今回は単車の登場無し。

 

 

もう随分昔、スリックカートと呼ばれる遊びがありました。

ゴーカート場のコースにワックスを塗り、タイヤを滑らせカウンターステアを当てながらゴールを目指すのです。

 

本格カートと違い速度は遅く、速度域は遊園地のゴーカートと同等程度ですが、路面が凍結路の様に滑るのでそれなりに運転の心得が無いとまともに走れません。 しかし、コース脇は柔らかい壁なので曲がり損なっても直ぐに壁に激突しコース外に飛び出すことは無くぶつけまくっても一周は出来ますし、その点は寧ろ優しい遊びです。

近年流行りのドリフト走行を手軽に楽しめるカート場といった感じ。

 

カート場によって全長、コースレイアウトも違いますが、楕円型か僅かにひょうたん型が多かったと記憶してます。

エンジンは全開全力になって物凄く頑張って全速力で走ってる感は有るのに、タイヤが空転するから速度は遅く恐怖感は少なく気楽に遊べるので私は大好きでした。

 

 

ある年の夏頃。 雨天で中止にしたBBQの代案で男女交えた友人達と車数台でドライブに出た日。

出先で立ち寄ったゲームセンター併設のスリックカート場。

走ろう走ろうと盛り上がる男性陣と、好奇心旺盛な女性の一部が順番待ちの列に並ぶ。

初めての人も居たので競争よりは皆で遊ぼうと、後ろから速く行けとつっついたり、コーナーの外へ押し出したり、ぶつけてスピンさせたりと大騒ぎして楽しみました。

観客をしてくれた女性陣も盛り上げてくれて、おかげで気を良くし興奮冷めぬ数名の男連中はもう一回勝負だと再び順番待ちの列へ。

 

次は勝つ!! なんて盛り上がる我らの前には海外の方々の一団がこれまた大盛り上がりされてる。

どうやら我々と似た様な事情か男女グループで遊びに来て男性陣だけで第二戦に挑む様子。

順番が回ってきたらその海外の方々と混走になった。

海外勢の女性陣が観客として盛り上がる横には我らが女性陣も囃し立てている。

 

拳を上げて盛り上がる海外勢の横で最前列の目をつけていた車両にいち早く乗り込む静かに大人気なく本気で勝ちに行くつもりの私。

 

レーススタート。

狙い通り第一コーナーを先頭集団で抜ける私。 そこにぶつけてくる海外勢。

第二コーナー入り口で後ろを振り返ると私の真後ろでぶつける気が顔面に満ち溢れた笑顔の金髪碧眼青年。

はなからまともに曲がる気など無いその仮名ジョンに真後ろから押し出されて壁に刺さる私。

満面の笑みで横を抜いて行くジョンとその友人達。  更に気合の入る私。

 

やってくれたなジョン。 お遊びの時間は終わりだ!

 

スリックカート如きで何を本気にではあるが、なにせ女性陣の観客がいる。

なにより拳を上げるジョンの笑顔よ。。。

 

 

すぐさま体制立て直し追走開始。

コーナー毎に一人抜き、直ぐにジョンに追いつきケツをつつく。

そしてクロスラインでジョンのイン側につき先のコーナーでインからアウトにジョンのラインを塞ぎつつ前へ。

再び追突を狙うジョンをわざとラインを外して先に行かせまたしてもイン側へ潜り込み追い抜く。

ちらりと後ろを見ると仲間達は海外勢と激しいぶつけ合いの激戦中。 どやら私とジョンの一騎打ちらしい。

 

後ろからつつこうがインにねじ込もうがアウトから被せようが次のコーナーでは前に出る私に、いつしかジョンは闘志剥き出しで突っ込んで来る様になるが当初の押し出すマネはせず本気で勝ちに来てる様子。

当然私も絶対にゴールライン上では前に居れる様にあの手この手でジョンの猛攻を凌ぐ笑い無視の大人気無い本気走り。

女性陣の歓声も聞こえるが、それよりもう勝ってやると二人とも本気です。

 

周回遅れの抜き方やジョンの位置を考えての駆け引きととても楽しい時間を過ごすが、決められた短い時間しか走れないスリックカート、白熱の時間も長くは続かずファイナルラップを迎え油断無く一位を守り抜き勝利を収めました。

ゴールしてみれば、遊びのカートなのに赤の他人同士で随分白熱の競り合いをしてしまった、やり過ぎたかと少々反省しつつ車両から降りるとこちらに向かってくるジョンを視界に捕らえる。

まずい、海外勢の不興を買ったか。

 

身構える私に両手を広げたジョンは満面の笑みを弾けさせハグしてきやがった。

 

何を言ってるかさっぱり判らんがどうやら互いの健闘を讃え合いたい様子なので此方も握手と満面の笑みで返し関西弁丸出しで健闘を讃え楽しい時間を有難うと伝える。

他の海外勢も楽しかったのか皆笑顔で健闘を讃えあう、いやいやココはただの郊外のスリックカート場だよねって言いたくなる程場違いな盛り上がりを見せている。

 

コース外で待つ仲間の元に帰ると女性陣に少し涙目で迎えられ、話を聞くと途中から外から見て判る程にジョンとやり合ってお互いに本気の顔になっていて喧嘩にならないかと心配してた。 ゴール後にジョンが私に向かった時には殴られると思って怖かったのに、ハグして握手して笑顔で話してるからもう何が何やら安堵するやら高揚するやら妙に感動してしまったとの事。

実は内心えらくビビってハグどころでは無く身構えてたと告白し、かっこわると大笑い。

 

いやそりゃ怖いだろよ訳も判らず迫ったこられたらと言い訳しつつ視線を向けると、海外勢も身振り手振りでレース運びを話してる様子で皆笑顔で楽しそうだ。

 

 

二輪では遊びに草レースに出て楽しませてもらったけど、人生1番のレースはこのスリックカートかもしれません。

どんな競争でも本気でやればそれなりに楽しいもんよねと改めて感じさせてくれる出来事でした。

偶然の巡り合わせで良き相手と楽しい時間を過ごせて幸せいよのう。