグレードが悪かったりするものは、染色体に異常が
あるものが多いというふうに考えます。しかし7日目胚盤胞の25~45%がeuploidつまり、
染色体が正常であった、ということがわかりました。年齢によっても染色体正常胚の
割合が違います。年齢別に分けると、染色体正常の割合はD5が一番多かったのですが、
D6とD7胚盤胞はあまり変わりがない、という報告もあります。全体でいうと、D7胚の
8%が形態良好でかつ染色体正常胚でした。

二つ目はTongらの報告です。
D5、D6、D7の胚盤胞について着床率、臨床妊娠率、生産率及び新生児の低体重や先天奇形、
新生児死亡の数を比較しています。

2006年1月から2015年5月にかけて後方視的コホート研究。対象は2908人の女性と、そこから
生まれた1518人の新生児についての調査です。

D7胚は、着床率、臨床妊娠率、生産率に関して、D5&6日目の胚盤胞に比べて低い傾向にはあった。
それぞれ、24 vs. 49&42.3%、32 vs.58&53%、25 vs. 46&41% でした。しかし、発育の遅い
D7胚盤胞からの新生児は、D5、D6胚盤胞からの胎児に比べて低体重、先天奇形、新生児死亡が多い
ということはありませんでした。

結論

発育が遅くても、育ちさえすればちゃんと妊娠して赤ちゃんになる、ということですね。
まだまだこれからさらに検討が必要です。当院では、D5凍結の際、胚盤胞になって
いなくても発育の順調なものは凍結していますし、胚盤胞凍結はD7まで確認しています。
可能性が劣るとはいえ、赤ちゃんになるかもしれない胚ですから。ただ、移植は、着床の窓
とずれてはいけませんから、新鮮胚移植ではなく、凍結融解胚移植を強くお勧めしています。







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2018-08-29 09:59:16

ミオイノシトールの体外受精における効果

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
ミオイノシトールの体外受精における効果についての論文を紹介したいと思います。
(Medicine 2017 98:49 e8842)

メタアナリシスです。
953人の体外受精患者で検討しています。
ミオイノシトールの摂取により臨床妊娠率は1.45倍、流産率は0.26倍、良好胚率
(Grade 1)1.73倍、未熟卵率0.31倍、HMG量は327単位少なくなっていました。
採卵総数、MⅡ卵数、刺激日数、最高E2値には差はありませんでした。ミオイノシ
トール4g、葉酸400μgを3ヶ月前もしくは採卵周期の初日から採卵決定もしくは
移植して14日後まで服用していました。

(解説)
ミオイノシトールはビタミンB類似物質で、体内でレシチンの生成を促したり、脂質や
糖代謝を調整しています。また、卵胞内で合成され、近年は体外受精においてサプリメ
ントを摂取することで、卵子や胚の質がよくなるとも言われています。そして、イノシ
トールは伝達物質のセカンドメッセンジャーとして、膵臓やその他の臓器の腺分泌の調
整をしています。インスリン抵抗性の改善作用があり、多嚢胞性卵巣症候群や妊娠糖尿
病に有効性が認められています。

今回は症例数が少ないこともあり、まだまだ今後の検討をしていかなければいけません
が、成熟卵や良好胚が少ない方、多嚢胞性卵巣症候群の方、卵巣機能が低下している方
には試してみる価値はあると思われます。





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2018-08-15 09:14:57

胚のグレード別やDay5及びDay6での妊娠率、着床率

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
Day5(D5)とDay6(D6)の胚盤胞で着床前診断を行い、胚のグレード別やD5及び
D6での妊娠率、着床率について検討した論文を紹介します。

2013年から2016年で胚盤胞での着床前診断を行い、その後凍結融解胚移植を行いました
(701周期:D5 366周期、D6 335周期)。患者背景に有意差はありませんでした。
まず、D5とD6での生産率はそれぞれ60.4%、44.8%でD5が有意に高かったです。そ
して、胚のグレード別での検討では、生産率はそれぞれ良好胚(3BA以上)67.8%、
標準胚(2-6BB)53.4%、不良胚(2-6BC、2-6CB)29.5%でした。


また、D5の良好胚ではD6の良好胚と比較して、生産率(72.8%vs56.5%)着床率
(77.7%vs58.7%)でどちらも有意にD5良好胚で高い結果でした。D5、D6の標準胚
では着床率でD5が有意に高く(64.4%vs53.4%)、生産率では有意差はありませんでした。
また、不良胚では生産率、着床率に有意差はありませんでした(生産率33.3%vs28.2、
着床率44.4%vs35.3%)。

(解説)
一般に着床前診断で問題ない胚の着床率は約60-70%といわれています。ただ、問題な
いと判断された胚でも、何日目で検査したかや胚のグレードはさまざまです。この結果
から、やはり早くに成長する胚がより良いということと、早くてもグレードが悪いと生
産率や着床率は半分に減ってしまうということです。むしろ、D6胚でも標準胚以上なら
約50%以上の生産率はあるということです。過去の報告にも同様の結果は多数報告さ
れています。

また着床前診断で異常がないと思われる胚を移植しても約30-40%は出産まで至りませ
ん。その理由は、子宮内膜の状態、卵管因子(卵管水腫など)、胚と子宮内膜の非同調性、
微小血栓、潜在性免疫異常などが考えられます。着床前診断をしなくても良い胚は
着床するかもしれませんが、流産率を最大限に減らすには着床前診断をすることが有効
といわれています。最近の論文でも、流産率を減らし、とくに37歳以上ではコスト面で
も着床前診断を行うことがよいのではという意見もあります。


今後、着床前診断の精度の向上により、妊娠率の改善に結びつくことを望みます。









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2018-08-02 09:52:22

受精卵の空胞形成

テーマ:苅田正子
医師の苅田です。
今回は受精卵の空胞形成についての論文を紹介します。
(Fertility and Sterility Vol.109,No.6,2018,p1025-1029)

今回の論文は、受精後4日目の桑実胚の時期の空胞形成がその後の胚盤胞にどのよう
に影響を与えているかについてです。
2016-2017年にかけて424人の体外受精患者を対象に、
グループ1(G1):すべての桑実胚で空胞形成あり
グループ2(G2):空胞形成なし
グループ3(G3):一部に空胞あり
に分けて検討しています。
G1ではG2、G3と比較して、胚盤胞形成率および良好胚盤胞率が低くなっていました。
さらに妊娠率、生産率についても有意に低い結果でした。移植胚数(平均1.15個)、
胚盤胞のグレード、子宮内膜厚において差はありませんでした。ただし、G3では空胞
がなかったものを移植しています。

(解説)
空胞は受精後の胚ではどの段階でも発生し、よく見られるものです。その大きさ、数が
胚の質を評価する一つの基準になります。この論文では、発生時期に焦点をあてて検討
しています。空胞というのは、水様の液体で満たされた球形をしており、細胞膜で囲ま
れた細胞内封入体です。通常、空胞は顕微授精によって生み出されるものではあります
が、発育段階のどの段階でも自然に発生します。


また、4日目で空胞が確認できることが一番多く(11%)、これがアポトーシスや
発育停止を意味するかどうかはまだはっきりと証明されていません。このような結果に
なった理由として、4日目に空胞が認められると、細胞質の量が減少し、それが胚盤胞
における細胞の損失につながり、良いグレードの胚盤胞になれないことで妊娠率が低下
したと考えられます。

すべての胚で空胞が形成されることはあまりありません。G3のような一部の胚にみら
れることはよくあります。今回の結果から言えることは空胞の無いものを移植して良好
な妊娠率が出ており、混在していても空胞のない胚に影響を与えていないことと空胞の
ないものを優先的に移植していくほうがいいということです。しかし、大きな空胞形成
があっても正常児はみられるという報告もあり、空胞形成があるからといって凍結に値
しないというわけではありません。




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