更新料裁判の行方 by 京都更新料裁判弁護団 久保原先生
皆さんこんばんは。スタッフの落合です。
本日は、他のスタッフの方3名と、賃貸経営110番のセミナーに出席しました。
第一部: 立退きの上手な進め方 by 110番相談員
第二部: 更新料裁判の行方 by 久保原弁護士(京都更新料弁護団)
第二部の勉強会ですが、他のスタッフの方もブログに書くかもしれないので、かぶるかも知れませんが、2度読んでも非常に参考になる内容なので、是非ご紹介させて下さい。
なお、出来るだけ先生のご説明を忠実にお伝えする為、チョット長くなるかもしれません。
1.もし「更新料」で敗訴=無効となると・・・・契約上、更新料の規定は「無かった」ことになり、既に受領した更新料を返還することになる。
2.更新料裁判(勝敗状況=大家側の)
地裁: 3勝4敗
高裁: 1勝3敗 → 左記のうち、1勝2敗がそれぞれ上訴し、最高裁へ。
3.更新料裁判の展開
1)個別の裁判:上記2.
2)集団訴訟:更新料返還を呼びかけた団体による勝てそうな事例の集団訴訟
3)差し止め請求:消費者団体による提訴。個別事情に関係なく、更新料の条項を使う契約書の使用停止を求める裁判
4.判決の内容 その1:8月判決(大阪高裁平成21年8月27日)=大家側の敗訴
1)更新料は説明のつかない支払い
2)それも、入居者側に過大な負担を強いるもの
3)更新料は、月額の支払いを過小評価し、入居者を騙すもの。
4)借地借家法は“正当事由が無い限り、入居者への退去要求”は認めない=強行規定がある。更新料は、強行規定に対抗し、事実上入居者への退去要求を実現させる手段。
上記法理論は、京都大学 塩見教授による。
5.判決の内容 その2:10月判決(大阪高裁平成21年10月29日)=大家勝訴
1)まず、礼金とは“賃借権設定の為の契約金”である。
2)賃貸借契約の期間は未定であるから、上記礼金は当初2年間のものである。
3)入居者によっては、2年で退去~数年~数十年、契約を更新する。更新料とは、賃借権の延長の為の契約金に相当するものである。
4)事実、更新料は礼金と比較して、適正金額である。
弁護団は、京大山本教授、東大落合教授、名大加藤教授の法理論を裁判所に提出。
久保原弁護士の個人的解釈: この判決は、礼金を取っていない契約には矛盾し、将来の経営に禍根を残すことになる恐れがある→7.に続く。
6.最高裁判所が、現在進行形の3つの裁判につき、口頭弁論を2011年6月10日に設定
通常最高裁は弁論を開催しない。これを実行するということは、高裁の判決を裏返す、ということ。
但し、高裁では大家側の1勝2敗なので、どう転ぶかは予断を許さない。3つの裁判に対し、統一した見解を出すと思われる。
7.更新料を見直す視点:大家さんは裁判の意味を考えよう。
少なくとも、“更新料とは不明確は支払い”と“ケチ”を付けられたことは事実。もし最高裁で勝利しても、旧来の契約が正しいということにはせず、“ケチを付けられない契約”にすべき。すなわち、“更新料は前払い家賃であり、賃料の一部である(例)”と明確にすることが大事。
8.敷引き有効の最高裁判決(本年3月24日)の意味
平成17年12月にも最高裁判決が出されている。その要旨は、
1)原則自然損耗は敷引き禁止
2)但し、明確な合意が得られるような特約であれば、有効
この判決では、2)がどのような特約ならば、敷引き有効か不明確であったのに対し、今回の判決で、“家賃と比べ、高額過ぎない、礼金が無い”等であれば、特約は有効、と判断した。
つまり今回の判決は、平成17年の判決を補完するものである。
セミナーの後、個人的に10分程先生と意見交換する機会がありました。
「消費者契約法10条を争点とした裁判、居住者安定法による取立て制限、滞納問題、自殺者遺族による損害賠償禁止運動」等、大家の経営環境は“行き過ぎた消費者運動”により外堀を埋められつつある。このような状況に対抗する、という大家側の運動は全国にありますか?」との私の質問に、
「弁護士は、代理人に過ぎない。私(先生)は、京都更新料裁判の弁護活動へは“手弁当”で参加している。落合がいうような運動は確実に必要だが、それには“大家さんがまず行動を起こすこと”と私(先生)は講演の度に申し上げている」とのことでした。
つまり、久保原先生は、「相手方(原告)は社会運動として大家を被告席に引きずり出しているので、大家側も団結して対抗しなければならない、しかしそれはまだ出来ていない」、との主旨をおっしゃったと私は理解しました。
これこそ、我々AOAが考えるところの“水も大事だけど、空気も大事、どちらもしっかり勉強しよう、賃貸市場に関わる全ての方が幸せになるように行動しよう”という理念に通じるものと、力づけられました。
上記は、私が勉強会を通じて“理解した内容”です。