　　大増水の逆川　　１５，７，２０

　　今回は手頃な沢ということと、台風１１号の影響で中止となった山
　行の人たちも合流したので１０名（男４、女６）もの大人数となった。
　１１号の雨で増水は予想されるが、まあ男性陣が強力な沢屋ばかり
　だから何とかなるでしょうと出かけた。天気も良さそうだし。

　　いつものようにほとんどのメンバーは新宿発のホリデー快速に乗
　り奥多摩駅へ。バスで川乗橋。ここから３０分の歩きでカーブミラー
　の目印から踏み跡を沢へ降る。
　沢装備を着けて入渓したのが１０：４０頃。直ぐ上流が逆川の出合。

　　予想通り増水しているようで流れが速く深い。本流から逆川に入る
　のにも濡れずに取り付けるところはなさそうで、いきなりの泳ぎで突
　破するしかなかった。ここが泳ぎになったことは今までなかったな。
　まず私が取り付き泳ぎの苦手な人もいるのでロープを張る。

　　皆さんいきなり増水した沢の洗礼を受ける。

　　小滝が続く。

　　流れが激しいからちょっとした小滝も水を被る。

　　私は一足早くＦ１の偵察に行く。相当な水量だ。手前の崖を巻く
　つもりか取り付いている人が見えた。あんなところをと思ったが、
　結局この巻きは不可だったらしく、私たちがＦ１に取り付き登るうち
　に一緒になったのだが、外人さんの親子だった。

　　皆を待ってＦ１の下に行く。大水量の漠水である。１１時頃。

　　一瞬ビビル水量ではあるが、私はこれに近い水量のときにここを
　登った経験があるし、１段目さえ突破すれば、２段目滝は不可でも
　横の崖から登れる。
　以前は１段目左手のトイ状を登ったのだったかもしれないが、今日
　はとても無理そうで、少し水の少なめな右手の滝に突っ込む。もろ
　シャワーで取り付きに足場がなくて後ろのＭさんに補助してもらい乗
　りあがる。
　２段目は叩き落されるか窒息するか、とてもじゃないが登れたもの
　ではないので左手の崖を登る。
　溝状を登ると上にリングボルトが打ってあったので、ここにロープを
　セットする。セットしたロープを長めに残し、これを補助にして滝落ち
　口を横断して滝上にあるスリングにロープをセットした。

　　直ぐ後ろにＭさんが続いて登ってきたが、Ｍさんには崖の途中で
　後続を補助してもらうことにした。私はルートを作ることにまず頭が
　集中したのだが、問題は１段目だった。
　皆はこの１段目がなかなか登れなかった。まず何人か引き上げて
　からルート工作をすべきだった。
　先ほど滝手前で高巻こうとしていた外人さん親子も中に入って登ろ
　うと取り付くがなかなか登れず余計に時間が掛かった。
　後続から滝の手前右側から高巻きたいと合図があったが、見たとこ
　ろ非常に急な崖で物凄い高巻きになりそうで不可の合図を返す。
　ここで早くも敗退かの感じの人もいたようだが、せめてこのＦ１は攻
　略したかった。
　

　　時間はかかったが何とか登ってくる。そのうちＳ師匠が１段目の上
　に登り皆を補助するようになってから、順調に皆が登ってこられる
　ようになった。
　Ｓさんは滝の飛沫でびしょ濡れになりながら皆を補助してくれた。
　まず私かＭさんが最初に補助すべきだった。Ｓさんにえらく負担を
　掛けてしまった。滝落ち口を戻り崖上から写す。

　　多分補助してもらって途中に入り登ったらしい外人さんも一緒に
　滝の飛沫を浴びているが見てるだけだ。手を出す余地もないが。
　息子がまだ上がってないようだ。

　　ボツボツ登って来るので、また滝落ち口に横断補助ロープをセット
　して、滝落ち口を渡ってもらう。水量が多く足が流されるし、万一でも
　滝に落ちれば救出しようもないから慎重を期す。
　外人親子も一緒になって登ってきた。やがてロープを回収しつつＭ
　さんや最後にＳさんが登ってきた。
　滝上の小滝を越えたところで休憩する。結局１２時頃になったようだ。
　場合によってはここで敗退かとも考えるくらい時間がかかった。
　大人数だしちょっと手順が悪かった。

　　まあしかしまだ時間はあるので先に進む。

　　水量が多いので中央突破が難しく小さく巻く場面が多くなる。

　　いつもは登る小滝も少々難しくなる。

　　水量が違うので細かいところは思い出せない。

　　昨年春の大雪によると思われる倒木が多い。

　　いつもなら対岸に足が届く小滝の横断も凄い水量でそうはいか
　ない。外人の息子は頑張って飛び込み対岸に取り付いた。
　私も続いて飛び込んで越える。頭のてっぺんまで潜った。
　ここで１２：４０頃。

　　皆は右手を巻いた。

　　ちょっとした小滝も皆釜が深い。

　　いつもなら流れの中を気持ちよく登るはず。　

　　流れは激しい。

　　気持ちのいい淵のヘツリも腰まで漬かる。

　　外人親子もずっと一緒です。

　　なかなかきわどいヘツリです。飛び込んだら流される。

　　１３時頃Ｆ２（？）に当たる深い釜を持った４ｍほどの滝。外人の息
　子が取り付いていたけど登れない。この親子はロープを持っている
　が息子が担いでいて、親が先に登ったのでは使えない。ずっとこの
　調子だから、補助するということは考えてないようだ。
　で結局私たちの方が先に登る。

　　途中Ｍさんが補助してやって外人の息子を登らせる。　

　　その後中間にロープを持つ私が入って登り、後続を肩がらみで
　ビレイして登ってもらうことにする。ここにはお助けスリングがぶら
　さがっていた。以前には無くてこれを登っているから、よく探せば
　ホールドはあるのだが、お助け紐やビレイがあるとついそれに頼り
　がちだ。
　しかし肩がらみビレイに全体重をかけられたのでは腰にくる。
　後ろの６、７人のビレイをやったからか、沢が終わってから酷く腰が
　痛みだし帰宅に難儀した。次の日まともに歩けなかった。
　勘弁して欲しい。
　登攀終了後少し休むがそのうち強く雨が降り出してきた。

　　沢中に取り残されたサワグルミ（？）の大木。１３：３０頃。

　　１３：３５頃からのこうした滝も手こずる人がいたので、横断するの
　を肩がらみビレイで補助した。流れが激しいとそれだけに目を奪わ
　れてしまいがちで、私からすればわざわざ難しく登っているとしか
　思えないのだが。私は滝左から取り付き滝落ち口部分だけ、足を
　右にまたいで登ったのだが、皆は流れに入るのをためらうのかな。
　激しい流れでも浅いところや、足場になる岩などを見つけて使えば
　案外簡単に中に入り横断することが出来る場合がある。

　　相変わらず激しい流れの中を進む。雨も強く時折雷鳴が轟く。
　雷鳴が轟くと谷底だから近くに落ちることはまずないと思うものの
　なにせこちらは水の中だから気持ちが悪い。

　　１０名もいるとどうしても先頭と後ろとが離れる。

　　１４時に近くなり私にはもう遡行はボツボツ限界かと思われてきた。
　仕事道や大ダワ沢が出てきたらエスケープも考えなければならない
　だろう。ベテランたちとどうするか相談したかった。
　そのうち一旦右手から沢が合流するところで皆が集まった。がこれ
　は大ダワ沢ではない。ともかく大ダワ沢を目指すことにする。
　進むと仕事道に掛かっていたと思われる橋が流されて沢中にあった。
　今回の増水時かどうかは分からないが余程増水したらしい。これで
　仕事道は使えない。取り付きが分からないからだ。
　そして大ダワ沢手前の大き目の滝。

　　やがて特徴的な大ダワ沢の合流点に着いた。１４：１５を過ぎて
　いてこの時は猛烈な雷雨となっていた。一足先に進んでいた外人
　親子も大ダワ沢側に少し上がったところで雨宿りしていた。
　いつもの沢ならここからＦ６大滝まで１時間も掛からない。しかし
　激しい雷雨となり沢は増水するばかりだし、１０名もの大人数で、
　ここまでで明らかなように、いちいちの滝で登攀に時間が掛かると
　とても短時間では着きそうもない。ましてや増水時のＦ６大滝の全
　面シャワークライミングを楽しむ余裕はありそうもない。

　　大ダワ沢を遡った事はこれまでない。しかしＪＰＳを持っている人
　がいて地図をより明瞭に確認することが出来た。大ダワ沢は割り
　と緩やかな流れとなっており、途中尾根に取り付くのも易しそうだ。　
　ここで遡行は中断して大ダワ沢からエスケープする事に決めた。
　実際歩いてみると大ダワ沢は流れも緩やかで、結局ほとんど沢を
　そのまま詰めて、適当なところから尾根に取り付き林道に出た。
　少し戻り気味に上がると大ダワに着いた。１時間掛からなかった。
　上がるに連れ雨も上がってきた。

　　結局私たちに着いて来た外人親子は奥多摩に下りたいということ
　でここで別れ反対方向へ降っていった。それにしても最初のＦ１の
　巻きもそうだが、２人だけだったらＦ１で挫折しただろう。何よりロー
　プを息子が担いでいたのでは前を進む親が補助することは出来ず
　ロープワークが怪しい。危ない沢登りだったと思う。

　　大ダワの分岐で休憩を兼ね沢装備を解く。
　このとき虫が凄かった。女性陣に虫に顔を喰われた人が多かった。
　私は沢に入ると大概足のどこかを喰われるのだが、顔はあまり
　やられないな。
　降り始めたのは１５：４０前頃だろうか。
　途中雨上がりの霧が発生して、幻想的な光景も見られたが、この
　降りは結構長く、水に漬かりっぱなしの後では疲れた。　

　　お疲れ組みは集落上の神社に１６：４５頃で１時間強。

　　１７時前に鳩ノ巣駅に着き、ともかく着替えて１７：２０前くらいの電
　車に何とか乗ることが出来た。
　電車の中の一杯のビールも旨かったが、物足りないので立川で打
　ち上げとしたら、１０名全員参加したのもびっくり。
　

　　今回は想像以上の大増水で、かなり激しい雷雨にも遭遇し、１０名
　もの大人数とほぼ最悪の条件化での沢登りだった。限界ぎりぎりの
　増水だったわけで、どこまで可能かを肌身で感じることになった。
　ほぼ水に漬かりっぱなしで激しい雨にも打たれ、涼しいを通り越して
　震えがくるほど寒く、そして途中敗退せざるをえなかったけれども、と
　ても充実した手ごたえのある沢登りになった。
　私を含め皆さんまたひとついい勉強になったでしょう。
　