ぼくに持病があったため、温泉にはよく行った。

仕事が忙しい妻は、どちらかというとシャワー派だったと思うのだけど

一緒に行くうちに温泉好きになった。

 

家内が体調を崩したとき、湯治をすすめたことがある。

これは、そんなときの想い出話。

 

世間で、サブスクが流行ったことがある。

いつだったろう?

”温泉サブスク”というのが登場したことがあって、ぼくはそれを妻にすすめた。

 

妻は、思うところがあったようで、ここに行きたいというところを見つけてきた。

”温泉サブスク”ではなく、ここに泊まりたいというところを。

ぼくは、賛成した。

 

こうして妻は1週間の湯治に行くことになった。

ただし、一人で。

 

理由は、こんな理由だった。

ぼくが一緒に行くと費用が倍になる。

それより、長く滞在して効果が出てほしかった。

湯治十日と呼ばれるから。

 

あほだった。

とびきりの。

独りになった今だと、しみじみわかる。

 

妻が選んだ湯治場所は、車がないと不便なところ。

だから、二人で一緒に行って、車を置いてきて、帰りは電車で帰った。

迎えに行くときは、逆のことをした。

電車で行って、車で一緒に帰ってきた。

 

節約しつつ、目的を果たす最善の方法に思えた。

当時のぼくには、そう思えた。

 

いまは、わかる。

独りで食べるご飯は、味気ない。

独りでみる景色もだろうか。

 

暫くしてから、妻から抗議を受けた。

「私を独りにした」と。

 

”え、なんで?”と思ったのだけど、いまは、わかる。

そして、ありがたくも想う。

あほだった自分に気づいたぼくは、とても反省している。

そして感謝している。

 

ありがとう。