　　雪山の基礎技術　　１９，３，１０　　　　

　　翌朝起き出して共同食の朝食。暖かいうどんのようだ。

　　食後、テントの片づけ、スノーマウントの解体など手分けして行う。私は強度を

　知りたいこともあり自分の寝場所の解体を進める。スノーマウントは内側１０ｃｍ

　厚程は柔らかいが外側１０ｃｍの暑さ部分は硬く凍り付いていた。スノーソーで切

　れ目を入れなければ壊れない。そのうち二人が上に乗るがまったく大丈夫だった。

　解体が一仕事だった。

　　なるほど昨夜は暖かかったとはいえ山中の夜中は相当冷え込んだらしい。この

　外側の凍り付き具合如何が強度を決めるのだろうがこれなら大概は崩壊するこ

　とはなさそうだと分かった。いい経験になった。

　　テントの撤収、スノーマウントの解体、トイレの埋め戻し、食卓の埋め戻しが済ん

　だところで荷物を一旦山の家まで運び、必要な装備だけ身に着けて、白毛門登山

　口駐車場で雪山基礎技術の復習をやることにする。

　　まずは普段あまり履かないワカンの装着とアイゼンを付けてワカンを履く方法の

　練習。この場合ワカンの歯が邪魔にならないようにワカンを裏返して履くわけで

　しばらくやってないと意外と戸惑う人がいる。履いたら少し歩いてみる。

　　雪山での支点作り。

　　踏み固めた雪面にスノーバー（Ｔ字型とＶ型がある）を差し込む。力が掛かる向き

　に注意する（上向きに力が掛かれば簡単に抜けてしまう）。カラビナに掛けたスリ

　ングを引かれる方向に埋めると強度が増す。テンションを掛け試してみるとき抜け

　て飛んでいかないように安全策を講じておくこと。

　　ピッケルでの支点造り。

　同じく踏み固めた雪面にピッケルを埋めこれにスリングをタイオフまたはクローブ

　ヒッチして支点にする。

　スリングを埋めるのも同じ。今回は埋めなくても十分な強度はあった。

　　スタンディングアックスビレイ

　踏み固めた雪にピッケルを埋めスリング、カラビナを掛けて、スリング部分を踏む。

　山足側で踏むのが基本かな。ただ谷足が一段低くなると山足にしっかり体重を

　掛けられないから段差にならないよう足場を造る。

　　肩がらみビレイで支える。皆さん支える体験をしてみる。

　　灌木での支点作り。

　枝にタイオフするだけでなく、その後自在結びを２，３回灌木の枝に絡めると

　しっかり効く。灌木でも枝の向き方向に引かれるなら結構強い。

　　スノーボラード（懸垂支点）。

　　直径１ｍほどに丸く雪を踏み固め、その周りに溝を掘りロープを掛けて支点に

　する。ただ溝に掛けただけだとテンションを掛けるとロープが食い込み、雪面が

　切れたり、ロープが回収できなくなる恐れがある。

　　外周に小枝を差し込んでロープが雪に食い込まないようにする。

　　その後ビーコンでの埋没者の捜索技術訓練をやる。

　これは文字通りビーコンの取り扱い説明書にある通りなのであるが、要は１５分

　と言われるタイムリミットがあるので、近くに行くまで迅速に行動すること。ただ

　実際は再度の雪崩がないかどうかを見極めなければならない。

　　自分のビーコンではどの程度まで近づくことが出来るか、精度を知っておく必要

　がある。この確認は探すビーコンの電波がないと出来ないのでこうした訓練の場

　が欠かせない。

　　この点最新のビーコンは３０～４０ｃｍくらいまで表示して素晴らしい。

　これだけ近くなれば、プローブ（ゾンデ棒）を刺して探すのもかなりやり易い。

　　プローブでの捜索の仕方も説明書にある通りの手順できちんとやらないと何も

　ないところから探り出すのは意外に難しい。

　　捜索訓練は写真に撮っても説明不可なので細かくは省略する。

　　その後まだ埋没体験をやったことのない人に体験してもらった。埋まったところで

　プローブを刺して人の感触を体感する。

　　こうした訓練は雪山山行には欠かせないわけで、うろ覚えを解消するためにも

　年に一度はやる必要があるようだ。

　　（了）

雪山訓練 ２

雪山訓練　２