今日も今日とてあのポイントへ。
友人が先に着いているとのことで少し遅れて入場入水。
フカセ釣りをしているらしく、グルクマーが釣れているとのこと。
若干の二日酔いもあり「何か一匹でも釣れればいいや」ぐらいのモチベーションで釣り始めるが、今日はミーバイさえも釣れない。
目の前30センチの距離でアバサー(ハリセンボン)の群れがプカプカと浮いていて、どうしようもない程に平和な時間が流れている。
指でつつくと「あ、やべっ」といった感じでやっと逃げる。そしてまた戻ってくる。ペットみたいだ。
リーフのキワ、浅瀬、深場と一通り攻めてみるも反応がないので友人の隣に座って片手間でルアーを投げる。
気を抜いている時ほど釣れるもので、小ガーラが一匹。
40cmジャスト、今日釣れた魚はこれだけだった。
私たちがいるこのポイントは目の前に幅100メートルほどの水路があり、その向こうに大きなリーフがある。
ボートやカヤックを持っている人はそのポイントまで行けるので、今日も2~3人の姿が確認できた。
リールを巻きながらぼけーっと向こうのリーフを眺めていると、これから帰るらしい人が、水路を渡ってこちら側に向かってくるようだった。
カヤックかと思ったがオールは持っていないようだ。2馬力ボートか?
と思ったがまさかの。
ボートにつかまってバタ足。
熟練の海人なのかバカなのか。どちらにせよすごい根性だ。
それからしばらくして、友人が戻る準備を済ませて車へ戻るようだったので私も戻ることにした。
帰る前にラスト2、3投していると、ふと気が付いた。
あれ、あのバタ足の人前に進んでないんじゃない?
恐らく20分ぐらいはこぎ続けている。
大潮で流れの早い時間帯の上に、風はこちらからすると追い風。ということはこちらに向かって来る場合は向かい風になるわけである。
しばらく見守っていたが全く進んでいないうえに横に流されている。
あれ、この人下手したら死ぬんじゃあないか?と初めて気が付いた。
ギリギリ届きそうな距離だったので、ルアーの針を外して思い切りキャストする。
ボート近くに着水するもののバタ足に必死なのか全くこちらに気が付いていない。
何度も何度も「おーい」と呼びかけると、やっとこちらに気が付いたのかヒョイと手を挙げた。
ボートを少し超えるようにキャストし、風に乗せて糸を目の前に送る。掴んだ。
掴んだよというジェスチャーが帰ってくる。
糸が切れないようにゆっくりゆっくりと後ずさり、何とか救出に成功した。
どんな無謀な冒険野郎だろう。とてっきり若者だと思い込んでいたが顔を見てみるとなんと80歳前後の老人だった。
話せる距離まで来ると老人は「ありがとう、助かったよ」とでも言うと思っていたが、
開口一番の言葉は「釣れたねぇ?」だった。
そして「あんた午前中も来てたでしょ」と続ける。
いやジジイてめぇ。どのタイミングで世間話しとんじゃ。ほんで誰と間違えてるんじゃ。
ルアーの針外さないで投げりゃよかった。
釣りに行くと色々なバカに出会える。
今回のバカは本当にバカだと思った。助けた私もバカだった。