おい?細川。
オマエ◯◯と暴走族仲間なんだってな
あ、はい。
アイツは暴走族リーダーをしていたらしいがこの会社では実力でのし上がったんだ。
いくら昔がどんな栄光があろうとこの会社では実力だけが唯一の認められる条件なんだよ
だから◯◯と幼馴染だからって甘やかさないから言っとくぞ。
頰にキズがあるケンジ先輩の口から出た忠告には正直イラっとした。
『そんな事、百も承知ですよ‼️
もっと稼ぎたいから、居心地が良く、収入が安定している賃貸の世界を捨てて、最も稼げるフルコミの世界に飛び込んで来たんですよ‼️オレをみくびんな‼️』
と言いたかったが、怖くて言えなかった(笑)
ある時、ケンジが留守の時にほかの先輩が話しかけて来た。
細川くん。
キミ大変だねえ。
よりにもよってケンジがヘルプに付くなんて。
アイツかなりクセがあるから気をつけてね。
うちの会社はフルコミだから、正直、営業マンは少ない方が客に当たる確率が増えるから、
新人はいつも先輩にイジメられがちなんだよね。
特にケンジはヘルプに付いたヤツの特権を生かして、新人の当たる客も自分の客だと思ってやがるから、当分は細川のこと離さないと思うよ。
えっ?タダでさえフルコミなのにその上、手伝ってもらう先輩に売り上げを取られるんですか?
あぁ。そうだよ。先輩のヘルプが付いている限りは上げた売り上げの半分を取られるのさ。
は、半分⁉️
ありえなかった。そんな話し聞いてない。
怒りが湧いて来た。そして言った。
大体、どんな会社でも新人が入ったら会社の売上になるんだから会社の負担で新人教育するんじゃないですか?
アハハ。細川くんうちの社長がそんなの持つわけ無いよ。会っただろう。常識とか一般の会社とかそんな事言ったところで聴く耳持たないよ。
そのかわり社長はカネ持ってるから儲かると思ったら土地を買ってくれるからね。
普通の不動産会社は銀行に金借りて物件を買うけど、うちの社長は現金を腐るほど持ってるから自分のアンテナがピンと来たら、その日のうちに一千万でも二千万でも手付け金を入れて買いに行くから
ドンドン土地が買えるから、俺たちはフルコミでも食っていけるんだよ
ナルホド。だんだんこの会社の事が分かって来た。
つまり、
基本給ゼロ、
家族手当ゼロ、
交通費ゼロ、
クルマは持ち込み
唯一出るのはガソリン代が月に二万円のみ。
給料は自分が売り上げた金額の30パーセントが取り分。
そんな世間からしたら非常識だらけの会社だが、社長がカネを持っている事と、類い稀に見るカネの匂いを嗅ぎ分ける嗅覚で、売る物件が沢山あるがために
こんな一見不合理に見える条件でもみんな食っていけているらしい。
この会社に導いてくれたリーダーの羽振りの良さと、もっとカネが欲しい。という欲望であまり詳しい話しを聞かずに売買の世界に飛び込んだボクだったが
目先の売り上げを上げないと基本給はゼロでは家族を養えないし、家のローンも払えない。
ただでさえプレッシャーで押しつぶされそうになる中で、悪評高い先輩がまるでコバンザメのようにぴったりと付きまとう。
鼻息荒くして、大リーガーになったつもりだったが急転直下 ⤵️⤵️
心はどん底の気分になった。
でももう後には戻れない。
やるしかなかった。
そんな中、入社して一週間もせずに早々にお客さんに当たる順番が回って来たのだった。
まだ土地勘もさっぱりどころか、まるでわからない状態で、物件の事も何もわからない状況だったが、とにかく売らなかったら給料ゼロなので
緊張と不安で吐きそうになりながらチラシの反響があった現地にケンジ先輩と向かう事になった。
えっえぇ!?
ま、マジですか‼️
しかし、助手席に先輩を乗せて現地に向かう道中に、先輩の口からまたまたショッキングな事を聞く事になったのだ。
つづく